23.防衛
攻守は反転し、防衛のための準備フェーズ。
……凄いな。
建物の間取りなどはさっきと同じだが、さっき攻撃側でたくさん壊したはずの壁や天井など、もう元に戻っている。
これが【レガシーアイテム】の力か。
レガシーアイテムはこの世界の遺跡から発掘される物品だ。
核となる【アンオブタニウム】は何もわからないブラックボックスとなっている。
しかし、それ以外の部分は研究によって、修理や複製はできるらしい。
元々のゲームでも、レーザー銃関係などの光学兵器は【レガシーウェポン】となるが、それもこのアンオブタニウムが核となっている。
アンオブタニウム自体を作ることは出来ないため、発掘されたものだけ。必然、貴重となっているのだ。
そんなレガシーアイテムの1つで壁の補強を行う。
野球ボールくらいの卵型をした黒い物体がある。これの尖った方を壁に突き刺すように、強化したい壁に押し付けて捻ると縦横2m四方に端末が飛び出し、そこを基準に内側全て金属製のプレートが生成される。
流石レガシーアイテム、どうなってるか分かんないけど、とりあえず便利だ。
ゲームもこれだけど、当時はそうゆう物だと気にならなかったなー。すぐに補強しないとテンポ悪いからね。
現実になると、凄い超技術だわ。
「言われたところの補強出来ました!」
「こっちもできたよ!」
ミロとジュストが戻ってくる。
「よし、そろそろ時間だ!配置について!」
「「了解」」
「マッド!ベルク!準備はいい!?」
「いいぞー!」
「おぉ、緊張してきた!」
ビーーーー!!
すぐに開始の音が鳴り響く。
ダン!ダン!ダン!
開始すぐに発砲音も聞こえる。
「こっちだ!」
マッドの声だ。なるほど、今回は東のスタートか。
先程の発砲もマッド。
マッドの銃はマークスマンライフル【プレシオ】。スナイパーライフル程では無いが射程が長く、ある程度連射できる。
ダン!ダン!
「1人やった!」
「ナイス!!」
そう、私達がやってるのはリスキルと呼ばれるもの。スタート直後の警戒前の敵を撃つんだ。私とマッド、ベルクで全ての方向の初期湧き付近を注視して、動き出したばかりの時を狙撃する算段だった。
「マッド!無理せず引いていいから」
これで人数差が生まれ、この後やりやすくなる。
ごめんね、誰だったのか知らんけど。
マッドのいた窓が乱射される。
すぐにそこは警戒するよねー。
北の窓からから東方向の通路を確認しておく。
あー、来たね。
ハーヴィン、違う窓も警戒しなきゃダメだよ。
ダダダダ!!
ハーヴィンが倒れる。
「これで2キル」
さすがにこれ以上は無理だろう。かなり警戒されるはず。
「みんな窓から下がって、第1フェーズ終了、第2フェーズに移行する」
____________
イーノスが開始速攻でやられてしまった。
指揮官不在、本来は次の役職上位に指揮権が行くが、この演習ではそもそもみんなクラスメイトだし、初日の指揮官がイーノスだっただけ。おそらく、演習場:レステイゲンと同様に指揮官を代わる代わる訓練する予定だろう。
だが、今だけでも決めないとバラバラになる。多分だけど適任はシアさんだろう。
今回、敵の指揮官リリーナさんは戦闘の天才だ。そのリリーナさんとよく一緒にいるシアさんなら1番作戦を読めるんじゃないだろうか?
「ハーヴィンもやられた!!」
「マジで!?」
「どうしよう……」
このままじゃ為す術なくやられてしまう。
「あ、あの、まだ時間はあるから、一旦、この安全圏に集合して立て直そう」
「アッシュの言う通りだね。了解!」
「おっけ!」
良かった、みんな同意してくれる。
まだ遠くに行っていなかったため、集まるのに時間はかからない。
「アッシュ、どう思う?」
「とりあえず、指揮系統を改めて仕切りなとすのがいいよね?」
「そうだね、じゃあ、アッシュお願い!」
カンナさんが流れるように僕に指揮権を渡してくる。僕じゃ無理だよ。慌てて、シアさんに振る。
「え!?
いや。ここはやっぱり、敵のこと1番分かりそうなシアさんじゃ!?」
「私もアッシュがいいと思うよ!私リリちゃんのことなら分かるけど、戦闘に関しては無理だよ!」
シアさんになにを分かりきった事を?みたいな感じで見られる。
「え!?」
「ここはアッシュじゃない?」
ロブ君もなの?
「な、なんで僕なんかが……」
「こん中ならアッシュが1番頭いいし、指揮能力もあると思うよ?
レステイゲンでだってやってたじゃん。レイン先生もアッシュは指揮官に向いてるって言ってたし」
「それは血統スキルがないからだと……」
自分で言ってて悲しくなる。頑張って勉強して軍学校に来たが、血統スキル所持者や魔術適正持ちはやっぱり凄い。
僕らがどうあっても出来ないことをやれる上に、それを高めるための努力も惜しまない。そりゃエリートだよ。
少し勉強出来るくらいで鼻が高くなっていた僕は軍学校で思い知った。
戦闘面じゃ勝てないから、勉強は頑張っている。最近の座学は1位になれているけど、それはリリーナさん達が実技の訓練をメインに行っているから僕が有利にだっただけ。
褒められるほどではないんだ。
「指揮能力に血統スキルは関係ないよ?アッシュが頭の回転が早いのは知ってる。
何度も演習してるからさ、もう大体分かるよ!私達が動くからアッシュが指揮して!」
カンナさんがそう真っ直ぐに言ってくれる。
僕はもう調子に乗らない。
と思っていたけど、逆に卑屈になってたかな?
ここまで言われたらやるしかないじゃないか!
「わかった。精一杯やるよ」
「大丈夫!相手はあのリリーだよ!」
ふっと笑ったカンナさんにバシバシと肩を叩かれる。
リリーナさんが相手……
確かにこれ以上ない説得力だ。
ムカつく人もいるかもしれない。でも僕も笑ってしまう。
「そうだね。僕らは全力で挑むだけだ!」
僕らのプライドなんてものは、もうとっくにズタボロに砕かれている。
「アッシュ、俺ももう割り切ってる。ここから何とかやれるだけやってやろうぜ!」
ロブ君もそう言ってくれる。やっぱりみんな同じなんだね。
「おし!じゃあ、やろうか」
僕も気合いを入れなきゃね。
まずは
「窓から狙われているみたいだから、要注意ね!人影が見えたら即撃つ形で!」
「「「了解」」」
「人数が少なくなったから、イーノス君の作戦を少し変更するよ。
家に近づいたらロブ君のスキルで1階の壁を破壊したら、ロブ君はその後2階の壁も壊して」
「任せろ!大きめにだよな?」
「うん、人が簡単に通れるくらいには欲しいね。警戒して欲しいからなるべく大きく」
「わかった」
「僕は1階の破壊箇所から中を狙うから、みんなは2階から侵攻してね」
「おっけー!」「了解です」「任せろ」
三者三葉の返事で同意を得る。
家に近くだけで、神経を使う。射線の通る窓を確認しながら、死角を通りながら近く。
家の側に到着し、ロブ君に壊して欲しい場所を指示する。
ロブ君を残し、カンナさんとシアさんが2階へ、僕は爆破後の射線場所に位置取る。
「準備完了、ロブ君お願い」
「了解」
壁に手を付き、開けたい範囲を四角くくなぞったロブ君は、少し離れて集中していた。
「カウント、3、2、1、今!」
ドン!!
っという爆発音と共に、壁が崩れる。綺麗に先程なぞった形に合わせて穴が空いたのだった。
マークスマンライフル【プレシオ】≒SR-25
見た目などはこちらのイメージで。但し、あくまでも性能はゲーム〖Hero of War 虹色の戦争〗を元となっており、実銃と必ずしも同じではありません。
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