21.リーダーイーノス
防衛側の僕達は開始すぐに間取りを確認する。
防衛する建物は2階建て+地下の3フロア構造だ。今回のベータチームのリーダーは僕になっている。
どこにこのアタッシュケースを配置するかが問題だ。各フロアを確認したが…
「今回は地下にアタッシュケースを置こうと思う」
「うん、私もいいと思う。2階は守りにくそうだし」
そう、カンナが言う通り、今回の2階は中央に廊下があって左右に小部屋がある形だった。
廊下には大きな窓があり死角があまりない。部屋を移動する際にメインとなる廊下が、窓を抑えられたら不味いだろう。
その点、ガレージは車の停車と思われる場所以外は開けた場所が少ないため、死角が多く防衛側が有利と思われる。
「よし、じゃあ、ここをベースに1階と地下に人数多めに配置。2階に機動力のあるカンナを1人置いて撹乱する形にする」
「分かった」「おーけー」「よーし、やろう」
「時間まで出来る限りトラップを仕掛けよう」
可能な限り、準備をしたと思う。相手はあのリリーナだ。万全を期して向かい打つ。
ビーーーーー!!
演習スタートの合図が鳴り響く。1時間防衛するか、全滅させればこちらの勝ちだ。
最終配置はカンナが2階、ロブとシアが1階、僕とハーヴィン、アッシュが地下にいる。
全員無線で繋がっているため、リアルタイムで交信可能だ。
外に設置したカメラを起動して様子を伺う。
「南、西カメラ共に異常なし」
僕は南と西を確認、ハーヴィンが別カメラを確認してくれる。
「っ!?北カメラがやられた!北警戒!」
北側から攻めるつもりか?
「ハーヴィン東の確認もだ」
ダダダダ!!
ザザッ「こちらロブ、1階北側より発砲あり」
無線から1階にいるロブの報告が届く。やはりそちらからか攻めてくるか?
でも全員ではないだろう。
「イーノス、東も人影を確認したが破壊された」
外のカメラはどれも先程自分たちが設置したカメラだ。なるべく分かりにくくしたつもりだが、こんなにすぐに見つかるなんて…
自分も確認するが、南と西はカメラは健在。人影も見たらない。
ならば、
「南西方向敵影なし。シアはロブの援護に回ってくれ」
「了解」
1階の南側にいたシアに指示をだす。
ボン!
2階だろうか遠くで爆発音が響く。
ダダダダ!
激しい銃声も聞こえる。
「2階発砲多数!北も西からも複数人来てる!」
カンナからの無線だ。さすがに1人では挟み撃ちにされる。
「カンナはすぐに階段から避難、ロブ、シアは援護!」
展開が早い。
開始してからそれほど経っていないのに、どんどん状況が動いていく。
「アッシュ、階段まで移動して1階の援護を!」
「了解!」
地下は静かだ。上から集中して攻略するつもりか?
警戒はしているがまだ地下への進行はない。
「ハーヴィンはカメラで地下南側から奇襲がないか警戒してくれ!僕はアッシュと援護する」
1階までの階段を確認すると上から血が垂れてくる。
ッ!?
アッシュが階段上、1階に到着した辺りで倒れていた。
「アッシュがやられた」
その位置でやられたのか。
…とするとこの1階への階段は見られていると思った方がいい。
「ロブ、シア、1階の状況は?」
「そこら中に連射された。多分機関銃だ。さっき補強出来た場所以外結構穴が空いてる!窓が撃たれまくってて撃ち返せない!」
「大丈夫だ!無理はするな」
「イーノス不味いよ!1階北側に大きな穴が空いてる!北西方向の部屋は外から見られてる!塞ぐ?」
階段は北東側にあるけど、北西から射線を確保された?それは不味い。
「シア、壁を頼む!」
「はぁ!」
パキパキパキパキとすぐに壁が出来上がる。凄いな。
「カンナ、敵を目撃したか!?」
「いや、まだだけど、西窓が割られた!」
「階段の安全は確保した!カンナが退避する際はそこを使え!」
「了解!」
ダダダダダダ!!
くっ!?
また凄い銃声が響き1階に集中攻撃を受ける。これ、機関銃2人はいるな。
「南のカメラも破壊された!敵影確認出来ず!」
ハーヴィンから知らせがくる。
そっちもバレたのか!?地下の守りを手薄にする訳にはいかない。
「ハーヴィンは南の守りを頼む!僕が北通路を抑える!」
そろそろ地下に攻めてくるころか?
「カンナ!機関銃を撃ってるやつを倒してくれ」
「了解」
1階が抑えられているせいで動きにくい。今だに撃ち続けられている。
これで1階が楽になれるはず!
…なぜこんなに撃ってるんだ?狙いが?階段だとしたら、シアの氷壁で死角を確保した。氷壁はそう簡単に破れるものじゃないが、それでも穴を開けようとしてる?
シアなら何個も作れることは、レステイゲンの演習で皆分かってるはず!?
あ、機関銃の音がやんだ。
「ナイスだカンナ!そのまま2階から外を警戒してくれ」
……
あれ?
返事がない!?
「カンナ!?応答しろ!?」
……
クソっ!やられたみたいだ。
「ロブ1階に罠を設置しながら地下へ移動だ!シアは階段横の部屋入口に氷壁を!侵入ルートを北西だけに制限するんだ!地下を固める!」
あの乱射していた機関銃は引き付け役と罠か!排除しようと北側窓の前に来るとあらかじめ狙っていた奴の餌食になるのだろう。
もう3人やられた…
どうするか。
「っ!イーノス!ロブがやられちゃった!もう2階に入られてる!」
は?
カンナが倒されてからまだ数分だぞ!?
このままだと各個撃破される。もう、防衛場所を分散する余裕はない。
「地下の守りを固める!シア!地下に行きながら階段を封鎖してくれ!」
「了解!」
僕も地下への階段をカバーしつつ、シアの合流を待つ。
シアが廊下に見えると同時に、向かい側にある2階からの階段から人影が見えた。
「走れ!!」
シアに叫びながら階段を撃つ。シアが転がるようにして地下階段の踊り場に、僕の側まで引いてきた。
スモークを2階階段の方へ投げ、僕も下がる。
「ごめん、足を撃たれた」
「いま、回復する!シアは氷壁を!」
死角まで下がり、血が出ているシアの右足を治療する。僕は珍しい回復の血統スキル。
このくらいであれば数秒で回復できる。シアの足に集中し、治療する。
その数秒で背後には氷壁が出来ていた。氷壁ってこんなに生成早いのかと思いつつ、状況を確認する。
ベータチームは完全に追い詰められてきている。どうにか挽回したいけど、どうするか……
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