18.初演習
再び目を開けるとポッドの中からフィールドに移動している。
私は直ぐに壁際に移動し、視界の開けた方に銃を構える。
遠くで音が聞こえる。笑い声も....リリちゃんだろう。
けど、近くには人はいない感じかな?
ここは中央の大きい廃墟みたい。外を見る限り3階くらいかな?
リリちゃんにガッカリされたままは嫌だ。
バン!バン!
上の階から発砲音が聞こえた。私は足音をなるべく抑えながら、素早く移動する。
階段近くにくると、足音が聞こえた。
……どっちだ?上か下か分からない。
通路の壁際に移動し、しゃがんで銃を構える。
少し待つと下の階からジュスト君が上がってきた。
今度はしっかりと狙ってトリガーを引く。
ダダダダダダ!
ジュスト君がこちらに気付いた時には既に遅かった。私の撃った弾丸は比較的近距離なのもあって、狙い違わずヒットする。
ふ、ふぅー
最初よりはマシにできた。だけど、直ぐに上の階から人が来るはずだ。油断しちゃダメだ。
リリちゃんに言われたことを忠実に...
少し耳を澄ましても、音は聞こえない。
上の階で待たれている?
どうしよう.....
えっと、このまま進んでもやられちゃうよね?
あ、リリちゃんに持ってけって渡されたこれを使えば...
ゆっくり階段下まで移動する。
音は聞こえない。
ゆっくりとピンを引き抜き、上の階の踊り場に投げ込む。
カンカン、コロコロコロと上階の物に当たった音がする。
「うわぁあ!」
階段を一気に下ってくる人影が現れる。
ロブ君だ。
私は降りてきた無防備なロブ君目掛けて発砲する。
ダダダ、ドーン!!ダダダダ!
発砲とフラググレネードの爆破か重なり凄い音が響いた。
カチ、カチ。
残弾を打ち切った私のレックスが微かな音を上げている。
やっぱり焦ってしまった。まだうまく出来ない。
ロブ君は私に撃たれ、10秒程で消えていった。
り、リロードを行わなきゃ。
な、なんとかできたかな.......
イーノスは倒したいな。
なんかリリちゃんに色目使っている気がする。成敗しなきゃ!
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side:カンナ・クサナギ
ドーン!ダダダダ!
フィールド内の至る所で発砲音が聞こえる。距離はありそうだ。
ハッハッハッ
.....笑い声も。
こっちは思い当たるのが1人しかいないが。
ん、私の近くでも発砲音がした。
そちらの方向に駆け出す。今なら漁夫の利になりやすいはずだ。
足の速さには自信がある。
私の武器はサブマシンガン【パキケファウス】にした。機動力を活かすにはサブマシンガンがいいって、お母さんが言ってたからだ。
姿勢を低くしたまま塹壕の間を通り抜けると、少し広い空間にでる。この空間の中央にはバスのような装甲車両が止まっていた。
その車両の手前には、ついさっき敵を倒したであろう、クラスメイトのジュストが立っていた。
こちら気付いて慌てて構えようとしているが、もう遅い。
ダダダダダダダダ!
私の最初から狙いをつけていた私の方が早い。結構、ジュストは引き金を引くことなく倒れる。
ここに留まるとさっきのジュストと同じことになるので、今来た塹壕通路に戻る。
落ち着いたタイミングでリロードしておく。まだ命中率には自信が無い。
きちんとマガジンはフル弾倉にしておきたかった。
ちょうど変え終えると足音が聞こえる。
ここの通路は少しカーブしていて、見えなくなっている。私の存在は私の正面にこないと見えない場所だ。そっと、パキケファウスを構える。
こっちきたら正面での撃ち合いになる。私が既に構えて待っている分、有利なはず。
足音が近くなり、
たったったったっと過ぎていく。
こちらの塹壕通路には入らず、右の方に通りすぎたようだ...
チャンスだ。今なら後ろを取れる!
私の足なら直ぐに後ろを取れるだろう。
塹壕通路を進むと直ぐに先程の装甲車両が見える。足音が聞こえる距離だ、距離は離れていない。
そのまま通路から飛び出し、右に走っているであろう敵に向かって武器を構える。
アレ?いない??
「残念、こっちでした」
どこからか声がする。
ドンッ!!
気が付くと、私の視界はポッドの中に戻っていた。
一瞬だけ見えたリリーは、通路から出てすぐ右に伏せていた。
嵌められた…
「ヤバッ.....」
思わず笑ってしまう。
リリーが強いのは分かっていたつもりだった。
私と同じ血統スキル持ちで、親がネームド。
共通点が多く、親近感が湧いていた。私達のクラスは女子4人だけだし、一緒に過ごすのも多く、すぐに仲良くなった。
リリーのことは大体分かるようになっているつもりだったけど、銃を持った彼女は凄まじい。
完全に手玉に取られた...
友達として、同じ境遇として、私だって一矢報いてやりたい。
リリーから1本くらい取ってやる。
私は気合いを入れ直して、リスポーンする。
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side:ミシェル・クウィントン
ど、どうしよう…
私、運動の成績はあんまり良くない。訓練にはなんとかついていっている状態だ。
今までも、リリーちゃんやシアちゃん、カンナちゃんが色々教えてくれるからなんとかやってきていた。
それなのに皆が敵だなんて……
心音がバクバクしている。
たくさん銃声が聞こえる。私はスタート位置からほとんど動けずに何度もデスしていた。
とっても痛かった。
でもリリーちゃんにやられた時は痛みを感じる事もなかった。即死過ぎて何も感じる間もなかったんだろう。
大体、1回は気が付いたらポッドの中にいて、いつ死んだのかさえ分からなかった。
それ以外はイーノス君と多分ロブ君にやられた。
イーノス君には中距離で何発も撃たれた。ロブ君の時は近くで何回も爆発した。
多分、ロブ君の血統スキルだろう。
何度も爆発に巻き込まれて、最後には足が吹き飛んだのが見えた...
私、もう無理………
リスポーンしないでいたら、レイン先生に怒られた。咄嗟にボタンを押したけど...
怖い。
近くで発砲音がした。
怖くてドラム缶と土嚢の間の隙間にうずくまる。
足がすくむ。
身体が硬直してしまう。
怖い...怖い...怖い...
ダダダダダダ!!
近くの銃声にガタガタと身体が震える……
痛いのは嫌だ...
元々私は孤児院出身だ。血統スキルが判明して、少しでも孤児院のために...お義母さんのためになればと思って、お金が掛からないし、将来たくさんお金が貰える軍学校を志望しただけだった。
こんなに恐ろしいものだなんて思っていなかった…
リリーちゃんはなんでこんなに怖いこと、楽しそうにやってるんだろう?
「怖いの?」
「っ!?」
急に声を掛けられて、振り向く。
そこには血濡れのリリーちゃんがその物騒な姿と裏腹に心配そうに私を見ていた。
サブマシンガン【パキケファウス】≒クリスベクター
見た目などはこちらのイメージで。但し、あくまでも性能はゲーム〖Hero of War 虹色の戦争〗を元となっており、実銃とは必ずしも同じではありません。
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