15.演習
射撃訓練が開始されて3ヶ月がたった。
マウスでエイムしていた頃より、未だ命中率が悪い。でも撃つのは楽しいので、放課後もめちゃくちゃ撃ちまくって練習している。
この世界、元々FPSゲームだからか弾は無限なの?ってくらい自由に撃っていい。
多分、トレーニングルームみたいな扱いなんだろう。何発撃っても補充出来る。
最高の環境である。
そんなこんなであっという間だった。
今日の訓練は演習ということで、今まで入ったことの無い部屋までやってきた。
なんだ!?ここ!?
長方形の人が1人入れるくらいの機械が並んでいる。
「さぁ、ここが演習ルームだ。このポッドに入ることで演習場にダイブすることができる」
ダイブ?
「まぁ、こっちにきてみろ」
レイン先生が奥の方へと誘導する。ぞろぞろとついて行くと、ガラス張りの窓から見下ろすように外を見ることができた。そこはすべて壁に囲われた空間になっており、土嚢が積まれたり、塹壕が掘られたり、コンクリート製の廃虚が中央にある。
ここって、
「ここが演習場である、レステイゲンだ!」
っ!?
こんな形で出てくるとは……
ここはHoWにあるマップの1つだ。それを2階席、いやもう少し高いかな?まぁ見やすい位置の窓から観戦できるような形で今見下ろしている。
「ここのポッドに入るとこの演習場に自分と全く同じ性能のアバターが作られ、君たちの意識はそちらに移る。それを使って敵味方別れて戦闘する。使用されるのは実弾だが、殺られてもアバターが倒れ、こっちのポッドで目覚める形になる。
まぁ、簡単に言えば、このポッドに入れば完全な実践形式の戦闘を行えるってことだ」
……やば!?
まんまゲームと同じようなこと出来るわけ!?
「す、凄い」
「え?先生!ここで死んでも大丈夫ってことなんですか?」
「あぁ、この中なら死ぬことはない。まぁ、痛みはゼロじゃないがな...」
「え?……」
ちょっと不穏な発言が聞こえたが、レイン先生は気にせず進める。
「よしよし、まずは試して見ようか。ポッドに入る前にここで所持する兵装をここから選び装備しろ!
次にこのゲートを通って兵装をスキャンすると、記録されたカードが出てくる。
ポッドのここにカードを差し込み、このボタンを押せばダイブできる。
シートにあるベルトはしっかり付けるように!忘れると意識が無いうちに倒れて怪我するぞ!
わかったな!
説明のため、私も含めて全員一旦ダイブする。ダイブしたら中央の建物1階に集合だ!いいな!」
「「「はい!」」」
言われた端末を操作する。おぉ〜、凄いねー!ほんとゲームみたいだ。
「リリちゃんは武器どれにする?」
「んー、まずはこれかな。あとサブはこれ!」
やっぱりこうゆうのがワクワクするな!
「いっぱいあって悩むね……」
「シア、迷うならまず【レックス】を使ってみたら?1番癖がなくて使いやすいよ」
レックスはアサルトライフルの初期武器だ。つまり、一番最初から使える武器。
それ故に、反動も威力とバランスがとれ、変な癖がない。
射撃訓練してるとはいえ、銃を持って走り回るとなると始めてだ。
初心者はこれを担いで戦闘に慣れるのが1番いいだろう。
「うん、じゃあそうする!」
決まったら兵装を読み込ませ、ポッドに移動する。
ポッドの中は少し立ち姿勢のような形で座る座席で、シートにはベルトが取り付けられている。
これだな。
しっかりと取り付け、ボタンを押すと蓋がプシューと音を立ててゆっくりと閉じてきた。
すげぇー、HoWでもこんなことやってたのかな?ゲームの裏設定を知れた感じがする。
完全に閉じると何やら煙が注入され、ポッド内が煙で充満されていく。
「うわっ」
思わず目を閉じた。
次に目を開けるとそこはもう、演習場:レステイゲンの中だった。
「すご...」
手足を動かしてみる。いつもの自分の身体。違和感はない。
装備は先程選んだ物を装備した場所に既に所持していた。
あ、左手首の腕時計が皮膚にめり込んでいる。くっついていて、外せないようだ。
違うのはここだけのようだった。
一通り確認すると、勝手知ったるマップである。中央の廃墟にいくのは簡単だ。
直ぐに到着すると、既に数名いる。うん、みんないつもの顔だ。鏡がないから確証はなかったが、私もそうなんだろう。
アバターであるかどうかの区別が分からないレベルだ。
「り、リリーナもきたか。これ凄い技術だな」
イーノスが話しかけてくる。
「これヤバいね!これで今から演習か!ワクワクする。
あ、カンナ!こっちこっち!」
奥の通路からカンナが走ってくる。相変わらず、足が速いな。
「合流ーっと。
うんうん、イーノス、一歩ずつだよ」
「な、なんだよ...」
カンナがイーノスの肩をうんうんと言いながら叩いている。
「それにしても凄いねこれ。【アクセル】も使えたよ」
「え!?血統スキルも使えるの?」
やっぱりか。
イーノスは驚いているが、私はゲームの世界に入り混んだことを改めて実感し、納得していた。
「これがアバターだなんて信じられないよ」
「お、シアも合流だね」
シアも来たため、シアの顔をモミモミしてみた。うん、感触ももっちり頬っぺでシアだなぁ……
「リリふぁん、はへてー……」
うん、うん、今日もシアは可愛いね。
「よーし、全員集まったな!
これが演習ルームの機能だ。ここまで来るのに身体を動かしたと思うが、身体能力はもちろんのこと、魔法も血統スキルも本物と同じように使用できる。
唯一の違いは死んでも生き返るすることだ。
これにより、ここでの訓練は実弾を使い、完全に実践と同様の戦闘ができるんだ」
「先生!この装置があれば不死の軍ができるということですか?」
アッシュ君が質問する。
転生知識チートの私と競ってくる秀才。なんなら、既に最近は内容が難しくなってきて、もう勝てない。
というか、アッシュ君だけじゃなくて、みんな頭良い奴ばっかりで、25歳プラスされているはずの私の立場がない……
「この演習装置は凄いからな、そう考えるのも無理は無いが...あそこを見てみろ」
全員がレイン先生の指差す方向を見る。
なにか反射している装置がある。四角いミラーボールの様なやつだ。
「あれがこの演習装置の要になっている。すぐに座学でも出てくるが、あれが【レガシーアイテム】だ。あれと各壁に取り付けられた端末によって、この様な芸当が可能になっているんだ。
この技術は電気供給の必要があるようで、こういった施設を作らなければならないらしい。
広さもメイン装置から離れられる距離があるとのことだ。
研究はされているが、実戦導入は難しい」
「なるほど、まだ課題があるのですか...」
「そうだな、配備出来ればかなり強力だが残念だ。だが、こうした訓練はできる。
手始めに、君たちにはフリー・フォー・オールを行ってもらう!!」
クラスメイトから、どよめきが起こるが、私はワクワクがら止まらなかった。
アサルトライフル【レックス】≒M16
見た目などはこちらのイメージで。但し、あくまでも性能はゲーム〖Hero of War 虹色の戦争〗を元となっており、実銃とは必ずしも同じではありません。
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