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FPSゲーマーの転生先なんて決まってる!~ストーリーモードなんて覚えてる訳ない~  作者: 栗飯


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154.守る者



ふらりと立ち上がった人影。


ゆっくり。


ゆっくり。


こちらに歩いてくる。

台所から居間に踏み出す。開けられた窓からの光で、ようやくはっきりと姿を視認できる。

スラリと伸びた手足。

服ははだけており、赤黒く固まった血が大量についていた。そこから生気の抜けた青白くなった肌が見える。

サラリとしていたであろう長い髪は乱れており、一部血で固まっている。


そして、その目は濁った紫色に発光していた。


「……ハンナさん」


アランさんの呟きで、この人がハンナさんだったのだと、確認が取れてしまった。


「見せるな!」


私が叫んだ瞬間、ハンナさんが1番近いアランさんに襲いかかる。

シアがエマちゃんの目を覆う。


「ア゛ァ゛ア゛!!」


喉の奥から漏れる声。

発声の仕方を忘れてしまったかのような、苦しそうな声だった。

表情もゾンビそのもの。眉間に皺を寄せ、噛み付いてくるそれだ。


一瞬だけ引き金にかけた指が止まる。

それでも……ごめん。


ダンッ!!


私はハンナさんの頭を撃ち抜いた。

アランさんに到達する前に崩れ落ちるハンナさん。


「………」


アランさんは無造作に倒れたハンナさんをそっと抱き抱える。


「そこの布団、敷いてくれるか?」


ロジェが綺麗に畳まれていた布団を敷いて、ハンナさんを布団に丁寧に寝かせる。

私が撃ち抜いたのは側頭部だった。布団に寝かされたハンナさんは顔色は悪いが、寝ているようにも見える。


「……」


みんな無言だった。

私もなんて言っていいか分からなかった。

少し前までゾンビモードだ!と楽しくなっていた自分を殴ってやりたい。

ただゾンビを撃ちまくればいいゲームとは違う。それぞれが生きていた人なんだ。


シアが涙を流しながら、エマちゃんを抱きしめている。


もう一体、台所に倒れていた人影は、包丁が突き刺さっており、何度も刺された形跡がある。


ハンナさんが入ってきたゾンビと戦ったんだ。

エマちゃんを守るために。


そして、ゾンビに噛まれながらも、エマちゃんを守ったんだ……


「お母さん?」


静寂に響いたエマちゃんの問い。

私は動揺する。

エマちゃんが、静かに横になったハンナさんの元へ近付く。


「お母さん、お母さん!?うわぁぁぁあん!」

エマちゃんの感情が決壊した。


「言いつけ通りに、ちゃんと隠れてたよ!?

声も出さなかったよ!?

そうすれば大丈夫って言ったじゃん!

すぐ戻るって…………」


涙を流しながら、エマちゃんはハンナさんに抱きついている。

子供ながらに分かっているんだ。


「お母さん……グスッ……お母さ゛ん゛

……おかあ゛ぁさ゛ん……」


ハンナさんが永遠の眠りについたことを……


くそッ…


時間は待ってくれない。

それは大人でも気持ちの整理をするには短い時間だった。


私の目にはゾンビがこちらに近付いて来たのが見える。

私はそっと、外に出る。


「エマちゃん。まだ脅威が残ってるの…

エマちゃんは生きなきゃいけない。

ハンナさんの想いを。頑張りを無駄にする訳にはいかないの。

だからね。一旦、安全なところに行くよ」


シアも察して、エマちゃんに言って聞かせている。


周囲のゾンビが寄ってきているようだ。

さっきの銃声か……

サイレンサーも試してみたいが今はないか。


ダンッ、ダンッ、ダンッ!


頭に撃ち込み、3体倒す。

これはあまり時間をかけると囲まれるな……


「ごめん、リリちゃん。行こう」

「…うん」


もっと離れないかもと思ったがかなり早い。

エマちゃんの目には未だ涙が流れているが、危機的状況なのは理解しているようだ。

エマちゃんが聞き分けのいい子で助かった。


急いで囲まれる前に車両へと戻る。

私だけならいいけど、エマちゃんを連れては危険だからね。

車両は同じ場所に健在だった。


「異常なかった?」


「はいッ、静かにしてる分には襲われませんでした。異常なしです」


よかった。これで車両がなかったらエマちゃんを避難させるのが大変だからね。


「よし。

シアもエマちゃんを連れて、避難して。目標地点には私とアランさんで行く」


「ッでも!?」


「大丈夫だから、エマちゃんについててあげて」

確かに予定ではシアも目標地点まで一緒に行く形だった。

でも、ハンナさんを失ったばかりのエマちゃんを知らん男共の中に置いて行くことはできないだろう。


「なら自分も着いていきますッ!俺も役に立ちます!連れてってください!」

ロジェが名乗りを挙げる。


うーん、どうしよう。それは想定してなかった。

祭壇があったとして、ゲームと同じ仕様だとする。

ゾンビモードのエンディングはラスボスを倒して、称号や武器の迷彩が貰えるものだ。

ラスボス討伐のその後はどこまで生き延びられるか。といった形に変わる。

つまり、止め方なんて知らない。


要はアテがないんだよ。


そんなんで、ロジェを守れる自信がない。

私の逡巡を悟ったのか、ロジェは力強くアピールしてくる。


「リリーナさん。貴女からしたら俺は弱く見えるかもしれません。

でも、俺は兵士です。保護対象ではありません!

戦略的な判断をお願いします!」


…………

……そうだね。

いつの間にかそう考えていたかもしれないな。

私、勝手に守らなきゃと思っていた。


でも、誰も失いたくない気持ちも本心だ。


戦略的な……か。


「リリーナ……」

アランさんが汲み取ってやれよ、みたいな顔している。

はい、はい、分かりましたよ!

私も覚悟が足りてなかったかもね。


「二言は無いね?」


私は最終確認をする。

それは私自身も覚悟を決めるためでもあった。思わず低めの声がでる。

私のその言葉に、ロジェがゴクリと唾を飲む。

しかし、一度は怯みそうになった心を踏みとどめ、覚悟を決める。


「任せてください!」


「分かった。

そこまで言うのなら、ロジェもついてきて。

ただし!

何がなんでもついてこいよ?途中で倒れたら死ぬと思え!」


「はいっ!」


「フフッ……少しは男が上がったね」


─────────────


side:ロジェ


最後にそう言って、頭をポンッとされる。

先程まで真面目な顔だったリリーナさん。

それがフッと笑った顔に変わる。

……それが妙に可愛かった。


「ククッ…死んでも走らせるからな」


前言撤回だ。


無垢な感じは消え去り、今度は深層の邪悪な死神が顔をだす。

今度の笑顔も同じ笑顔なはずなのに、背筋が凍った。


土曜に予約投稿しようとして忘れてましたね。

20時もう1話進みます。


少しでも面白いと思って頂けれれば、

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