14.待望
やっと…
やっとだ。やっとこの時がきた。
今年で13歳、7年生になる。
ようやく、今年から始まる訓練がある。それは軍学校と言えども7年生まで所持が禁止されていたもの。
それは使い方を誤れば危険だから。
……そう、ついに、銃の射撃訓練が始まのだ!
射撃練習場に入場する。
そこにはたくさんの銃が並んでいた。
「おぉぉぉぉ、すげぇー」
「リリちゃん?」
「は!?」
うっかり声に出ていたか。FPSゲーマーとしては圧巻のラインナップだったからしょうがない。
「すっげー!」「いっぱいあるな!」
ほ、ほら男子はテンション上がっているよ!?
…確かに女子そうでもないかもしれないけど。
「それでは今日から射撃訓練を開始する!」
レイン先生から基本的な注意点を教わり、的に向かって射撃する。
まずはハンドガンからだ。
ゲームの時も出てきたやつ。これは前世だとガバメントと呼ばれるやつだ。いや違うか、あのゲーム内だと名前は……
「これは【ヴェロキー】と呼ばれるハンドガンだ」
そうだ、ヴェロキーだ。
あのゲームは実銃を元に作られた銃の名称も変更されている。ライセンス料の関係とか何とかだっけかな?
とりあえず、実銃も架空の銃も名称はゲームオリジナルだ。
ん……違うか、もはや、この世界では本物なんだ。
楽しくなってきた。
そういえば世界大会の時、大会の翌日に実弾射撃場へ行くことになっていた。あの時、チーム内で俺たち2人だけが謎の腹痛でトイレにこもっていたせいで行けなかった。
優勝したのは良かったが、帰国の便の関係で、翌日しか自由な時間はなく、実弾射撃する機会は失われた。
打ってみたかったなー...
あの時の腹痛は他の大会参加者に下剤を盛られたと思う。あの差し入れだ!
あいつら絶対許さん。
だから、今、ようやく機会がやってきたんだ。
「それでは順番にあの目標に向かって射撃する。まずはアッシュから...」
____________
「フッ...フフフフッ」
リリちゃんが隣で笑いを堪えている。なんか怖いくらいに、ニヤニヤが止まらないみたい。
さっきヴェロキーを渡された時から、ずっと笑っている。大丈夫かな?
「シ、シア...
リリーがなんか、すっごい顔してるけど大丈夫なの?」
カンナちゃんもリリちゃんに気付いて、小声で聞いてきた。
「な、なんかね、この授業ずっと待ち望んでたらしいよ」
「それにしてもな感じだね」
「う、うん」
私もここまで楽しみにしているとは思わなかった。
「次、イーノス!」
「はい!」
まずは最初だからか、射撃ブースは何個もあるが、今回はレイン先生に呼ばれながら1人ずつ順番で進んでいく。
射撃ブース内は防音処理がしてあり、待機室では発砲音が少し聞こえる程度に抑えられている。ゼロじゃないけど、気になるレベルじゃないので、普通に会話は可能だ。
「ねぇね、イーノスってさ、絶対リリーのこと好きだよね!?」
「え!?そうなの?」
「絶対そうだよ。口調が変わったくらいから、取っ付きやすくなって、みんなと話す機会が多くなったと思うんだけどさ。なーんかリリーのこと意識してるんだよ」
……た、確かに、最近そうかもしれない!
イーノスが口調変えたのはリリちゃんにバレたかららしいし。
い、イーノスったら、私の大好きなリリちゃんを取ろうとするの!?
「わ、私のリリちゃんが……」
「あ、ここにもリリー大好きっ子がいたわ」
あ、イーノスが射撃で結構的に当たったみたい。
はっ!?確かにイーノスが見たか!って感じの期待を込めた表情でリリちゃんの方を見ている。
「む、本当にそうかも……」
「でしょ!?」
でも、当のリリちゃんは
「ふひひ……自重で落ちる……フフっ……」
…………………………………
…………リリちゃんはまだヴェロキーをいじって、マガジンを取ったり、戻したりしている。
イーノスは驚いた顔をした後、悲しそうにブースから出ていった。
「だ、大丈夫そうだね……」
「う、うん……」
「リリーは恋愛興味なさそうだね...」
「リリちゃん……」
女子で恋愛の話になっても、興味なさそうだし、もう逆に心配になっちゃうよ……
「次!シア!」
「はい!」
おっと、私の番だ。
ブースへ行く。本来はヘッドホンをするんだけど、初めては慣れるようにと、今日だけヘッドホンは無しだ。
教わった通りにやれば大丈夫。
1つ息を吐き、両手で構える。反動があるため、しっかりとグリップを握り安全装置を解除する。
フロントサイトとリアサイトを目標の人型の絵の頭に合わせる。
ん!
トリガーを引く。
バン!!という大きな音を立てて、弾丸が発射される。
「おぉ!?」
こ、こんな感じなんだ。
的は……あ、ズレちゃった。
よーし、もっと当てるぞ!!
バンバンバンバン!!
マガジンを全て撃ち切る。んー、的の中に入ってるのは4発……
難しいね。
私の番は終わり、ブースの外に出る。
「次!リリーナ」
「ハイ!!!!」
リリちゃんが凄い元気よく返事をして射撃ブースに向かう。
おぉ!ニっコニコだ。
「リ、リリーナ、どうした!?」
レイン先生まで心配している。
「はい!レイン先生!なんの問題もありません!オールグリーンです!」
リリちゃんのテンションが高くて凄い勢いだ。
「お、おぉ、そうか」
レイン先生も圧倒?されてしまった。
そのまま、射撃ブースに入る。
ここから見えるリリちゃんは絶対に笑っている。声が聞こえなくても分かる。
あ、発砲音が聞こえる。
「……ハハ……バン…ハハ……ハハ...バン」
防音処理されているはずの射撃ブースから発砲音と共に、リリちゃんの高笑いも聞こえてきた。
それはもう楽しそうな顔をしている。
銃を撃ちながら……
これにはイーノス君から全てのクラスメイト含め、レイン先生までドン引きだった。
ハンドガン【ヴェロキー】≒M1911ガバメント
見た目などはこちらのイメージで。但し、あくまでも性能はゲーム〖Hero of War 虹色の戦争〗を元となっており、実銃とは必ずしも同じではありません。
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