148.武器相性◎
デイビッドさんの右手に、炎が生まれる。
最初は掌に収まるくらいの火球。
けれど、次の瞬間にはそれが大きくなり、圧縮され、さらに圧縮され、色が濃くなっていく。
赤。
橙。
そして……白くなる。
「……あっつ」
思わず呟いた。
少し後ろにいるのに、ここまで熱い。
空気が揺らいでいる。
地面の砂利がじわじわと焦げて、黒く変色していく。
すげぇ!デイビッドさん。
これが【炎帝】か。
「焔」
呟くように言い、放たれた火球。
白い閃光が一直線に走る。
次の瞬間、ガイアの岩壁が、大地を割ってせり上がる。
いつもの防御。分厚く、巨大で、堅牢な壁。
だけど……
ドンッ!!!
火球が激突した瞬間、岩が爆ぜる。
爆発と衝撃波。
そして、白熱。
岩壁の表面が赤く染まる。
「うわ……」
これまでで一番の威力。
岩壁が、耐えきれずに吹き飛ぶ。
砕け、溶け、破片となってそのまま対岸へと降り注ぐ。
メラリア軍司令本部の屋根を直撃し、爆煙が上がった。
やっばい威力をしている。
威力だけなら、もしかしてシーランより上じゃない?
純粋火力は、完全に怪物だ。
これはナーフ入るわ。
「……ふっ」
横を見ると、デイビッドさんが満足そうに笑っている。
ようやく打ち破った、って顔。なんかスッキリしている。
うん、うん、あれは気持ちいいよね。
……じゃあ。
「私も、やっていいよね?」
私は後ろに置いていたそれを持ち上げる。
レガシーウェポン【シーラン】。
城壁を出るとき、参謀本部のスティーブンさんが言っていた。
捕虜にしたシーラン担当のメラリア兵から情報を聞き出したらしい。
どうやったかは知らないけど、聞き出すのが早い。
『シーランは、魔力を弾丸に変換して撃ち出しているようです』
つまり、撃てば撃つほど自分の魔力が削られる。
しかも、無理やり吸い上げる仕様。
6発撃って、リロードとして魔力を吸い上げる。その時、魔力量が足りなければ、死ぬ。
魔力量の多いネームドが試射するのが適切。そのシーラン担当のメラリア兵よりは確実に魔力量が多い。
オルガさんは触れれば、だいたい魔力量が分かるらしいので間違いない。
でも今は全員、戦闘中で、万全じゃない。
だから私は言った。
『私、やってみてもいいですか?』
でも、止められた。
ショーンさんにも、スティーブンさんにも、アッシュにも。
唯一、魔力量が分かるのは、オルガさんだけだ。
『総量はリリーナちゃんなら大丈夫だと思う。
魔力が多くて、私も正確な所が読み切れないけど……
でも、さっき魔力流路を酷使したばかりだからね?』
絶対大丈夫といってくれれば話が早かったのに……
さっき魔力過剰だったから、心配されてしまう。
『一回だけですから』
そう言って、結局ここまで持ってきた。
魔力流路はさっきレッドアイすら使わないでいたら、もうすっかり痛くないので問題ないと思う。痛かったらやめればいいし。
なんだかんだあったが、とにかくだ。
……私はシーランを撃ちたいのだ。
今、私の後ろには止めていたショーンさん、スティーブンさん、アッシュだけじゃなく、オルガさんや第3師団団長トニーさん、シア達特務機関の面々。
指揮官と、配置がなく状況に応じて動く面々が勢揃いだ。
めちゃくちゃ警戒している。
そんなに心配しなくても。
私はシーランを構えて狙いを定める。
目標、敵司令本部。
民家にはまだ民間人が残っている所があるらしいので、撃つなと言われている。
司令本部はかなりでかい基地だから、誤射の心配はない。
引き金を引く。
……ポンッ。
先程も聞いた軽い音。
魔力が弾丸になって撃ち出されるけど、反動は小さい。
だが。
ゴゴゴゴッ!!
また岩壁。
まだいるね……ガイア。
岩壁に阻まれ、目標に届く前に爆発。
岩壁に穴が空くが、シーランの弾丸の性質上、その場で爆発範囲が決まる。
目標までは届かない。
「へぇ」
じゃあ、連続でいこ。
ポンッ。
ポンッ。
ポンッ。
ポンッ。五発。
ガイアも気付いたのか、岩壁の厚さは先程よりも薄くなり、とにかく当てることを重視した形にして対応してくる。
ポンッ……六発。
その瞬間、ぐっと体の奥から何かを引っ張られる感覚。
あー、これか。
魔力を吸われてる。
…………なんだ、こんなものか。
正直、全然余裕だ。
思ったよりも吸われないし、レッドアイと同レベルくらいかな?
「お、おい……リリーナ?」
ショーンさんが声を掛けてくるが、私はそれどころじゃなかった。
「これなら、撃ち放題!ふハハッ!」
ポンッ。
ポンッ。
ポンッ。
ポンッ。
ポンッ。
ポンッ。
ポンッ。
ポンッ。
ポンッ。
ポンッ……
………連射、連射、連射である。
同様に岩壁が展開される。
だがあまりの連射に、その反応は明らかに遅れる。
ポンッ。
着弾。
ドォンッ!!
司令本部の一角が吹き飛ぶ。
「アハハッ!!あ、当たった!!ハハハッ!」
楽しい。
ポンッ。
ポンッ。
ポンッ。
連射。
ガイアの岩壁は追いつかない。
爆発が連続し、対岸が煙に包まれる。
楽しい。
これ、楽し過ぎる。
例えるなら、弾無限のグレネードランチャーを連射している様な状態。
そりゃ、バカスカ撃つだろう?
どこまでいけるかな。
私は夢中になって撃ち続ける。
後ろからの視線が、だんだん変わっていくのに気付かないまま。
最初は心配。
次は困惑。
「うわぁ………」
全員、引いていた。
気付けばガイアの岩壁が出てこなくなっていた。
司令本部で無事な場所がどこにもない、ただの崩壊状態。
満足した私が振り返ると、
ショーンさんは口半開き。
オルガさんは透明化を忘れて固まり、トニーさんも腕組みしたまま固まってる。
アッシュは苦笑い。
スティーブンさんは額に手。
デイビッドさんまでも、口が開いていた。
「え? なに?……やり過ぎた?」
私は首を傾げる。
「リリちゃん、さすがに撃ちすぎだよぉー。私達出る幕なしだよ」
シアだけが、いつもと変わらぬ感じで言ってくる。
みんなすぐ終わっちゃったから、びっくりしたのかな?
「……こっちに被害がないならいいんじゃない?」
「ん?そっか。ならいいか「アホたれ!やり過ぎだわ!」
再起動したショーンさんが怒ってきた。
「や、やっぱりです?」
「当たり前だ!見ろよ!司令本部が更地になってんじゃねぇか!?」
「そ、それは、仕方ありませんでした……
敵の抵抗はあまりに強く………」
「ほとんどなかったよ!!ガイアも早い段階で追い付いてなかったからな!」
ショーンさんが興奮して、ツッコミが強い。このままでは私が不利だ。
「ほ、ほら、まだ生きてる敵がいますから、司令本部を制圧しましょう!」
私はショーンさんをくるりと回して、背中を押す。正門の方へ向かわなければ。
「お、おい!リリーナ!」
「まぁまぁ、ショーンくん。リリーナくんのお陰でこちらは無傷で、敵は壊滅だ。責めることなどないだろう?」
さすがはデイビッドさん!
ナイス、助け舟です。
「そうですがね……最後の方は、もうただ楽しくて撃ってるようにしか見えませんでしたよ?」
「リリーナくんは敵が見えてるんだろう?敵がいたさ。今も奇跡的に逃れた敵がいるようだしね」
「そう……ですかね………」
ショーンさんはそう言って正門の方へと向かう。既に破壊され、門のない司令本部の出入口。
………
ショーンさんの予想通りです。
最後の方はただ楽しくて撃ってました………
とりあえず、ここはデイビッドさんの話に乗っておく。
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