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FPSゲーマーの転生先なんて決まってる!~ストーリーモードなんて覚えてる訳ない~  作者: 栗飯


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139/161

138.小さくて大きい



ここは、アルステリア軍がレストデーン内部に用意していた隠れ家の地下施設。


地下施設は、重苦しい静寂に包まれていた。

ショーンは整備した銃を下ろし、短く息を吐いた。


本来は第1師団の捕虜を逃がすための退避拠点だったはずの地下施設。

そこが今は緊急避難場所になっていた。


捕虜となった第1師団の救出人数――68名。


第1師団の捕虜は、元々104人。

そのうち、救出のさなかに命を落とした者もいるが……

足を欠損した者。憔悴しきっている者。そういった、そもそも走れない人達は留置所に置いてくるしかなかった。

彼らは震えた声で、「置いて行け」と言った。


もはや、そんな彼らを助けるにはレストデーンの奪還しかない。

その際の喧騒で彼らは殺されるかもしれない。

でも、それしか………


「……それでも、3分の2以上だ」


誰に向けるでもなく、ショーンは呟いた。

ショーンは暗くなる気持ちを切り替える。今はこのメンバーでやるしかない。

自分達も発見されていないだけ。未だ危険な場所にいるのだ。


この捕虜奪還の成果は、間違いなくネームド【ジ・オール】の情報提供のおかげだ。


正確に場所を把握していなければ、この人数は到底救えなかった。


だが――。


「……地下道はさらに崩れてます」


地下のルートを再確認してきたシアが暗い表情で報告する。


「また、地鳴りがあった。やはりガイアの影響だろう」

「炎帝とガイアの戦闘。ずっと続いてますね……」


アルステリア側のネームド【炎帝】。

メラリア側のネームド【ガイア】。

炎対土は衝突する度に拮抗状態。

ライバルとよく言われていた。


ガイアの大地そのものを操る能力は、地下ルートと致命的に相性が悪かった。


逃走ルートは、度重なる地鳴りで崩落。

今はこの地下施設に籠るしかない。

幸い、水はシアの氷をハーヴィンの炎で溶かし、確保はできる。

この施設に保管されていた不味い非常食もあるが、この人数……もうすぐ限界がくる。


「第1師団の人達、かなり疲れてるわ」

ドロシーが振り返る。


地下施設に貯蔵されていた非常食が配られ、捕虜だった兵士達は壁際で休んでいる。ここには武器も保管されていたため、装備はある。

兵士達の顔色は悪く、満身創痍。それでも……

彼らは目だけは生きている。


「体力があるうちにやるしか……」

ショーンは歯噛みする。


このまま膠着状態が続けば、正面戦闘は激化し、いつになるか分からない。


「背後から一石を投じる……俺たちだけでやれるか?」

ショーンは自身の能力に自信を持っているが、それは対個人戦。複数戦闘向きではないことは理解している。

それでも正面の防壁に背後から撹乱する。


そう考えていた時だった。


「……外、騒がしいです」


カメラで地上部の監視をしていたドロシーの声だ。


「敵か?」

「多分……いえ、確実に。気付かれました。敵の動きが怪しくなった直後、カメラが切れました」


少しすると


ゴン……ッ

ゴン……ッ


地下施設の入口――重厚な扉の向こうから、衝撃音が響く。


「扉を……こじ開けようとしてる」

「来たようだな」


ついに扉がメラリア軍にバレたようだ。


ギリギリギリギリッ!!

カッターに切り替えたような、扉を切る音が聞こえる。少しずつだが、確実に削られる扉。

回転する歯の先端がこちらに到達。兵士達は緊張した顔で扉に銃を向ける。


「シア!」

「はいっ!」


シアが即座に動いた。

床に手をつけると、冷気が床を這い、扉へと集中する。


分厚い扉の内側を、さらに氷が覆う。

だが、それでも……

ギャリギャリギャリギャリッ!!

止められない。

不快な音を上げて少しずつ進んでくる歯。


ゴンッ!!

ついに、扉は音を立てて倒れる。

土埃と光に照らされ、入口は輝き、外がうかがえない。

全員が銃を構え、息を詰める。


――そして。


………

…………………


……………急に、音が止んだ。


「……?」

「なんだ……?…」


嫌な沈黙。

誰も動けないし、動かない。


次の瞬間。

「う、うわぁぁ!!」

叫びながら人が入ってくる。


「撃て!!」


ショーンはメラリアの軍服を確認した瞬間に号令をかけていた。ショーンの号令と同時に、地下施設に銃声が響き渡る。

一斉射撃。

躊躇はない。侵入者は敵――


初めに入ってきたメラリア兵は為す術なく蜂の巣になる。続けて入ってきた人影にもそのまま、一斉射撃が撃ち込まれる。


だが。


バチチチチチッ!


弾丸が、その弾幕が……

見えない壁に弾かれている。


「なッ……!?」


光の膜。

その圧倒的な存在感。


「……シールド?」


煙の向こうから、ゆっくりと姿を現したのは――。


「やっほー、ショーンさん。私だよー!」


聞き慣れた緊張感に欠けた声。


全身黒い軍服にほんの少しだけ入った赤いライン。

誰もが言葉を失っている中で、

「ここ、埃っぽいですねぇ」

などと言いながら、スカートを叩いてホコリを払う少女が、巨大なシールドを展開したまま立っていた。


「無事で良かったです」


「……リ、リリーナ!?「リリちゃん!!」


ショーンの言葉を遮り、シアがリリーナに抱きつく。

ショーンは……


「……来たか」

思わず、笑ってしまった。


「遅くなりました」

そう言って、リリーナは少し照れたように笑う。


絶望の只中だった地下施設に、

小さな姿の大きな“希望”が、足を踏み入れた瞬間だった。

少しでも面白いと思って頂けれれば、

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