136.リリーナ潜入
私達は司令部を離れて、レストデーン内部への潜入ルートへ向かう。
アルステリア側の門は、すべて封鎖されている。
オルガさんの能力で透明化したとしても、通れない。
正面から入る選択肢はなかった。
「川…ですね……」
私が言う。
「ええ。ここがレストデーンに流れ込むデーン川ね」
オルガさんは頷いた。
私達の目の前には川幅8m程、水深は一番深い所で2mくらいの川が流れていた。このデーン川はレストデーンの街中を北東から北西方向に流れている。
つまり、この川の流れに沿って行けばレストデーン内部に入れるってことだ。
濡れるけど……
川は静かで、その水はかなり透明度が高いんじゃないだろうか?
見るだけで分かる。死んでる水じゃなくて良かった。
濡れるし、寒いけど……
「じゃ、行くわよ。手を出して」
オルガさんが右手を出してくる。
「はいッ!」
わぁ…
手は年齢が出やすいとか言うけど、めっちゃ綺麗な手である。ほんと、どうなってるんだ?オルガさん。
「そ、それじゃ、動きにくくない?」
困り顔で言うオルガさんは可愛い。
あッ!?そうじゃない。
思わず両手で握っていた私。そりゃそうだ。これから泳いで………いや、流されて敵地に行くんだからダメじゃん。
「そうでしたッ!」
私は左手でオルガさんの右手と恋人つなぎする。
うん。これが一番外れないだろう。
「……。ま、まぁ、いいわ。」
デーン川沿いにも当然、見張りはいるだろうけれど、そこは問題ない。
オルガさんの能力――【消失】。
完全な透明化。
オルガさんが力を使った。次の瞬間、世界から隔離される。
おぉ!?
オルガさんが見えない!
凄いぞ!オルガさんの手の感触はあるのに、見えない!!
私の手がうっすら見えるのは、ゲームで自身が操作した時と同じだ。
「リリーナちゃん。また魔力が漏れてるよ。落ち着いて、敵に魔力で見えちゃうから」
オルガさんに指摘され、私は魔力を抑える。なんと、オルガさんは魔力が見えるらしい。珍しいけど、普通にいるようなので、消えてても魔力でバレる可能性がある。
オルガさんに言われるまで知らなかったけど、私は感情につられて魔力が漏れ出ているようだ。
普通にFPSやってる時はそんな要素なかったよぉ……
「そうそう、収まったね。気をつけて、行くよ」
「はいっ、気を付けます!」
私は気合いを入れ直す。
私の魔力操作のせいで見つかるなんて、絶対避けなければ…
私達は、川へ。
「はぅッ……」
冷たい水が足元を包む。
「ふふッ」
オルガさんに笑われてしまった。恥ずかしい……
意を決して胸まで浸かる。一度慣れてしまえば大丈夫。
そのまま、水中へと溶け込んでいく。
小さい浮きとシュノーケルを使って、川を下る。潜る必要はない。
私達は消えているのだから。
どういう原理か分からないけど、本来は身体があるところにも、水があるように映っている。
そこだけ不自然に水が無いとはならない。これは粉塵なども同様らしい。本当に視覚では捉えることが出来ないのだ。
ただの透明化とは違う。断然格上の透明化だ。
レストデーン付近まで来ると、見張りの兵士がいるのが分かる。
なのに、こちらを見ることはない。
私達が気を付けるのは、音と魔力。この2つ。
だから、極力泳がずに、川の流れに流されるように進む。
どんぶらこ……
気分は桃である。
「……大丈夫」
ようやく上がれそうな場所まで来たため、オルガさんが囁く。
――レストデーン内部。
私達は敵地に侵入したのだった。
橋の下、なるべく見つかりにくい場所から上陸する。
まずは先行部隊と合流を目指す。場所はアルステリア軍の隠し施設。見た目は民家のような所だ。
レストデーンの街はあまり知らないが、その建物周辺だけは知っている。
ゲームにあったなら、私は目を瞑っても景色がわかる。でも、それで過信は出来ない。
現実になった今。微妙に差異があるのは既に経験済みだ。
明らかに隠密が得意なオルガさんに従っていこう。
橋の下、影に隠れてから一旦、透明化を解く。
水に濡れたオルガさんは原作ファンには堪らないだろう。そんな気持ちを頑張って抑えつけ、私は魔力を漏らさない。
浮きには穴を開け、シュノーケルと一緒に石で川底へ沈め、証拠隠滅。
濡れて服が重くなってる
装備がないからって、私…今、ネームドの服なんだよね……
オルガさんはぴっちり系の軽装だけどさ。
私、スカートだし、タイツなんですけど………
あれ??
なんの素材か分かんないけど、なんか、みるみる乾いていく。絞るとなお早い!
凄い。こ、これが。ゲームクオリティなの!?
私が感動していると、遠くから赤いハイライトが近付いてくる。
オルガさんも気付いているようで、河川敷をこっちに向かって走行する車両がいた。
私を含めて再び透明化するオルガさん。
その車両は厄介なことに、橋の上で車両が停止する。
「ぜんっぜんいないっすねー」
「バカ!気を抜くなッ!しっかり探せ!」
私達……ではなく、ショーンさんやシア達の先行部隊を探している敵部隊のようだ。数は4人だ。
こっちに来る。
私達は見えないけど、私達が川から上がった時の水の跡はまだある。
あちゃー、タイミングが悪い。
私は掴んでいたオルガさんの手を離し、見えるようにする。場所的には敵にはまだ私達は見えない位置。
これで伝わる。
ハンドサインでオルガさんに敵が4人で倒すことを伝える。
風が私の脇を通ったのを感じる。オルガさんが動いた。
すぐに敵が橋の下を見ようとしゃがんでくる。まず1人。喉に【オズ】に付けているナイフで一突き。
声も上げられないままに、川岸を転がり落ちる。
それと同時に一番遠い敵が首を抑えて倒れていく。オルガさんだ。
私は素早く走り出し、次の敵へ。
びっくりした敵は硬直した。
なんだ……このレベルか。
大した事ないな……
2人目の首を切り裂き、腕を真横に振り抜く。
私にびっくりした3人目は、再びオルガさんに背後から刺され、気付いた時にはもうおしまいだ。
さすがオルガさんだ。
ククッ……私達、凄く良いコンビかもしれんね。
────────
side:オルガ
私は敵兵の心臓を背後から突き刺す。声を出される前に、口を塞ぎ意識が途絶えた所で離す。
敵は糸が切れたように倒れ、もう動かない。
なるほど……
戦闘に言うことはないとは、よく言ったものね。
流れるように2人倒した。私よりも早く、より正確に……
これが新ネームド【隻眼の死神】リリーナ・ランドルフの実力。
そりゃ、長官もお墨付きよね。
でも、この子……
戦闘中もずっとこっち見てた。
こっちを見ながらそっちの2人を倒してた……なんか笑ってるし……
……………ちょっと、怖いよ?
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