129.炎帝vsガイア
轟音と共に、赤黒い火炎が城壁前を焼き尽くそうとした瞬間、大地が震え、地面が盛り上がり、分厚い土の壁が形成された。
幾層にも重なった圧縮土と岩盤が、炎を遮断する。土壁が、炎の奔流を真正面から受け止める。
ゴウッ――!!
火炎が壁に叩きつけられ、爆ぜ、巻き上がる。
表層は赤熱し、砕け、崩れ落ちるが、壁はなおも立ち続ける。
内側から、次の層が押し出されていた。
「……流石だな」
【炎帝】デイビッドは、愉快そうに息を吐いた。無駄にポーズを決めながら。
「真正面から私の炎を防げる者は、そういないぞ」
ガイアも反撃に出る。
「ハインツさんには足止めと言われてるが……攻撃も必要だろう。これならどうだ?」
ガイアが地面を踏みしめる。
ドンッ――!!
土壁が複数隆起し、鋭利な形へと変形していく。土と岩が圧縮され、先端に向かって尖ったそれは、巨大な“槍”であった。
それも、一本ではない─計6本。
ガイアの正面の土壁から槍が6本飛び出ている。
「行け!」
腕を振り下ろす。
ドッ!!
ド、ド、ド、ド、ドッ!!
空気を裂き、唸りを上げて迫る岩槍の群れ。
硬度、質量、速度……どれもが必殺の域。人体など簡単に風穴が開く。
その全てが真っ直ぐ、デイビッドへ向かう。
「……いいだろう」
デイビッドは笑った。
避けない。下がらない。
両足を踏みしめ、胸の前で掌を開く。
「ならば……」
魔力が爆発的に収束する。
だが、それは球でも壁でもない。デイビッドは前方へ両手を突き出した。
「火竜」
デイビッドの両手から炎が“噴き出した”。
渦を巻きながら広がる炎。
前方へ放出される、炎と熱の奔流。
赤黒い火炎が螺旋を描きながら前進し、同時に凄まじい熱風が吹き荒れる。
空気が震え、地表の砂が一斉に舞い上がる。
岩槍が、その渦に突入する。
――ジュッ!!
音が、異様だった。
燃える音ではない。砕ける音でもない。
土槍の表面が、一瞬で赤熱する。
その魔力を帯びた火炎によって異常な速度で加熱された外殻が、急激に膨張したのだ。
だが、内部は違う。
岩石や圧縮土は、熱を伝えにくい。
外側だけが膨張し、内側はまだ冷たいまま。
その差が――歪みを生む。
「……!?」
ガイアの眉が、わずかに動いた。
炎の渦は、ただ熱いだけではない。
その熱によって巻き込んだ螺旋状の風が、土槍の表面温度を均一にせず、叩きつけるように加熱していく。
加熱。
膨張。
歪み。
そして、その風そのもの。
熱風が、膨張して脆くなった表層を叩いた。
次の瞬間、岩槍の表面に無数の亀裂が走る。
内部との温度差に耐えきれず、外殻が悲鳴を上げた。
バキィンッ!!
土槍は、命中する前に内側から砕け散った。
粉砕された破片が炎に巻き込まれる。
原型を留めた欠片は、ひとつもない。
デイビッドは腕を下ろし、悠然と息を吐く。そして、腕を組んで斜に構え、決め台詞。
「燃やしたのではない。壊したのだよ」
その声音は、愉悦に満ちていた。
「急激な加熱。膨張差。そこに風圧を加える。
硬いものほど、こういう衝撃には脆いのだ。ハッハッハッ」
「……あの野郎」
ガイアにデイビッドの声は聞こえない。聞こえる距離では無いが、ムカついた。
この世界の炎は一般的に防御には向かない。
だが、デイビッドの火力はそれを可能とした。それが炎帝たる所以であり、その自信の根幹でもある。
「面倒な炎だな、炎帝め……」
ガイアの呟きは当然聞こえない。
しかし、デイビッドは不敵に笑い、再び掌を開く。
周囲の温度が、目に見えて上昇していく。
「今度は私の番だな!ハッハッハッ」
炎帝が不敵に笑いながら、クルッとターンして再び火球を放つ。
ガイアはそれを土壁で再び受け止める。
通常の銃火器が入り込む余地のない応酬に、周りの兵士達は彼らの戦闘区域を避けるように、戦う。
攻撃が得意なデイビッドが攻撃し、防御が得意なガイアが止める。
2人は互いの得意分野と苦手分野がちょうど真逆であった。
炎と土。その頂点同士の戦いは、互いに決定打に欠けており、長期戦の装いを呈してきた。
そんな中、ガイアに無線が入る。
「ガイア。俺は配置に着いたが……奴の動きを止められないか?」
「ッ!……エンドさん。すいません。正直余裕はあんまないッス!」
エンドからの通信、だが、ガイアとデイビッドは互角の攻防を繰り広げている。
そんなネームド2人の攻防に入り込めるのも、またネームドである【エンド】だった。
2人の攻防は未だ距離がある。またデイビッドによる炎で各所が燃え、気流が乱れていた。
それでも、狙い撃つことができる特殊な弾丸を発射するスナイパーライフル。
もはや、アンチマテリアルライフルと呼ぶべきレベルの代物。
それがネームド【エンド】の専用武器アヴェンジャー。
リリーナの両親、シルヴァンとマリーの命を奪ったそれが、デイビッドを狙っていた。
一度放たれればその威力は折り紙付き。もう少し近ければシールドをも貫通する代物。それでも、エンドはまだ撃たない。
それは何故か?
──警戒されればシールドを使われる。
──シールドを貫通すると言っても、限界はある。
──この距離はネームドのシールドはキツい距離。
──ガイアの力と、炎帝の爆風でこれ以上近付けない。
──その一撃で仕留めたい。
理由はある。
だが一番は……
「……チッ…………あの野郎、ちょこまかポーズ決めやがって。黙って止まってろ」
デイビッドの無駄な動きであった。
サイトを覗くエンドは、イライラが絶えない。
少しでも面白いと思って頂けれれば、
ブックマークやいいね評価等して頂けると、モチベーションも上がって非常に嬉しいです!




