120.メラリアの方針
メラリア共和国、首都メラリオ
共和国議会では議論が激化していた。首脳陣は11名。戦時下の今、この11名の意見がメラリア共和国としての方針となる。
「アルステリアが息を吹き返したようだ」
「フンッ、たまたまの勝利だろう?」
「それが隻眼の死神などという新しいネームドの戦果だとか…」
「詳細はまだですが、ある程度確認は取れてます。誇張はあるでしょうが事実のようです。警戒は必要かと」
「次はレストデーンに現れるかもしれないな」
「レストデーンの安定化は概ね終わったのだろう?後手に回る前に攻めたらいいのでは?」
「おぉ!それがいい。こちらもネームドを投入しよう!」
「確かに、どうせ次はクウィントンかレストデーンでしょう。レストデーンに戦力を集めるのは賛成です。しかし、こちらは防衛に注視するべきでは?」
「いや、ここは奴らの勢いを削ぐべきだ!今一度こちらから攻め、打撃を与えて置くべきだ!」
「ですが、新しいネームドの能力も不明です!」
「だからこそだ!後手になると何をされるか分からんぞ!」
「しかし!防衛戦の方が確実性が高いです」
「我らのネームドを信じられないのかっ!?」
「信じる信じないの話ではッ!」〈カンカンッ〉
議長がガベルを叩く。
「これ以上の意見は平行線のようだ。ここで採決を取る」
「議長ッ!?」
「ヴァネッサ議員!静粛に。」
「ッ……」
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「はぁ………」
先程、防衛策を押していたヴァネッサ議員である。
「浮かないな」
「ザッカリーさん。はは、すみません。結局、こちらから攻勢に移ることになってしまいました」
「過半数が攻勢だったんだ。仕方がない……」
「アインリーパーがこちらにくるかも分からない。ルンドバード連邦側、クウィントンに行く可能性だってあります。まずは防備を固め、アルステリアに2局面作戦を強いり、ジリジリとアルステリアを削る。それが1番確実です」
ヴァネッサはそれがベストだと考えている。攻めるにしても今じゃないだろうと。
「そうだね。私もそう思うよ。でも、結果は出てしまった。私達は我らが戦力を信じる他ない。それに指揮官はハインツ・ケラー大将だ。存外、悪くないかもしれない」
「ケラー大将ですか。確かに彼ならば…とも思えますね」
「そうでしょう。我々メラリアはアルステリアに苦戦を強いられていましたから。その中でもほとんどの戦果はケラー大将です」
「ですが、先程も申し上げた通り、アインリーパーが気掛かりなんです。ノードを奪われたルンドバード連邦が立て直すまでの時間は我等も守りに徹し、タイミングを合わせて攻めるのが損失が1番少ないと考えるのですがね………
通りませんでした」
ヴァネッサは肩を落とす。
「今回、【シーラン】の使用許可まであります。ケラー大将と我らがネームド達、そして【シーラン】があれば問題ないでしょう。期待しましょう」
落ち込んだヴァネッサをザッカリーが励ましていた。しかし、ヴァネッサは違和感を覚えていた。
「そうですね。……しかし、ピエトロ議長、少し強引だった気がしませんか?」
「そうでしたか?私は何も思いませんでしたが……」
「そうですか……私の考え過ぎですかね?」
「先の戦争の件があったから、そう考えてしまうのかもしれませんね」
(先の戦争……メラリア議員が帝国と結託してレガシーアイテムを使用して不老不死を目論んだことによる戦争。
攻勢作戦はそれを考えてしまう。ザッカリーさんの言う通り、考え過ぎかもしれない。ビルさんだって、今回は攻勢作戦を推進していたが、元々は慎重な意見も言う、家族思いの良い人である。
それにレガシーウェポン【シーラン】の使用まで提案していた。殆どの戦力を回して勝ちにいくつもりだ。攻勢作戦を推進しただけで疑うのは良くないな……)
「意見が違ったからそう見えてしまったのかもしれません。すみません、愚痴でしたね」
「いえいえ、私達はメラリアを引っ張っていく立場の人間です。色々考え、時にぶつかり合い。話を聞いてより良くしていく。こういった話もいい事ですよ」
ザッカリーはそう言うが、ヴァネッサは小骨が突き刺さっているような。スッキリした気持ちにはなれなかった。
(どうしても、違和感を感じてしまう。特にピエトロ議長には気を付けなくてはならないかもしれない。
ルンドバード連邦とは同盟関係なんだ。またタイミングを合わせる方がアルステリアは嫌がると思うんだが………
はぁ……もう、決まってしまったんだ。ここからどうするかの作戦を練らないと)
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こうして決まったメラリア共和国の方針は軍部へ伝えられる。具体的な作戦はケラー大将に委ねられる。この議会での決定は国としての決定事項であり、軍部は従うほかない。
アルステリア帝国とメラリア共和国の国境線。5年前、エーテルノヴァの使用により、アルステリア西の要所であったレストデーンの街は既にメラリアの管轄下に入っている。
レストデーンは対アルステリアの最前線となったのである。これを束ねる指揮官ハインツ・ケラーは方針について連絡を受けたところであった。
「本国は本気ですか!?」
「ケラー様、議会はなんと?」
「ふぅ……彼等は攻めろとのお達しです」
「なッ!?ようやく街の安定化が一段落したばかりですよ?」
「えぇ、そもそも、ここまで軍部へ指示を出すことは稀だったはずですがね。ネームド達だけでなく、【シーラン】の許可まで降りました」
「そこまでですかッ!?」
「そうなんですよ。…………ここまでお膳立てされたら、やるしかないですねぇ」




