11.それぞれの訓練
日々、忙しくしていると時間の経過が早く感じる。
軍学校で授業を受け、放課後はレッドアイの訓練を行う。
普通の授業は小学生達に元25歳が混ざるというチートを使っているのに、ダントツで1位になれない。皆頭良すぎ。
これって既に高校の内容じゃない?みたいなのがあるし、ちゃんと授業は聞かないと行けない。
授業に組み込まれている訓練はどれも体力向上のメニュー名ばかり。普通にしんどい。
そんな授業の後、レッドアイの訓練は魔力消費が大きくて、すぐに魔力の底をつく。
魔力欠乏でクラクラして、風邪をひいて熱が上がった時のように身体がだるいため、これは放課後しか出来ない。
大体シア達、シア、カンナ、ミシェルの女子4人での行動が多く、そんな私をみて
「リリちゃん、ずっとこんなキツいことやってたんだね」
「強くなりたいからねー。でも、シア達までやらなくてもいいんだよ?」
「やる!私だって強くなりたいもん」
となった。全員血統スキルや魔術適正持ちなので、思う事は同じだった。平日の放課後は全員で訓練をする。
シアは私がやっていたように氷を作り出して魔力向上を測っていた。
シアの魔力が上がってくると、氷が大量に出来てしまうようになり、処分に困るようになってしまったので、水を出して溶かすようになった。
毎日その繰り返し。
でも若いって凄いね。この世界の人類が。なのかな?とりあえず寝れば回復するから助かる。それに鬼ごっこの後は体力が着いたのか本当に筋肉痛にならなくなった。
授業を受け、血統スキルの訓練をする。たまに休みの日女子4人で街に出る。
服とかに興味無い私は大体ついて行くだけど…
パフェは美味しかった。
そんな変わり映えのない日々を過ごしていたら、4年生になっていた。
4年生からサークルがある。魔術師適正のある者はそれぞれに対応した魔法のサークルに入り訓練する形だ。
この世界、FPSゲームの癖に未だに銃を撃ってない。今か今かと待ち望んでいるが、高学年までないらしいことを先日聞いた。
ぐぬぬ。
シアは氷の魔術師サークルに参加して特訓し始めた。
ずっとシアと一緒にいたせいか、いないとちょっと寂しく感じてしまう。
シアはもっと感じているかもな。
…頑張れ、シア!
魔術師適正とは別に、血統スキルを持つものはその特性から各一族で訓練している者が多く、そのスキルにあった訓練をしていた。
かくいう私のレッドアイも系統スキルだ。壁越しでも人がいるのが分かる。
発動のやり方だけならずっと練習してきた。それに見え方はゲームでやってたから問題はない。
レッドアイの問題は消費魔力がデカすぎて長時間出来ないこと。昔に比べて魔力が増え、時間が伸びてきた。今はフル魔力の状態なら1分間使える。
ザックさんに父さんのレッドアイを聞いた事がある。それを聞く限り、ほとんどゲームと同じだった。
でも、私は使用時間が父さんを超えて伸びた。
……ゲームの設定を超えたんだ。
これでゲームのレッドアイはあくまでもゲームバランスが良くなるように調整されたものだと予想する。ゲームモードによってはスペシャルスキルなどは使えなくなって、ただのキャラスキンになるモードもあるんだから。
つまり、現実となった今は設定に囚われない使い方ができるということ。
私が考えているのはレッドアイをこまめに使って、魔力を節約する方法だ。
放課後、グランドの校舎全体を見れる位置にあるベンチに座る。
レッドアイを数秒起動して、やめる。
数秒たったらまた起動して、やめる。この繰り返し…
これで総使用時間が同じでも、人の移動を補足できる時間が伸びるはずだ。
これは絶対にゲームだと出来なかったこと。なんせ1試合に1回しか使えないと決まっていたのだから。
「ヨシ!やるぞ!」
私は気合いを入れて校舎をみる。レッドアイ発動!瞳孔が紅く輝き、少し身体が火照るのを感じる。すると私の視界には校舎内にいる生徒や先生がまだたくさんいるのが見える。人だけ赤にハイライトされている感じだ。よし、解除!
うん、ここまではいつもやっていること。
ここで直ぐに発動する。
「ん!」
私の目が再び紅くなる。人もハイライトされる。
ぐ…あ、解除しようとしていなかったのに、レッドアイが解除されてしまった。
もう一度だ!
再び発動する。
火照るのを感じる……あれ?ちゃんと発動出来ない。
上手くいかない…
簡単にはいかないな。まぁ、魔力切れるまでやってやるさ!!
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今日からリリちゃん離れて訓練をする。氷魔術師の訓練だからリリちゃんと一緒は無理だし、強くなるにはここにくるのが確実なのは間違いない。
わかってるけど、すっごく寂しい…
「やぁ、君が4年生の氷魔術師だね?」
「は、はい!」
「僕は8年生、デイビス・クライブだ。今日から部長です」
「シア・フォーデンです」
「はい、よろしくね。氷魔術師は君を含めて5人いる。7年生にいないだけで、あとは各学年1人ずつって感じだね。9年生に氷魔術師はいるんだけど、9年生は実践演習ばっかりだから、基本サークルは8年生主体になる。
たまにしか来ないから、とりあえず気にしなくていいかな」
なるほどー、だからデイビスさんが部長なんだね。
「毎週水曜日が基本的な訓練日だからここに集合してね。水曜日以外、今日みたいなイベント日はその限りじゃないから都度連絡する形かな」
「はい!分かりました」
「じゃあ、早速だけど訓練といこうか。まずは君がどれだけできるか確認しよう。魔石は持っているな」
「はい!」
「じゃあ、あの的に魔法で攻撃してみてくれ」
私はパパに貰った魔石と、入学時に貰った魔石の2つを持っている。学校で使うのは入学に貰った方だ。パパの魔石は部屋に大切に保管している。
魔石はネックレスにして首からぶら下げている。パパが言うには両手が空くから絶対にネックレスだ!とのこと。
ちょっと緊張するけど、大丈夫。右手を真っ直ぐ突き出す。
いつもと同じ。
魔力を感じ、魔石に送り込む。
左手も右手に添え目標となる的を正面に見据える。目標は木製の板。人型の絵が描かれていた。
集中したシアの手の少し先からから鋭く尖った氷が創り出される。長さ20cm、直径5cm程の氷の槍。それは既に8年生のデイビスからみても素晴らしい純度で形成された氷だった。
「…穿て!」
ボソリと言った瞬間、シアの手から放たれた氷槍は的の中心から少し下にズレた位置に衝突して突き刺さった。
「凄いな、その歳でもう木を貫通できるのか」
「はい!最近できるようになりました!」
「誰かから教わったのか」
「はい!リリちゃんから!」
「ふふっ、そうなんだね」
デイビスは〖リリちゃん〗を知らないが、とりあえず詳しい誰かから聞いたのだと結論付ける。先程の魔法と違って話すと年相応だなと思いながら。
「じゃあ、次は氷壁を創って見せてくれ。今の君ができる最大の壁を創ってね」
「はい!」
シアは地面に両手をついて集中する。
先程よりも、よりたくさんの魔力を練り上げる。魔力が魔石に流れ、そこから両手を通して地面へと走る。
パキ、パキパキ!
徐々に地面から伸びてくる氷にデイビスは驚く。速度は決して早くはない。この歳にしては早い方だと思うが驚いたのはそこではない。
とにかく大きかった。
縦2m、厚さ0.5m、横は5、6m程だろうか。それは既にデイビスが出来る最大サイズよりも大きいからだった。
自身の方が早く創り出せる。氷の硬度は見る限り大差ないだろう。
しかし、大きい。
ふぅー、とやりきった表情をしているシアの予想以上の実力に驚きが隠せなかった。
「マジか!!これ4年生ちゃんがやったの!??」
「ん?」
シアが振り向くとそこに4名の生徒がいた。
「あ、あぁ、そうなんだ」
「マジすか!天才ちゃんすか!?」
少し遅れて再起動したデイビスが紹介する。同じ氷魔術師の仲間達だった。
「あ、あの、よろしくお願いします」
「あぁ!よろしくな!」
「ねぇ、ちょっとシアちゃん!どう魔力通したの!?練り上げ方?魔力量??」
赤毛の目がぱっちりとした小柄な少女、先程の紹介ではメリアと言うひとつ上の先輩らしい。そんな元気いっぱいな彼女から質問攻めにあう。
「し、親友の言う通りに魔力量向上の訓練をずっとしてて……」
「魔力量かー!!お、お願い!その訓練方法私にも教えて貰えるかな?私も教えれること教えるからさ!
あ、もしかしてその子も魔力量凄いの!?」
メリアさんが怒涛の勢いで質問してくる。私は慣れてなくて慌ててしまう。
正直、未だにこういう勢いが強いのは苦手……
でも、メリアさんに悪気がある訳じゃない。むしろ私のことを認めてくれているみたい。だから、頑張れる。
それに……
リリちゃんの凄さを理解して欲しい!
私は氷魔術師のみんなに如何にリリちゃんが凄いのかを説明する。
「リ、リリちゃんは私よりよっぽど多いです……」
お、おかしい。
必死に説明したのに、皆からは怪訝そうな顔をされた。
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