118.挨拶
任命式を終えたリリーナは、今度は国民への挨拶をする。任命式は皇帝陛下や大臣、大将達といったアルステリア帝国の中枢で行われたが、次は国民ということだ。任命式は映像が提供されるだけであり、こちらは中継となる。
宮殿に集まった者達以外にも、アルステリア全土に放送され、注目されることになる。
「ほら、リリーナ。そこを出たらもうバルコニーだ」
テレーズが指さす先にある扉。これまた細かな装飾が施された扉の先がお披露目の舞台だ。
「了解です!」
「だいぶ良くなったか?」
「流石にもう午後3時ですからね。冴えて来ましたよ!」
「フッ、そもそも二日酔いで式典に出る奴なんていないんだがな」
「あははは、すいませんッ」
テレーズは呆れているようで、内心は笑っていた。
「つか、リリーナはなんでそんな緊張してないんだ?」
ショーンは気になる。ショーン自身も経験しているが、緊張で言葉は短く、事前に考えたものを読んだだけだった。
「そりゃー。い………一応、世界一になってるし、取材経験もあるし、配信もしてたし…」
「ん??」
リリーナがボソボソ言うため、ショーンは聞き取れなかった。
「あッ!ショーンさん!どんな感じで行けばいいですかね?清楚な感じがいいでしょうか?それともギャルっぽい感じがいいですかね?」
「何を言ってんだ。んなキャラ作んなくていいんだよ。お前は素のままでいい」
「そうだな。その感じで充分異彩だ」
「それって褒めてるんでしょうか?」
「褒めてる褒めてる。みんな思うだろうさ、その見た目でネームドなのか?ってな」
「違いない……」
「すみません、そろそろお願いします!」
係の衛兵から声がかかる。
「はい!
私が小さいのは分かってますよーだ」
リリーナは口を尖らせて、不満を言いながらバルコニーへ向かう。
そんな背中を見送りながらテレーズ達が話す。
「ふふっ、だからこそ怖いんだよ………戦果に合わないその見た目が……」
「普段は眼帯くらいですか?威圧感あるのは…………戦闘中はちょっと、怖いくらい雰囲気変わるんですけどね」
「違いない……」
_______________
宮殿の広場、国民のボルテージは上がっていた。先の戦争(ゲームの舞台)以来、アルステリアではネームドに認定された者はいない。
そして、ノードの解放という領土を取り戻した勝利は、国民にも分かりやすい功績である。
人々はまだ姿も分からない、隻眼の死神と言うネームドを一目見ようと、広場を埋め尽くしている。
他国を警戒して、直前の周知にも関わらずだ。それだけでも注目度の高さが窺える。中継カメラも多数あるため、数日でアルステリアに知らない者などいなくなるだろう。
いよいよ時間となり、まず最初に話すのはヴァンリ皇帝からだ。
「全アルステリア帝国国民よ!我がヴァンリ・フォン・アルステリアである!
皆も忘れられぬだろう。5年前、我らは多くを失った。土地を、仲間を、希望を……
だが、今、その希望は一人の少女によって、確かに我らの前に示された。
5年にわたり孤立したノウレアを守り抜き、数多の敵を退け、ノードを再び我らの元に取り戻した者。
今ここに、我がアルステリア帝国を守護する新たなる牙を紹介しよう。
彼女が【隻眼の死神】!!リリーナ・ランドルフである!
この者こそ、我らが未来を切り拓く新たなネームドである!」
ヴァンリ皇帝の言葉に合わせて登場したリリーナに、大歓声が上がる。
「あの子が!?」
「新しいネームドだぁ!!」
「アインリーパーだってさ!」
「えぇぇ!?まだ子供じゃないか?」
「皇帝陛下が紹介したんだぞ!本物だよ」
「眼帯かっけぇぇ!」
リリーナの容姿への驚愕なども混じりながら、広がっていった。
ヴァンリ皇帝が下がり、マイクのある壇上にはリリーナ1人となる。リリーナはそのまま、歓声が落ち着くタイミングを図り、話し出した。
「この度、皇帝陛下より【隻眼の死神】を賜りました。リリーナ・ランドルフです。
私は両親も…育ての親も……殺されました。その様を私は見ています」
会場にどよめきが走る。
「それでも!だからこそ!私は守りたい。私の大切な人達を……
でも、私の大切な人はみんな兵士なんです。
だから私は戦場に行きます。もう誰も失わないために。
私と同じ思いをする者を、一人でも減らすために……
私は、アルステリア帝国の牙として戦います!!」
再び歓声が上がり、広場は熱気に包まれている。だが、リリーナの目は広場に向けられてはいなかった。遠方……宮殿の外、帝都にあるビルの方角。
「敵……」
キンッ!!っと甲高い、金属同士がぶつかる様な音が鳴る。それはリリーナのシールドによって弾かれた弾丸の音だった。
今、リリーナのシールドはとても大きく展開されていた。皇帝陛下を庇う程の大きさである。
魔力量の多いリリーナでも、ランク5の魔石でなければできない芸当であった。
「ちょっと貸して?貴方は陛下を連れて中へ…」
リリーナは近くの衛兵からスナイパーを拝借する。リリーナは見ていたスナイパーを狙い返す。
スーと息を吸い、止め、撃つ。
ドンッという発砲音と共に、発射された弾丸は敵スナイパーのスコープへと着弾する。ビルの屋上にいる、赤くハイライトされていた敵は呻き声を上げ、目と銃を持っていた手から出血する。
「な、なんでッ!?」
敵は痛みと困惑を滲ませながら、屋上のドアの方へ何とか逃げようとしている。
「この距離だとシアみたいにはいかないな……」
スコープ越しでその様子を確認したリリーナは、次弾を発砲する。今度は敵の背中を貫き、ハイライトが消える。
それを見届けたリリーナは、バルコニーから室内に戻ってきた。
「リリーナ、襲撃か!?」
「はい。向こうの高い、2つ並んだビルの屋上に1人。そっちは倒しました。それと、広場の出入口にいる、濃い緑のジャケットと帽子の男を捕まえてください。
そいつも敵です」
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