107.別れと出会い
皇帝陛下との会談の後は、寮みたいなところでようやく休めた。翌日もその次の日も打ち合わせや会議で1日が潰れる。ずっと机に座ってるのも辛くないだろうか?
前世では座ってゲームを1日中やってても大丈夫だったのに…嫌なことって長く感じる。
そして、3日目。今日は特務機関への入隊式がある。時期が半端であるが私のために開いてくれるらしい。シア達はもうやってしまったらしく、私1人だけど、久しぶりにゆっくりみんなと会えそうだ。
入隊式に伴い、私にも軍服が支給される。シア達と同じ暗い緑っぽい色に、黒いブーツだ。ちなみに特務機関は黒ブーツで通常軍は茶色のブーツになる。これは式典用で、しかも新品のため、硬い。我慢するしかないか。
特務機関本部はノーステリアなので、帝都組みんなでノーステリアに半日かけて向かう。ほぼ新幹線でこの辺は交通の便が良くていい。
だが、1人ここでお別れの人がいる。
「リリーナ、お前の活躍応援してるぜ」
「ワイリーは、これからどうするの?」
そう、ワイリーだ。ただの学生だったワイリーはこれから普通の生活に戻る。何となくそんな気がしていたけど、寂しくなるからちゃんとは聞けなかった。出会いは良くなかったが、なんだかんだ同級生以外で初めて出来た友達だった。
「融通を図ってくれてな。試験なしで入隊できることになったんだ。1ヶ月後からだけど、第3師団の大尉だ!」
「おお!それは良かったね。ちゃんと替えのパンツ持つんだよ。あ、おやつは300円までだからね!バナナは…「お前はオカンかッ」
ワイリーに脳天をチョップされる。やはりお笑いの道がいいんじゃないだろうか…
「お前が避けないとは…」
「最後くらいちゃんと当たってあげようかと。餞別だね」
「んな、餞別があるかよ」
「ワイリーは弱いんだから、すぐ死んじゃいそう。ちゃんと頑張るんだよ」
「わかってるよ!……俺もがんばっから、また飲もうぜ」
「うん、絶対ね」
私達は拳と拳を合わせる。ワイリーは第3師団の所属か。部隊が違うと次いつ会えるか分からない。戦場が被るか休暇タイミングが被るかしなければならないからだ。1年、2年は会えないことが多い。
最初は最悪だったのに5年も苦楽を共にすれば、こんなに情がのるとは。私は涙が出そうな顔を少し拭っておいた。
ちょっぴり寂しい気持ちになりながら、ノーステリア特務機関本部に到着する。何故本部が帝都じゃないんだ。って気持ちはあるが、5年振りのノーステリアは感慨深い。
懐かしい軍学校を横目に特務機関本部へ到着した。私は長官と遅れて行くので、長官室で一旦、待機だ。
「リリーナ、コーヒーはどうだ?」
「あ、頂きます!」
豆を引くところから始めるテレーズ長官は手際がいい。いつもやってるんだろう。
「長官ってコーヒー好きだったんですね」
「あぁ、最初は眠気覚ましだったが、今では趣味みたいなものだ。ほら、できたぞ。砂糖はどうする?」
「ブラックで」
「ほう?大丈夫か?」
「コーヒーは前も飲んでたんで」
入れたてのコーヒーは私の鼻を刺激した。久しぶりのコーヒーの香りだ。
「あ、美味い…」
「ふっ、そうだろう?」
この体ではちょっぴり苦いが、これは美味しいコーヒーだ。テレーズ長官は振る舞うのが好きなのだろう。嬉しそうにしている。
「リリーナ、すまないな。色々と背負わせてしまって」
テレーズ長官が真面目な顔で謝ってくる。今回の私をネームドの件だけじゃないのだろう。父さんもザックさんもテレーズ長官の部下だ。長官のせいではないが命令は出しているのだ。関与していると言えばそうだろう。
「大丈夫ですよ。私だってバカじゃありません。この世界が残酷なのは分かってます。もう誰も死なないように努力するだけです」
「そうか……なら、遠慮なく暴れて貰うからな。サポートはするから全力で進め」
「はいッ」
後ろに味方がいることがこんなに心強いとは。ありがたい。
時間が来ると、テレーズ長官に続いていく。ついた場所は訓練場。ズラリと特務機関員が並んでいる。ここにいるのは兵士だけでなく、特務機関における様々な職員達を含めて300名ほどらしい。
これだけの人数が私の入隊式に集まった。流石にちょっと緊張してきたぞ……
「では、新入隊員、リリーナ・ランドルフ少佐!」
「はッ!!」
私は壇上に上がり、皆の注目を集める。ここで一言抱負を言うんだったな。
「この度、特務機関へ入隊させて頂く、リリーナ・ランドルフです。…私の大切な人はみんなアルステリア軍に所属しています。軍は国民を守るために戦いますが、私は……そんな、みんなも守りたい。そのためにも全力で、最善だと思うことを、精一杯やらせて頂きます!よろしくお願いします!」
拍手を浴び、壇上から降りる。とりあえず手短に、私の想いは言えただろう。続いてテレーズ長官が壇上に上がる。テレーズ長官が閉めの話をして終わりだと聞いている。
「さて諸君!今し方挨拶したのがリリーナだが、彼女は明後日、中佐に昇進する」
少しザワつく。私も知らなかった。そうなんだ。ネームドと合わせて昇進ってことかな。
「兵士課の者達に告ぐ!」
壇上から見て中央の200名もいない集団が姿勢を正す。
「君たちは彼女の指示に従うことになる。まだ兵士となって1週間足らずであるはずの彼女にだ」
ざわめきが強くなったきがする。そうだけど、そんな煽るようなことしなくてもよくない?
「お前達は特務機関として招集されたのだろう?選ばれた自負はないのか?
疎ましく思わないか?ぽっと出の新米に先を越されて、貴様らはなんとも思わないのか?」
「良くないです!!」
少し奥の方から声が上がる。あのスキンヘッドの人かな?強面だが、歳は私達の少し上くらいだろうか?特務機関全体で見れば若い方だろう。
「そうだろう!ならば闘ってみればいい!もし、勝てれば昇格してやろう!!」
私はニヤリと笑う長官を見逃さなかった。
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