106.実は
「ふぅー。これは私も見た事がある。陛下……やはり、マリー博士のデータはルンドバードに奪われていますね」
「え!?」
私は思わず声が出る。
「これは自動防御装置【ジュラ】だ。リリーナ、お前の母が開発していたものだよ」
「えっ?あの時、データは壊したって??」
困惑しながら、クレアさんを見る。クレアさんは悲しそうな顔で、しかし、私を見据えて話してくれる。
「私達は確かにマリー博士のPCを破壊、破片も回収したわ。でもね、コピーを作られた疑惑があったの。ただ、その装置が出てきたってことは、もう…ほとんど確定ね……」
「クウィントンの悲劇…あの時使用されたエーテルノヴァも本来はマリー博士の開発したものだったんだ。公表はしていないがな」
テレーズ長官はそう、教えてくれる。エーテルノヴァについての知識は前世の記憶からだ。あれが母さんの開発だったとは…知らなかった。
私、白亜三式を見て、母さんがすごい人なんだと何となく思ってたけど、エーテルノヴァもか…………
え?待って。
ゲームだった頃、エンドも倒してた。でも今回は?
……私がいたから…エンドを倒せず、母さんの研究データを奪われた。それがクウィントンで使われた?
……私の、せ、い、?
「違うぞ!!」
大きな声に思考が戻される。いつの間にか声が出ていたようだ。俯いていた私がゆっくりと顔を上げると陛下が立ち上がっていた。
「違うんだ。君のせいじゃない!そもそもノーステリアまで侵入された、管理不足の私の責任だ」
陛下はエンディングを知らないからだ。私がいなければ、父さんがエンドを倒していたんだ。しかし、それを言っても仕方がない…
それを知るのは私だけなのだ。私は泣きそうになるのを必死でこらえていた。
「もちろん、マリー博士でもない。マリー博士には私の父、先代皇帝が兵器開発の命令していたんだ。すまない」
この国の最高権力者、唯一の皇帝であるヴァンリ皇帝が頭を下げる。
「陛下ッ!?」
ダニエルさんが声を上げるが、陛下に制される。
「これは僕の役目だ!!先代皇帝を止められなかった僕も同罪だ……」
「陛下……」
先代皇帝か。
軍学校の頃、授業で知った。先代皇帝はメラリア共和国と戦争をしていた。現地で戦う兵士は命を懸けて戦っていたのだ。
だが……
その実、先代皇帝とメラリア共和国の上層部は繋がっていた。共謀し戦争の犠牲者を生贄にして、不老不死になるというレガシーアイテムを使おうとしていた。
それを止めるために父さん達レッド部隊はメラリア共和国に侵入、機密文書を確保してメラリア上層部は失脚。アルステリア国内では先代皇帝を討ってヴァンリ皇帝がその座に付き、和平が成された。
そう教わった。
おそらく、それがゲームのストーリーだ。
うん、覚えてない。ちゃんとストーリーも楽しめよ、私!
だけど、もうその先代皇帝はいないからその件はもう大丈夫。
私は、私の存在で変わってしまった話を修正しなければならない。じゃないと、この世界は平和にならない。この世界はFPSゲームなだけあって、物騒だ。マッドとジュストは唐突に死んでしまった。勝手にずっとみんなで笑い合えると思っていた。シア達だっていつ殺されてもおかしくない。
やっぱりエンドを倒さなくちゃ…
「陛下は何も悪くありません。大丈夫です。私はこれから私の大切なものを守るだけです。そのために持てる力を全部使うつもりですから」
「う、うん。頼りにしてるよ」
「リリーナ、ワイリーをさっきの部屋に連れていって休んでいてくれ。緊張で顔色が悪い…」
隣を見ると確かにワイリーは真っ白である。仕方がないな。
「ほら、ワイリー行くよ!失礼します!」
「し、しつれいし、します」
私は緊張しすぎのワイリーを連れてさっきの部屋に戻る。ジェフさんにお茶を貰おう。少しは落ち着くだろう。
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リリーナの去った会議室。大人組はまだ残っていた。
「…リリーナには知らせない方が良かっただろうか。精神的に…大丈夫か?」
ヴァンリ皇帝は先程のリリーナの様子を見て気にしていた。
「両親を目の前で亡くし、義父であるザックも亡くしてそのまま5年間の籠城戦をしていたんだ。無理もないだろう。むしろ強いくらいでは?」
「…だね」
ヴァンリ皇帝は改めて聞く、リリーナの経歴に俯く。
「…それはそうだな。それにしてもテレーズ、口調直すの早過ぎないか?」
ダニエルは流石にと指摘する。
「ここで知らないのはシンディだけです。この面子ならばいいでしょう?。ちょっと話しにくいんですよ」
「ダニエルには僕よりも丁寧だなぁー」
シンディは目を大きくしてビックリしていた。ヴァンリ皇帝に対して気さくに話すなど、考えられなかった。それだけ皇帝の権威は大きいのだ。
「陛下と長官は幼なじみなの。素はこっちだから、慣れて」
クレアがシンディに説明してくれる。
「そ、そうだったんですか……」
理解はしても、驚きは隠せなかった。まだ目は大きいままである。
「話を戻すが、リリーナは昔からシルヴァンやマリー博士が死んだのは自分のせいだと思っている節がある」
「そうなの?そんな、当時5歳か、そのくらいだよね?」
「そうだ。だが、リリーナは昔から頭がキレる。子供だったリリーナに時間を取られて追跡が遅れたと考えているらしい」
「それはッ!?そんなことッ…」
「あぁ、そんなこと心配することじゃない。だが、そう考えているのは事実なんだ。クレアそうだな?」
「はい。ノウレアで一緒にいましたから、その時に当時の話も少し…その時に話していました。そして残念ながら、真に困るのは確かに追いついていたかもしれないと言う点です。リリーナはそこまで見えていて言ってます」
「……否定も通じない、か。頭がいいのも困りものだな」
「諸君、彼女のこと気にかけてくれ。頼む」
「「もちろんです」」
ヴァンリ皇帝の言葉にクレアとシンディの言葉が被る。
「ふふっ、言われなくても当然だろ」
「ははッ、愚問だったね」
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