104.目標
「な、何故嫌なんだ??」
テレーズ長官は心底不思議な表情をしている。
「え?私有名になりたい訳じゃないですし……」
別に承認欲求が無いわけじゃないけど、そんな有名になりたい訳じゃない。それに有名になっても給料は上がらないだろう。どうせ軍は階級次第だし。前世はお金になるから配信しただけだしなぁ。
「め、名声は……名誉あることだぞ?」
「んー、私の目標じゃないですね」
「……っ!?」
そんなに驚かないで欲しい。この世界だとみんな英雄願望があるのだろうか?英雄……私は凄いとは思うがなりたいとは思わないかな。前世も世界一が目標だっただけ。それが楽しかったんだ。
「なら目標はなんだ?」
「目標ですか?それは【エンド】を殺す事ですね」
それだけは父さんと母さんに誓った。私ができることはもう…それしかないから。
本来のエンディングはあの時、父さんが【エンド】を倒して、母さんが救出されてハッピーエンドだった。もしかしたら、制作サイドはエンドって名前もかけてたのかもしれない。
奴を倒せば、2人は死ななかったし、こんな戦争だって起きなかった。エンドを倒せばきっと……
「それは……特務機関の戦術目標でもあるな。」
少しアンニュイな表情になったテレーズ長官。
「奴は我々としても抹殺対象だ。敵国メラリアのネームドだからな。」
確かに敵国のネームドは特に警戒するべき敵だよね。特務機関が対応する案件だよね。
「なるほど…」
「であれば、尚更この案に乗った方がいいぞ?」
「どういうことです?」
「エンドはただのネームドじゃない。ネームド殺しとも呼ばれる程の実力者だ。メラリアでも重用されてるようで、重要な作戦じゃなければ、そう簡単に前線までは出てこない」
母さんの誘拐はそれだけの奴が出張ってくるレベルだったと……
「つまり、私が有名になればやつも出てくる…と?」
「そう言うことだ。皇帝陛下から表彰と共に2つ名を賜るんだ。これで晴れてネームドとして認識される。ネームドとして活動してれば奴の方から現れる可能性が高くなるだろう」
……これがゲームの裏事情なのか!?ネームドキャラってそうやって、名前付いてたんだ。まぁ、なら、いいか。
「分かりました。ならその方向でいいですよ」
「では、この後内々に謁見だ。まだ少し時間があるから、アリス採寸しておけ」
「ぇ!?」
「了解です。さぁ、リリーナちゃん、いつまでも軍学校の制服じゃいられませんよ。式典用の服と任務用の服を作りますからね」
私はアリスさんに脱がされ、あらゆる所のサイズを測られる。丁度いい所にある障子を目隠しに和室を密室にされた。
「おぉ!?なんというキメ細かい肌!正しくもち肌!胸は控えめ!」
言わなくていい。
「……和室は罠だった」
ようやく解放されたら私はすっかりぬるくなってしまったお茶を一気に飲み干す。襖が開けられたことにより、スっと新しいお茶をくれるジェフさんがとても助かる。
時刻はもう少しで14時を向かえるところで、ノックが聞こえてくる。誰か来る予定だったのか?
「はいッ!ただいま参ります!」
直ぐにアリスさんが扉を開けにいく。中に入ってきたのは何やら黒い高級そうなコートを着たオーラのある人物と、黒い軍服、それも大将の階級章をつけたおっさんだ。
やっばい!いつの間にか部屋にいたみんなが片膝を付いている。偉い人だ。ワンテンポみんなに遅れて、私も片膝を付く。
「よい、公の訪問ではない、皆、楽にしてくれ」
その落ち着いた良い声に合わせて、顔を挙げる。さっき話したのはコートの人だ。大将じゃない……え?今のセリフを言うってことは大将の上ってことだよね。まさか……
「陛下、こちらの部屋へどうぞ」
陛下だぁー!!そういえばさっき、謁見って言ってた!?
採寸でもう記憶飛んでたわ。
「クレア、シンディ、リリーナ、ワイリー行くぞ」
おっとぉ?ノウレア組で謁見ですか。心の準備全くできてないのよ。隣の部屋に続く扉を開け、会議室へ移る。
最も上座に陛下が座り、その右に黒コートの大将が座る。私達は向かいの席に先程呼ばれた順に座った。テレーズ長官はクレアさんの隣くらいに立って話し出す。
「陛下、この者たちがクウィントンを生き残り、ノウレアを5年間護りぬいた者たちです。紹介します。クレア・マーカム」
「はッ!」
クレアさんが立ち上がり、頭を下げる。
「クレア、随分と久しぶりになってしまったね。ともかく、無事で良かったよ」
「陛下、何とか帰って来れました。ありがとうございます」
「シンディ・レイン」
「はっ!」
先生が立ち上がり、頭を下げる。なるほど、座り順的にも次は私、立ってお辞儀して、一言会話すると。
「君が近接戦闘の天才と言われるシンディか。よく生きててくれた。今度、演習見せてね」
「身に余る光栄です。若輩者でございますがその時は全力でやらせて頂きます」
「ワイリー・ハミルトン」
「ひゃい!」
おと、と、と、と、???ケツを少し浮かせてまた座る。完全に私の番だったじゃんか!順番守ってよ!ワイリーに至ってはビックリして声が裏返っていたし!テレーズ長官はニヤリと笑っており、陛下も口角がピクってしてた。絶対笑いを堪えてる。
「学生の身でありながら良く生きぬいたね。辛い思いをしたと思う。よく頑張ったね」
「あ、あ、ありがとうございます」
「そして、コイツがリリーナ・ランドルフです」
「はッ!」
今度こそ私は立ち上がって、お辞儀する。ついでに座りながらテレーズ長官を睨んでおく。
「ふふっ。君がリリーナ・ランドルフなんだね。私が思っていたより、かなり可愛らしい子で驚いたよ」
とりあえず失礼のないようにしないとね。
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