101.中枢
side:エメット
ルンドバード連邦国、ルンドバード連邦軍参謀室、室長室。俺はその重厚な扉の前まで連行されてきた。俺は拘束服によって両腕は自由が効かず、歩かせるために両足の拘束だけ緩められている。俺はノウレアでの敗北の責任を取らされ投獄されていたからだ。
「連れてこい」
「「はっ!」」
低く重圧のある声が響き、豪華な装飾が施されたこの部屋に連れられる。
最も上座の見るからに高い机に座るのは、ルンドバード軍参謀室、室長兼軍務卿のソロモン・エリオットである。この男こそ、ルンドバード軍のトップであり、ルンドバード議会を牛耳っている実質的なルンドバード連邦国の支配者である。
脇に並ぶは室長補佐である2人、ニコラスとベルナール。ここにルンドバード軍トップ3がいるという事だ。
「貴様の所為でどれだけの被害が出たと思っている!」
最近大将になったニコラス大将が怒鳴る。軍部に多くいる血の気の多いタイプの軍人である。被害は確かに大きい……
「すみません……」
「アルステリア軍の新型兵器の情報もありますが、その前の被害も馬鹿になりません」
ベルナール大将はニコラス大将に比べ冷静に事実を話す。だがそれはニコラスの怒りに薪をくべる内容だ。
「そうだぞ!そもそもあれだけの人員で何故、ノウレアを落とせない!?」
「そ…それは………敵の大規模な罠と、指揮官を失い混乱していたからです…」
俺もあれだけの戦力差であれば、問題なく勝てると思っていた手前、言葉に詰まる。
「お主がエメット・カーンか。危機感知の能力で優秀だと聞いている。ノウレアでの経緯も聞いているぞ。ロベルトは隻眼の死神とやらにやられたそうだな?」
「はい…」
ソロモン軍務卿はゆっくりとした口調で話す。何も知らない者が状況だけ見ればソロモン軍務卿が最も穏やかに感じるが、そうでは無いことを俺は知っている。返答にひとつでも間違えれば、確実に首が跳ぶ。比喩ではなく、物理的な話だ。
「ロベルト亡き後、ジェイレンと意見が合わなかったようだな。まぁ、そのジェレインは死んで当然として……
当初指揮官であるロベルトの責もあるだろう。ワシは優秀な者はしっかりと使いたいのだ。遊ばせて置くのは惜しいのだよ」
味方してくれているのか?それともこれから落とす前の助走なのか。真意が分からず何も言えない。
「ワシが貴様に問いたいのは、ライトニングもいたにも関わらず、指揮官であるロベルトを死なせたことだ。申し開きはあるか?」
真っ直ぐに俺を見詰めてくる眼光は鋭い。目を逸らしたくなるのを必死で耐える。今はダメだ。だが、確かにロベルト少将を守れなかったことにに関しては、俺の能力不足もあるだろう。どう返答するか。
そんな折り、急に扉が開かれる。
「ちょっと待って!」
「ファティ?」
そう、入ってきたのはノウレアにも同行していたファティ通信兵である。何故彼女がここに?理解出来なかった。戸惑う私を他所に話が進んでいく。
「お父さん、お姉ちゃんが目覚めました」
お父さん???
「何があったか聞けたか?」
ソロモン軍務卿が受け答えをしている。ファティが軍務卿の娘!?
「お父様、すみませんでした」
えっ?もう一人部屋に入ってきた。あれ?この方はもしや……ネームド、ギャップ殿では無いだろうか?
しかし、あの最強と言われるギャップ殿が包帯を巻き怪我をしている。
「ちょっとお姉ちゃん?まだ動いてはダメだと言ったのに!」
ギャップ殿はソロモン軍務卿の養子であることは有名な話だ。ファティも娘なら彼女たちは姉妹ということか。だが、ファティは立ったままだが、ギャップ殿は片膝を着き、軍務卿の方へ跪いている。
「ごめん、ファティ」
「カーラよ、何があった?」
「はい…ノード南部で戦闘中、敵指揮官を殺すところでした。急に眼帯をした女兵士が乱入してきて、ソイツに…やられました………」
「ッ!?」
「なっ?」
私も驚きのあまり固まる。
「……」
軍務卿も険しい顔で黙っている。性格は暴れ馬みたいであるが、規律から逸脱する訳ではない。そもそもギャップ殿が言うことを聞くのはソロモン軍務卿のみだ。
それでもギャップ殿の強さが逸脱しているから、ニコラス大将もベルナール大将も何も言わない。それほどまでに影響力があるのがギャップ殿だ。
「その眼帯の女兵士とは、まさか、眼帯の死神か?」
「背は低く見た目は少女でした」
「特徴は一致する……ほぼ間違いないか」
ベルナール大将の言う通りだ。そんな特徴の兵士はまず居ない。見た目に反し、圧倒的な重圧を感じたあの少女。
「…どう、やられた?詳しく話せ」
ソロモン軍務卿の言葉には若干の怒気を感じた。
「敵とは少し距離がありましたが、窓を開けても、見透かされたように躱され、接近されました。そのまま近接戦闘になりましたが、か…敵わず…最後には【ジュラ】を奪われました。別の敵を上空に転移させその隙に逃げて来ました」
「………」
ソロモン軍務卿はより一層険しい顔をしている。もはや、睨んでいるかのような視線だ。
「お父さん、お姉ちゃんの強さは知ってるでしょ!?」
「…………………まぁな」
間はあったが、ソロモン軍務卿とてそれは理解しているはず。ファティは軍務卿への恐れなどないかのように、そこに突っ込んでいく。
「隻眼の死神はルンドバード軍で1番強いお姉ちゃんが遅れをとるほどの相手ってことだよ!!ライトニングも死神にやられた、それだけ警戒しなきゃいけない相手みたいなの!」
ファティがはっきり告げる。正直、ルンドバード軍最強格のギャップ殿でもやられる相手など、もう二度と出会いたくはない。
「はぁ、厄介な奴が出てきたものだ。……カーラ」
「はっ!」
「勝てるか?」
「必ずや……」
「次はないぞ?」
「はっ!!」
ギャップ殿はさらに深々と頭をさげていた。
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