プロローグ
よろしくお願いします。
「ふぁっはっはっは!!大勝利〜!!
ふぅ〜、ようやくラスト1時間だぁ。
こっちもラストと1本飲んで気合いをいれまーす」
プシュっ
ゴクッゴクッ
新しく開けたエナジードリンクを半分くらい飲む。
「くぅー、効くねー!」
流石は日本では発売されていない、多量のカフェインを含むエナジードリンクだ。
俺は大ヒットFPSゲーム〖Hero of War 虹色の戦争〗のゲーム配信を行っている。
当時どことも分からないゲーム会社から発売されたHoWと略され呼ばれるこのゲームは、その凄まじいまでのリアリティなギミックで大ヒットした。
FPSとは自身の目線のような視点で手などしか視界がない、より没入感が高いゲームである。
なかでもこのHoWは木やドラム缶、建物などのフィールドギミックが、銃に打たれたり、爆発だったりの位置で毎回破損の仕方が違うのだ。
フィールド上には壊れない物はない。
銃撃の位置で木を狙った方向に倒すことだって可能だ。
この現実的な仕様のおかげで様々な戦術が生まれる。ゲームモードも豊富だ。フィールド上に降り立ち、残り1人まで戦うバトルロイヤル。
最大10対10でのチームマッチでキル数を競ったり、護衛しながら目的地へ車両を進めたりと多岐に渡る。
これさえあれば他のFPSはいらないまで言われるゲームだ。
当然各配信者はこのゲームをプレイする。中でも俺は自分で言うのもなんだが、視聴者は多い方だ。
動画投稿を始めてまだ半年だが、俺たちのチーム『月光』が2週間前の世界大会2連覇のおかげで登録者が一気に増え続けている。
この急激な増え方は海外勢のおかげだろう。
先日ついに300万人を越えたため、こうして記念配信として「24時間耐久!いったい俺は何勝できるか!?」という動画を撮っている。
「切れかけの集中力を総動員していきますね。さぁ!マッチ検索ぅ…やっべ、今クラっときた」
目頭を手で抑える。
コメントで心配の声が流れる。ゲーム画面がメインだが、ワイプで俺の顔は見えているからみんなも見えていたんだろう。
「おぉ、びっくりしたぁ
大丈夫、大丈夫!もう少しだから頑張りますよ!」
流石に限界が近いかな。追加でエナジードリンクを少し飲む。
ゲーム画面は既にマッチがスタートする寸前だった。
マウスとキーボードに手を掛けて、走り出す……
ところでまた意識がふわっと飛びそうになり顔をキーボードに打ち付ける。
「うっ」
目が重すぎてやばい…
配信中なのに…俺は寝落ちかよ。
そこまで考えて耐えきれず意識を手放した。
Hero of War 虹色の戦争
2050年、日本の無名ゲームメーカーから発売されたFPSゲーム。
早い話が、某コールオブ〇ューティーや〇ーぺックス、レインボーシックス〇ージ、オー〇ーウォッチにある様な様々なゲームルールが1本でできるゲームを想像して欲しい。操作はコントローラーかキーボードマウスで行う。
フィールド場にあるガラス、車や柱、建物自体に至るまで、着弾地点や距離などの影響で破損の仕方が変わるほど、リアルな描写を可能としたシステムが導入されている。これによって、銃弾や爆発物による影響が極限までリアルにフィールドに反映されることが特徴。
これによってやれることが多く、戦術が多種多様生まれ、世界的大ヒットとなった。