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9/29

9話 手紙

誤字脱字報告ありがとうございます

久しぶりに貴樹と長く話した。

こんなに長く話したのはいついらいか。

中学の頃でもこんなに話してなかった。

中学は私が貴樹の事を煩わしく思い始めた時期だ。

幼稚園の頃に貴樹を好きになりその気持ちは貴樹と共に歩んだ小学生時代を経て徐々に薄らいでいった。

別に貴樹が嫌いになったのではない。

飽きたのだ。

どんなに面白い番組も

どんなに美味しいスィーツも

流行りのコーデも

いつか飽きがくる。


加えていうなら貴樹は私にお熱過ぎた。

よくあるでしょ?

がっつかれたらこっちが冷めてしまう事が。

幼稚園の頃に感じた貴樹への思いはそんな感じで大人に近づくにつれ薄れていったけどいまは幼稚園のころ以上に貴樹のことが好きだ。

たしかに貴樹がいうように依存してるのもあると思うよ…。

でも私にとってこんなにも心休まる存在は貴樹を置いて他にない、ほかの誰かといるときは常にその誰かを気にして生きてきた。

気を使って怒らせないようにしてた。

もし怒らせたならその相手との縁を切って次にって事を私は繰り返して生きてきた。

私は幼稚園の頃から根本的に何も変わってなんかいない。

怖がりのまま…貴樹に近くにいてもらわないとどうしょうもなく不安になるんだ。



夢の中で私は男遊びに酔いしれてた。

怖い物を克服出来た喜び、精への快感、誰かと体を重ね合い求め合う安心感。

それに私は酔いしれていた。

あの頃はそれが全てだった。

今は吐き気がするほど気持ち悪い。おぞましい。

目の前が見えてなかったんだ。

本当に馬鹿だった。


貴樹が部屋に来たのは本当に久しぶり。

あの夢にはある意味感謝している。

あの夢がなければ私は夢に見た未来と同じ結末を迎えていたと思う。

夢は所詮夢、幻とか幻想とかそんな物に過ぎない。

夢の通りに世界が動くわけじゃない。

でも根拠がなくても私は多分ああなってたと思う。

夢に見た最低最悪の未来。

あれが現実になるなんて絶対に嫌だ。

でもあの夢のおかげで私は貴樹の尊さに気づく事が出来たのだから感謝しないといけない。

昨日貴樹が部屋に来たけど惜しい事をしたかもしれない。

貴樹が私の部屋に自主的にくるなんてこの先何回あるか…

もしかしたら無いかもしれない。

押し倒しておけばよかったと後悔すらしてる。

私には男を喜ばせる性知識が豊富にある。

40年間分の知識に今の私にはこの若さがある。

確かに今の私は処女だ。

この体に性体験はない。

でもこの体に40年分の知識を加えたら…

初物の初々しい女子高生の体。


きっとどんな男でも骨抜きに出来る自信がある。

貴樹だって……。


そう思う反面やらなくて良かったとも強く思う。

それは私自身で貴樹を汚す行いだ。

籠絡はできると思うし自信もある。

しかしそれをやれば貴樹は他の男共と同じ猿になりはてるかもしれない。

自分で自分の寄る辺を壊す事にもなりかねない。

ただでさえ今の貴樹がああなったのは私のせいなのにこれ以上貴樹を壊して良い訳がない。

なにより貴樹に軽蔑されたくない。


それにこんな事を考えてしまうのは私自身が貴樹を求めてるからなんだと思う。

欲求不満なんだと思う。


貴樹に求められたい。

貴樹に押し倒されたいと思う自分の欲なんだ。

だから私はたまに貴樹を挑発したり誘惑みたいな事を言う。

そうやって私は自身の飢えを誤魔化しているんだ。




学校にはこれまで通り貴樹と一緒にいく。

時間をずらして先に行かれたら困るからおばさん、貴樹のママを味方に付けて先に行かないように説得しておく。

私は貴樹の幼馴染み。

こういう事が出来るのも幼馴染みの強みだしおばさんも私と貴樹の仲を取り持つのは満更でもないみたいだ。

こうして私は今日も貴樹と一緒に学校に登校する時間を得たのだ。



「女は得だよな」


「え?何がよ?」


「相手の親を説得して待ってた事だよ。俺が同じ事をしたらそのまま警察に連行されそうだ」


「流石にそこまでしないよ」


「学校に俺の武勇伝として語り継がれて末代まで残る黒歴史になりそうだ。」


「黒歴史?」


「瑞穂に無意味な告白繰り返してた事とかだよ」


「今は私の彼氏なんだし黒歴史撤回だね」


「重いな〜」



まだ貴樹は私と恋人関係になった事を割り切れてはいないみたいだ。

昨日聞いた話だと嫉妬した男子に嫌味を言われたらしいし、それが原因で私と付き合う事に消極的で嫌々なのが見て取れる。

その男子達は本当に余計な事をしてくれた。

そのせいで貴樹から学校では距離を開けて欲しいなんて言われたら困るのは私だ。

なんとかしないと…





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





今日も今日とて瑞穂のヤツと登校だ。

ご丁寧に母親にまで根回ししていて逃げられない。

半年前の自分に言ったら間違いなく自慢になる内容に我ながら贅沢な悩みだと辟易する。

瑞穂は美少女だし男にモテる。

そんな子が好きだと言ってくれてるのだしその好意にあやかれたなら楽になれるのかも知れない

しかし今のまま惰性で瑞穂と付き合い続けるのはどうなのだろうか……。

結局のところ瑞穂が俺に執着してるのは昨日聞いたわけの分からない予知夢(推定)による不安からの依存だと俺は結論づけた。

瑞穂は俺を好きというがどう見ても依存にしか見えないのだから始末におえない。

俺の中の二人の自分が囁いている。

彼女の事を昔好きだった部分の俺が彼女を助けてやれと囁く傍らで彼女にコケにされ適当にあしらわれ続けて拗らせた部分の俺が彼女を見限れと悪辣に言う。


心の中の2つの自分なんて陳腐でよく聞く表現なんて使いたくないがそれ以上にわかりやすい表現は思いつかなった。

実際に側にいてやりたいと思うのも本心だし、こんなヤツほっときたいと思うのも紛れもなく本心なんだ。




学校に行くのは正直気が重い。

瑞穂は俺と一緒に学校に行くのをやめてくれないから周囲の男子は嫉妬心ばかりをつのらせていく。

まさにドミノ倒しの如く連鎖的に嫉妬心に駆られた男子が量産されていく。

結果的に俺は1人になる事が怖くなりトイレに行く事すらままならない。

もよおした時が運の尽きだ。



「苦労しますなぁ〜旦那」


「誰が旦那だ」


「将来は瑞穂ちゃんと結婚して大黒柱の旦那様になるんだろ?」


「はぁ?お前頭大丈夫か?」


「わぁお!辛辣ぅ〜」



コイツは俺の数少ない友人の誠吾という男子だ。

彼女持ちなので瑞穂には全く興味がない奇跡の権化みたいなヤツだ。

キモいくらい自分の彼女を溺愛してるし彼女の方もコイツにぞっこんでみてて胸焼けがしてくるレベルだ。



「しかしお前相変わらず拗らせてるな、素直に瑞穂ちゃんの気持ちを受け止めてやればいいじゃん」


「簡単に言うな!お前だってしってるだろ?」


「まぁな…実際のところ何故瑞穂ちゃんあんなお前にラブラブオーラ急に出し始めたわけ?」


「あぁ…悪い一応秘密で」


「へぇ…一応知ってはいるんだな理由」


「まぁな…つっても意味わからんのは変わらないんだけどさ…」


「しかしなぁ…色々歪だけど青春してますなー」


「こんな形で青春したく無かったかな」


「いいじゃん、前のお前を知る身としては友人の努力が認められたみたいで俺は嬉しいぜ?」


「複雑ぅ〜…まぁそれはそれとして……なぁトイレいかね?」


「またかよ…しゃーねーな」


「助かる」



トイレにソロで行くとほぼ高確率で陽キャの奇襲にあうのでその対策として誠吾に毎回ご足労願っている。

勿論悪いと思う気持ちはこちらにもあるのでときおり缶ジュースなどを奢って借りを返したりしている。

こちらとしてもトイレ行くだけで大袈裟とは思うけどいつ難癖をつけられるかわからないしなるべく1人でいる所を見られたくない。

つくづく誠吾がいて良かった。

陰キャオタクではあるものの多少の交友関係はある。

ボッチでいても何も良いことはないのだ。

まぁトイレくらいは1人で行きたいのが本音だが。



「しかしお前も大変だよな〜」


「リア充には俺の気持ちはわからないさ」


「いやいやお前もリア充だろ?」


「彼女がいればリア充なのか小一時間問いただしたいね」


「お前が先にいったんだろw」



二人でトイレの帰りに馬鹿な話をするのはいつもの流れだ。

やはり女なんかより男友達と馬鹿な話をしてる時が一番落ち着く。

ビバ友情!



トイレを済ませ馬鹿話を終えて自身の席につく。

何となく机の中をまさぐると見慣れない物が入っていた。

別にずぶ濡れの雑巾とか画鋲とかが入っていたわけじゃない。

手紙だった。

白い封筒にはシールで封がしてある。



「どしたー?」


「え?いや、なんでも?次の授業に使う教科書の整理だよ」


「真面目ね~」


「はは、」



はは…ほんとになんだこれ…

手紙が封入されてるだろう封筒を封するシールは桃色

そしてハート型をしていた。


これはいわゆるラブレターというヤツです……か…?

気付けば日間ランキングベスト5位以内に入ってました。

これも皆様のおかげです。

初めての事なので最初似たタイトルの別作品かと疑ってしまいました。

本当にありがとうございます。

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