8話 真相
瑞穂に深く追求したところなんとも荒唐無稽で非常識、非現実的な話が飛び出してきた。
コイツいわく自分が40歳以上のおばさんになった夢を見たらしくその夢の中の自分は極めて悲惨な日常を送っていたのだとか。
そんな中で20年以上ぶりに大人になった俺を見かけたらしい。
なんとコイツの夢の中の俺は妻子持ちでイケメンだったらしい。
にわかには信じられない。
俺に声をかけることも出来ずいても経ってもいられなくなったコイツはそのまま感情の赴くまま走り去ったらしいが周囲に意識がいってなかったらしくトラックのような物にひかれ気がついたら夢から目覚めていたらしい。
夢の中で自分が40歳のおばさんになり人生が詰んでる状態を疑似体験ししかも学生時代に見下してた幼馴染みが成功?してる姿を見て動揺を隠せないでいるようなのだ。
たかだか夢でここまで追い詰められるものなのかとも思うが実際コイツの真に迫る追い込まれっぷりを見てると冗談や嘘の類では無いのかなと思ってしまう。
ただ眉唾なのが俺がイケメンになって妻子持ちになってるとか違和感凄いな…
その相手はどんな人なんだろうか…
まぁコイツの夢の中の存在だし架空の存在に思いを馳せても仕方ないか…
ただ1つハッキリしたことがある。
「だから…私には貴樹が必要なの…貴樹が側にいてくれないと駄目なの…!」
「なぁ瑞穂…」
「な…なに?貴樹?」
「お前さ、別に俺が好きとかじゃないだろ?」
「は?」
「なに?」
「貴樹私の話ちゃんと聞いてた?信じられないのはわかるよ?でも本当なの!私あんな思いしたくない!ねぇ貴樹好きなの!だから私の側にいてよ!」
「お前は俺にただ依存したいだけだ、俺を恋愛の対象に見てなんかいない。安心したいから俺にすり寄ってるだけだ」
「それの…!それの何が悪いのよ!私には貴樹が必要なの!何だってするよ?貴樹の言う事何でも聞くよ?だから私の側にいてよ!ねぇ!貴樹!!」
「ふざけんなよ!俺はお前の道具じゃない!人のこと何処までコケにすれば気が済むんだこのクソ女!」
「何よ何よ!あれだけ私に執着しといて私が必要なときには私の事はいらないっていうの!?貴樹の自己中!勝手過ぎ!」
「はぁ!?自己中はお前だろ!?訳わからん夢なんかで手のひら返しすぎだろこの自己中クソ女!」
「貴樹はそんな事言わない!貴樹はいつも私に優しいの!私に暖かいひだまりみたいな笑顔を見せてくれるの!」
「それはお前の事が好きだったから優しくしてただけだ!下心でしてたんだよ!お前が言う他のクソ男どもと俺も何も変わらないんだよ!」
「そんな事無い!!貴樹は私に真面目に向き合ってくれてた!私に好きって気持ちを真正面から向けてくれてた!貴樹は他の奴等と違う!!違うの!!」
「お…っおま…え……。」
何故そこまでわかっててくれてるのにあの時はあんなに塩対応だったんだよ……。
どうしてその言葉をあの時にかけてくれなかったんだよ…
どうして諦めた今になってそんな態度なんだよ…
どうして今になってそんな事をいうんだよ……
俺はどうしたらいいんだ…。
「少し考えさせてくれ…いろいろ整理しないと俺も訳わからん…。」
「整理って何よ…別に何も難しい事いってないじゃん」
「未来の夢とかいきなり言われても訳わからんだろ」
「私が嘘ついてるって思ってるの!?」
「そんな事いってないだろ!」
「うぅ…ご…ごめん。」
「………、兎に角お前がその夢を重くとらえてる事はわかった…今は一緒にいるからあんまり気にするな」
「ホント?ホントにホント?」
「え…あ…ああ。」
「貴樹…」
ホントに別人みたいだ。
こんな犬みたいに従順になられると意地をはってるのが馬鹿みたいになってくる。
それに今のコイツは昔の…
あの頃のアイツを彷彿とさせる…
何故かほっとけない
そんな気分にさせられる。
「じゃ俺帰るから…」
「えもう帰るの?」
「別に今日は話を聞きに来ただけだし」
「別にもっとゆっくりしててもいいんだよ?」
「ていっても…な…」
「え…そ…そうだ…何か話そうよ…え〜と…」
「俺と瑞穂とじゃ話の話題がないじゃん、共通の話題がさ…」
「昔の貴樹は私が興味あろうとなかろうと関係無しに話しかけて来てたじゃん、私は気にしないよ…」
「お前に氷点下の目で睨まれてもう辞めとこうって思うようになったんだよ」
「もうそんな事しないから…お願いだよ……」
「はぁ…俺からは別に話したいこととかないし話したいならお前が勝手に話せよ、聞いてやるから…」
「う…うん!えーとね、」
その後久しぶりに瑞穂と長くどーでもいい話をした。
何処の飲食店が美味しいだとか内装がオシャレだとかセンスがいいとかどーとか、ファッションの話とか最近の流行りとか…オタク趣味の俺には全くピンと来ないが最近の女子高生のトレンドに詳しくなれたという特典が得られただけまだ良かったかもしれない。
それにとびきりの笑顔で話をするコイツは悔しいがやはり可愛いかった。
腹立たしいことに可愛いかったのだ。
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