7話 瑞穂は〇〇〇じゃない
「私の彼氏になれば立場がアンタを守ってくれるわ」
あの女は以前そんな事を口走っていたっけかな。
全然守られてないんだが?
と、そんな事を先程瑞穂に気がある男子生徒達数人にトイレで囲まれ威嚇されるという体験をした俺はボヤかずにはいられなかった。
さわれるのかどうかもハッキリしないオッパイだのお尻に目がくらんでとんでもない安請け合いをしてしまった気がしないでもない。
中学の頃なら瑞穂と付き合えるというだけでどんな苦難も乗り越えられそうな気になれたモノだが今はこんな面倒な事に時間や体力を使うのが面倒くさくてならない。
確かに瑞穂は美人だ。
スタイルも同年代と比べて抜きん出ている。
全体的に大人びて見えるだけの美貌をもった美少女だ。
しかしそれも俺にとってはなんのプラスにもならない。
むしろ逆効果た。
過去にこっぴどくフラレて塩対応であしらわれ続けたトラウマがあればこちらとしてはもう関わりたくないと思うのが普通だ。
誰だって嫌な思いはしたくないから…。
なまじ見た目が整ってるからいらぬ反感や嫉妬をかう。
何故今更俺に付きまとうか知らんが勘弁願いたい。
いや、知らんがで済ませていい話じゃないのだ。
いい加減知る権利がある。
こちとら当事者なんだ、向こうが突っぱねても断固とした意志を持って追求しなければならない。
何故瑞穂が俺に執着するのかを。
以前なら瑞穂を捕まえるのは至難のソレだった。
安易に声をかければ
「何アンタまだ私のストーカー続けてるの?いい加減にしてもらえる?彼氏にチクるよ?」
だとか言われ実際その時の彼氏に威嚇される羽目にあうのだ。
まぁ野上君だけどな。
だが今は違う。
何故かね……今の彼氏彼女は俺なんだ…。
わぁお!驚き!
「帰るよ貴樹…。」
何故かコイツから声をかけて来るのだからもうコチラから声をかけずとも向こうから接触してくれるのだ。
それが良いか悪いかは別として…。
「なぁ…今日瑞穂の家とか行っていい?」
昔の俺なら絶対に口にしていいセリフじゃないよこんなの。
なら今の俺なら良いのかと問われれば勿論そんな事は無いというのが俺の思いだ。
今も何言われるか分からないのだから緊張で手汗が凄い事になってる。
こんな時に手を握られたりしたらこっちが緊張してるのがアイツにバレるし手汗気持ち悪いとか思われたらきずつくので絶対に握られたくない。
それに俺にはアイツは絶対に断らないという確信があった。
根拠は全くないけどな。
「貴樹が私の家に…?」
「あっ…ごめん駄目だよな、すまん調子にのって…」
「違う!…そうじゃなくて…いい…いいよ!」
「良いのか?」
「うん…いいよ…。」
何故か頬を赤らめる瑞穂。
自分の指を絡めあって腰をくねくねさせて恥じらっている。
お前そんなキャラじゃねーだろ。
何を考えているんだコイツは…
俺が手を出すとでも思ってるのか?
そんな度胸も勇気もねーよ。
つーか本当に何なんだコイツ。
最近のキャラブレは解釈不一致とかのレベルでは片付けられないぞ。
もはや別人レベルだ。
全部まとめて今の現状を半年前の自分に言っても絶対に信じてもらえないだろーなってくらいには現実感が無かった。
その数分後の事。
「久しぶりだね…貴樹が私の部屋にくるの…」
「そ…そうだな…」
in瑞穂の部屋NOW。
どうでもいいけど瑞穂の母親に久しぶりにあったらなんかすげー意外な物を見たみたいな顔をされた。
俺は天然記念物とかじゃないよ?
久しぶりの瑞穂の部屋はなんかどくとくの匂いがする。
なんか女の子って感じの匂いだ。
陰キャオタク男子にはわからないがなんか香水とかかな?
つーかだからなんでそんな恥じらうオトメみたいな顔してるんだ…コイツは。
こーいう時難聴系主人公みたいな天性の鈍さが俺にあればコイツの表情にも気づかないで良かったのにとつくづく思うのが俺はそこまで相手の顔色を見れない訳じゃない。
そもそもにおいて陰キャとは相手の顔色を見てないとやっていけない人種だ。
相手の顔色を見てご機嫌を伺いのらりくらりやって行くのが陰キャにとって正しい平凡な日常の過ごし方だ。
(あくまで貴樹の主観です。)
正直難聴系主人公なんてやってられる程の余裕は陰キャにはない。
恋愛モノによく陰キャで難聴系の主人公キャラが出てくるがフィクションを強く感じて俺は余り好きじゃない。
なぜなら都合よく耳が悪くなり過ぎだからだ。
私あんたの事すき…
え?何だって?聞こえない…
こんなやり取りで尺を使われ何話も引き伸ばされたら見る側はダレるのだ!
ハーレム系だとコレを複数ヒロインに同時多発的に実行する描写がある。
もう見てられないのだ…くどくて。
何回同じ事くりかえすんだ!
的な?
まぁ…そんな事はどうでも良くて…
つまるところ何が言いたいかというと難聴系主人公みたいな難聴スキルのない普通の人間であるところの俺は瑞穂が何を企んでるかは分からないなりにこの態度からこっちにたいして何かしらの期待をしている事くらいは読み取れるのだ。
読み取れてしまえるのだ。
「それでどうする…?えっと…まず飲み物そう…だ!飲み物取ってくるね!」
そう言って瑞穂は一階に走って降りていった。
瑞穂の部屋は2階にある。
これは小学校のころから変わって無かったみたいだ。
瑞穂の部屋に入ったのもそんな小学校以来だから何年ぶりか…、
正しく思い出せないが随分と久しぶりだ。
昔に比べて色々様変わりしている。
まず物が増えた…凄い増えてる。
化粧道具っぽいのからなにかの雑誌…芸能関係とか洋服系の物か?良くわからないがそういうのが積まれてる。
その他にもThe今どきのギャルって感じの物がビッシリと置かれている。
昔の瑞穂には趣味とかなくてなんでも俺の好きな物を真似ていたのだが今は黒髪清楚系ギャルとしての個を確立しているんだなと何故か改めてそう思わされた。
「別にアンタが見て楽しい物とか無いでしょ」
瑞穂が部屋に戻ってきた。
手にはお盆にのったケーキとコーヒーがある。
「いや…まぁそうだな。」
「アンタは相変わらず漫画とかアニメとか見てるんでしょ?」
「別にお前には関係ないだろ?」
「別に否定してるわけじゃないでしょ?別に良いじゃない…アンタが楽しければ…」
「……」
「そ……それで…今日は…その…何?」
「お前に改めて聞きたい事があってな、ソレの確認」
「え?私に聞きたい事…?えっと…それは…」
「単刀直入に言う、何故お前は俺にいきなり付きまとうようになった?」
「へ?」
「とぼけんな!」
「付きまとう……?…あぁ…そっか…なんだ……」
「なんだ……ってなんだよ…」
「アンタには関係ない…」
「ぐ……」
何を勘違いしてるんだコイツ
俺が告白でもすると思ってんのか?
2どとするか…
「それで何故お前は俺に執着してんだよ」
「別にそんなのどうでも良いじゃない」
「良くない、こっちはリスク払ってお前の恋人役やってるんだ!知る権利がある。」
「何よ!アンタは私の恋人になれるのよ!念願の私の恋人に!何が不満なのよ!」
「何度も言ってるだろ!俺はもうお前の事なんか好きじゃないんだ!今更無理やり恋人とか言われても迷惑なんだよ!」
「うるさい!アンタは私が好きなの!そうじゃないと駄目なの!」
「好きじゃない!」
「嘘!嘘!嘘嘘そんなのうそ!!アンタは私が好きなの!あれだけ私に執着しといて簡単に好きじゃなくなるなんてありえないもん!アンタは私に未練タラタラなの!アンタはそうじゃないと駄目なの!」
「ぐっ…何なんだよ…お前…」
改めてコイツが俺に執着しているのをまざまざと見せつけられる。
何がコイツをここまで変えてるんだよ…
「好きなの…貴樹は私が好きなの…」
「どうしてなんだよ…どうしてそんなに俺に執着してるんだよ…お前は俺の事が嫌いなんだろ…何故今更そんな執着してるんだよ…」
「嫌い?私が…貴樹を…?」
「そうじゃないのかよ…?」
「嫌い?私が?貴樹を?そんな…そんな…わけない…私は……ブツブツ……ブツブツ……」
瑞穂はブツブツと呪文かあるいわ念仏でも唱えるように聞き取りづらい声で何かを言ってる。
おいおい俺は難聴系主人公じゃないってさっき言ったばかりなんだよ…!
聞き取りやすい声量で話せよ…。
「私は貴樹が嫌い…?そんな事無い…貴樹は好き…。
一緒にいて安心するから好きなの…アンタは唯一私に安らぎをくれるの…だから好き…
他の奴等は私を肉穴としか見てないけど貴樹は“私”を見てくれる…。」
「買いかぶりだ…」
「そんな事無い…私は馬鹿だった…男達はみんな私をブランド品か気持ちのいい穴としか見てないけど貴樹は違う…貴樹は私を見てくれる。」
「気持ちのいい穴ってお前…」
「勘違いしないで!私は処女だよ!まえとは違うの!今の私は処女なの!本当なの!信じて!証拠…証拠あるから!」
そういって瑞穂はスカートの中に手を突っ込んでその中の物をズリ下ろそうとする。
「待て!何してんだお前!」
「信じて今の私は処女なの!前とは違うの!新品なの!綺麗なの!汚れて無いの!貴樹には綺麗な私を見せてあげれるの!」
何言ってるんだこいつ?
前は非処女だったけど今は処女だから大丈夫?
わけわからん。
一度非処女になったらそれはもう非処女だろ…
俺は別にユニコーン(処女を崇拝してる人種の総称)ではないし今更コイツの貞操なんかに興味はない。
「貴樹私ね?今は17歳なの!40歳のババァじゃないの!ピチピチの女子高生なの!だから処女なの!」
「は?」
……は?
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