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6話 執着の理由

 


夢を見るのは浅い眠りの時だと何処かで聞いた事がある。

ネットだったかテレビだったか忘れたけど夢はその人の経験、体験した記憶から構成されてるから私が見た夢みたいに未来を見るなんて事は本来あり得ないんだ。

仮に見てもそれは自身の体験した知識から構成されてるんだから妄想と何も変わらない。

だから真に受ける必要なんてないのは分かってるんだけどそれでも私はあの夢の中に出てきた自分の末路を思い出すと不安で不安で仕方なくなる。


夢なんて見ても基本的にその内容は忘れてしまってるのが普通だと思う。

いい夢でも悪い夢でも朝起きると忘れている。

仮に覚えていたってそれは霞がかっていて明確に思い出すことは出来ない。

覚えているから…、正確に夢の内容を覚えているからこそ異質さが際立つ。



あの夢の後私は貴樹に頻繁に会うようにした。

貴樹が嫌がっているのがわかっていてもそれを辞めようとは思わなかった。

貴樹は元々私に対して強い恋愛感情をずっとぶつけ続けて来ていた。

これまで会った男達の中であれ程私に固執した男は今までもそして夢の中で見たこの先の未来でも会う事は無かった。

皆私の見た目に惹かれて寄って来るだけの存在だ。

いうなら街灯によってくる羽虫のような?

貴樹だけが私に執着してくれた。

貴樹だけが本当に私を好きになってくれた。

子供の頃から変わらないあの暖かい笑顔を私に見せてくれていた。

しかしそんな暖かい太陽みたいな笑顔を見せてくれていた貴樹はどこにもいなくなっていた。

今の貴樹は抜け殻だ。

暖かいモノが抜け落ちた抜け殻。

その抜け落ちたモノを捨てさせたのは他でもないこの私だ。

流石に自覚はある。

貴樹は私に適当に扱われ続けた事で自信を喪失している、私に拒絶される事を恐れて私から逃げている。


なら私に出来る事は貴樹との溝を埋めまたあの頃のように貴樹と一緒にいられる時間を作るだけだ。


そのためにはなりふりなんて構っていられない。

もう私には貴樹しかいない。

あの優しい笑顔を見てないと私は不安になる。

安心できないんだ。





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





あれから何日かの日数が過ぎた。

野上君は潔く瑞穂を諦め別の女子と楽しくやっているようだ。

あれだけ騒いでいたのに諦めるのが異様に早い所を見るに瑞穂の言っていた通り瑞穂という人間のブランド力にしか興味がなかったようだ。

ある意味では彼の切り返しの速さは見習うべきところなのかもしれない。

まぁそんな事よりも教室内では俺と瑞穂が付き合っているという噂がもう確定ってレベルで浸透してきている。

それもその筈で瑞穂自身が誰かに俺と付き合ってるのかと問われた場合に躊躇なくうんそうだよと返答している

のだから浸透もするだろうさ。


全くワケが分からない。

あれ程拒絶していたくせに今更どういう心変わりなんだ、本気にしてしまいそうになる。

しかし本気にしてはいけないだろう。

真に受けるワケにはいかない。

また更に心変わりしてやっぱりアンタが彼氏とかないわ!とか言い出しかねない。

だからこの恋人ごっこにアイツが飽きるまで付き合って行くのが無難なんだろうな。


ただ問題なのは瑞穂に惹かれていた連中のやっかみだ。

嫉妬とは面倒なモノで瑞穂を俺に取られたと告白もしてない奴等から恨みをかってしまっている現状だ。

俺としては穏便に済ませたいがそれは俺の都合でどうにかなる問題ではない。

向こうはそんなの知ったこっちゃないと言わんばかりの勢いで俺へのヘイトを溜め込んでいる。

マジでままならない。



「お前のせいで俺等瑞穂ちゃんに告る事もできねえじゃん、なんなのお前」


「いきなりしゃしゃり出てきてふざけんなよ」



眼の前の男子数名が俺を取り囲んで尋問みたいな事をしてくる。

トイレに行ったのが運の尽きで取り囲れて身動とれずにいる、陽キャは時に陰湿な事をしてくる生き物だ。

ここなら瑞穂に見られる心配もないからな。



「つーかさ、お前前に瑞穂ちゃんに付きまとってた陰キャじゃん、野上にフラレて傷ついてる彼女にすり寄るとかいい性格してるよな?お前?」


「瑞穂ちゃんもお前みたいなのに付きまとわれて迷惑してんだよ〜理解できる〜?」



俺は何も言い返せず黙って下を向いて貝のように口を閉ざすことに専念する。

言いたい事は勿論沢山ある。

昔は兎も角今俺からアイツにアクションを起こした事なんてないがそんな事をコイツ等に言ったって仕方ない。

事実を捻じ曲げてコチラを糾弾する事でウサを晴らしたいコイツ等にこっちの言葉なんて聞こえないだろうからだんまりを決め込むのが一番得策なのだ。


怖いワケじゃないぞ?



「ちっ…つまんね、もうよくね?」


「はぁー?まぁいいか…おいいいか?ちゃんと瑞穂ちゃんと適切な距離感を心がけろよ!」


「わかったな?」


「わっ…わかったよ…」


「んじゃいくか?」


「おう」


「たるいわ〜」



男子トイレからゾロゾロとでていく陽キャ集団。

中々に陰湿な行動に出る。

こんなのが毎日続く…あるいはエスカレートしていくのならやはり無理して瑞穂と付き合っていくのは俺にとってマイナスなのでは? 

本当にプラスなんだろうか…?

そもそも未だにハッキリしてない事をハッキリさせる必要があるのかもしれない。

アイツが何故俺にいまさら執着してるのか。


なあなあにしていたその理由を俺はあらためて知りたいとそう思ったのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] こうなるから、何を今更、という感があるのよな。 (続きがあるので今話段階だが)瑞穂は自分の都合オンリーで振って、付き合って、なんのフォローもしない。 野上に対する扱いと本質的には変わらんよ。…
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