番外編 7話
「その彼女の名前…絶対に瑞穂には言うなよ…」
「は?なんでさ?」
自分と年上彼女との惚気話をしていたはずがいきなり相手から別の女の名前を出されてソイツには彼女の名前を出すなと言う。
誠吾には友人である貴樹の考えがまるで理解出来ないでいた。
「え~と、兎に角瑞穂の前では早苗って名前は口にしないほうが良いと思うんだよ」
「だから何でだよ?」
「あーと…話すと長いんだよなぁ…」
「俺には理由聞く義務があると思うけど?」
「……それもそう…だなぁ…。」
貴樹も誠吾も特定の部活には処族していない。
所謂帰宅部だ。
そんな二人は学校が終わった後男二人でファミレスへと来ていた。
瑞穂は貴樹と一緒に帰る気でいたがたまには男友達と帰りたいと言うと
「へぇ~、私より男友達を取るのね?まぁ彼女でもない女に貴樹を独占する権利なんてないものね?いいわよ?男友達を優先しても?ふふふ…」
と何かを多量に含んだ笑顔で了承してくれた。
誠吾は
「俺……最近片桐さんの素をみる機会増えて来たけどなんか普通に怖いよな…」
「まだ裏の顔は出し切ってないよ…後変身を2回残はしてる。」
「宇宙の帝王レベルかよ…おっかねぇ」
等とくだらない話の末目的地のファミレスはとやって来た。
高校生の小遣いで気軽に来れる飲食店は大体がファミレスかフード店に絞られるが貴樹がファミレスを選んだのは個人的に落ち着いて話が出来るからだ。
「で?わざわざこんな所まで来て俺になんの話があるわけ?学校じゃ駄目だったのか?」
「学校だと早苗さんの名前がいつ瑞穂の耳に入るか解らないからな…」
「片桐さんの中で早苗さんの名前はどんな凄い意味があるんだよ…」
「お前の思ってる10倍はデカイ」
「えぇ…」
それから俺は誠吾に夢の内容を掻い摘んで話した。
勿論俺と瑞穂の生々しいやり取りがあった所は大体的にカットしてだが。
あんな話を誰かにしたくないってのが本音だ。
「信じられないと思うけど瑞穂はここ最近予知夢みたいなのを見ることがあるんだよ」
「はあ?予知夢」
「ああ」
「何それ?片桐さん占い師にでもなるのか?」
「それはそれでいやかも…じゃなくてだな、その予知夢の中に早苗って人物が出てきたんだよ」
「まじか」
「でその早苗さんと俺が将来的に結婚して子供をさずかるんだとさ」
「はぁ?」
「瑞穂は自分の見た夢をある程度信じててな、俺と早苗って人が運命的な絆で結ばれてるって認識なんだよ」
「何それ?いや…意味わかんね〜んだけど…」
「俺だってわかんねーよ、会った事もない人と運命の人だから付き合えなんて言われても正直困る」
誠吾は貴樹の話の内容を頭では理解出来ても意味として理解…いや、噛み砕けないでいた。
それはそうだ。
夢なんて良くわからない物で彼女が取られかねないなんて冗談にもなっていない。
「いや、ワケわからね〜よ、たかだか夢だろ?真に受けすぎだろ?」
「いっただろ?瑞穂は自分の夢を基本的に信じてる、それに瑞穂はこうと決めたら絶対に曲げない謎の行動力がある、瑞穂に早苗さんの名前が知られなければ問題ないんだよ」
「てか、早苗なんて名前ありふれてるだろ?俺の彼女だって証拠もないしさ?」
「言いたい事はわかるけど夢で見た早苗さんが実在したってアイツの妄想にバフがかかって謎の行動力を発揮されても俺は困るんだよ」
「まぁ…片桐さんはなんか謎の迫力があるからなぁ…つーか、お前等マジで付き合ってなかったんだな…」
「だから何度も言ってるだろ…俺とアイツはそんなんじゃない…」
貴樹は誠吾と早苗さんの仲を壊したい訳じゃない。
瑞穂の夢を信じない訳では無いがそんな不確かなモノの為に友達の恋愛をぶち壊そう等と思っている訳ではない。
瑞穂にとって彼女の見た夢が大きな意味を持つ事は理解している。
あれ程捻れ曲がっていた彼女が夢の中で邂逅した某早苗さんとの出会いであそこまで丸くなったのだ。
あの夢には何かしらの意味があるのだろう。
しかしそれが友達の恋愛を壊す理由になぞなり得ない。
夢が未来の姿だとしてもそれをなぞる必要はないのだ。
貴樹はこの話を極秘裏に誠吾の耳にいれたかった。
理由は至極単純だ。
瑞穂の行動力が洒落にならないほど高い事を知っているから。
複数の学生を停学や退学に追い込んだのだ。
そんな事…普通は出来ない。
貴樹は瑞穂の事をわかってる様で理解しきっていなかった。
ここまで理解しているならファミレス等の公共の馬で早苗さんの話などするべきでは無いと。
誠吾の部屋など彼女が介入出来無い場所でするべきだったのだ。
彼女が尾行程度軽くこなせる行動力を持ってると理解していながら理解していなかった。
ファミレスから出てきた二人はじゃあな、おう!と言って互いに帰路につく。
誠吾はかえってから早苗の家に向かうつもりでいたしその事を貴樹ともファミレスのなかで【話していた】
早苗は大学生なのでレポートやら単位やらで家にいない事が多い。
早苗は普段大学近所の寮で暮らしているが大学は早苗の実家からほど近い距離にあり頻繁に帰ってきている。
そして今日誠吾と会う約束もしていた。
そのため少し早めにファミレスでの会議を終了させ家に帰宅する事とした。
誠吾ににとっても早苗にとっても互いに好きあってる者達が
団欒を過ごすのは何より代えがたい時間だ。
誠吾はかってしったる早苗の家に向かいインターホンを押す。
「はい、珠寺ですが」
「あ!誠吾です!」
「ああ、誠吾君か、少し待っててくださいね」
「はい…」
しばらくすると珠寺家の鍵がカチッと開き中から早苗が出てくる。
楽しそうにニコニコと微笑んでいるその表情からは誠吾同様に彼が来るのを待っていた事を伺わせる。
こんな可憐な女性が男と喧嘩して勝ててしまう腕っぷしの持ち主など知っていても驚きを隠しきれない。
「どうしたんですか?予定より少し早いじゃないですか?よかったのですか?お友達と急な用があるっていってましたよね?」
「それはもう終わったんだよ、だから急いで来たんだよ」
「あらあら私に会いに急いで来たのですね?いや〜愛されてますね〜わたしは〜。」
「なんかその反応むかつくわぁ〜」
「ふふふ、むくれないの!ちょうどお菓子を焼いていたんです、食べていくでしょ?」
「え?マジで?やりぃ!」
仲睦まじい男女のやり取り。
見てる側は胸焼け必死の光景だ。
そして二人が家の中に入ろうとしたその時ソレはやって来た。
「申し訳ありません、ここに早苗という方はおられますか?」
「え?」「はっ?」
珠寺家の敷地に足を向けていた二人はそこで思わぬ闖入者の登場に間の抜けた声を出す。
「突然申し訳ありません…私…片桐瑞穂といいます、お時間よろしいですか?」




