番外編 2話
学校に来るのがこれ程不愉快極まりないと感じたのはいついらいだろうか…。
私、塚本恵梨香にとって学校は庭の延長。
つまりテリトリーだったはすだ。
しかし私をみる周囲の視線は変わっていった。
汚い物を見る目、面白そうな物を見る目、何かを期待している視線。あといやらしい視線。
コレが一番嫌だけどソレも仕方ない。
それだけの物が出回ったのだから。
私と私の彼氏……だった筈の人。
雅くん…野上雅之。
彼と肉体関係にあった事を裏付ける動画が拡散された。
そういった動画の存在は萬月の口からある事をほのめかされたから存在はするのだろう。
しかし彼女は動画の拡散はしないといった。
何もあの言葉が100%の善意で発せられた言葉じゃないのは私にも解る。
だからこそ理由がわからなかった。
あの動画は拡散しないからこそ萬月にとって力になる。
私に対してのカウンターになるんだ。
最初はそりゃ萬月を疑った。
でも直ぐに違うなとも思った。
メリットがまるでない。
アイツにそんな事をするメリットも度胸も無いのだから直ぐに違うとわかった…。
もし萬月が犯人なら被害者の家に弱み足り得る動画が拡散された当日に学校休んでまで謝りに来ないだろうしね。
アイツが家に謝罪しに来たのは責任感とか申し訳無さからくるものじゃない、自分は無関係だと、私は関係ないとそうアピールするためだ。
何処までも浅ましくて身勝手な女だ。
それに真犯人の目星は付いてる。
片桐瑞穂。
彼女しかいない。
あの女は私にとって目の上のたんこぶだった。
容姿だって負けてないし胸だって私の方が大きい。
読モもやってて学校ではギャル友のリーダーみたいなポジの私がアイツに負けてるなんてそんな事は絶対に無いハズなんだ。
なのに雅くん…野上は私よりアイツを優先する。
片桐に振られたあとも女々しくあの女に執着してた。
それが不愉快だった。
だからハーレムメンバーやギャル友と結託してちょっといびったりしてたのはまぁ認める。
だけどイジメにカウントされるレベルの事はしてなかったしアイツも何してもケロっとした顔してたから全然応えてないって思ってたんだ。
それがまさかこんな形でやり返されるなんてね。
多分萬月をけしかけたのもあの女の入れ知恵なんだろうな、本当に嫌な女だ。
「はぁ?ふざけんなよ?俺はお前のせいで酷いめにあってるんだ!もう俺の近くに寄ってくんなよ!」
「ちょっと待ってよ!雅くん!私は…」
「聞こえなかったのか!?近づくなってってんだよ!また勘違いされっだろうが!!?このクソ女!」
野上はそういってワタシを突き飛ばして逃げるように走り去っていく。
予想はしていたがそれよりも酷い。
正に取り付く島もないとはこの事だ。
私と一緒にいる所を誰かに見られてこれ以上噂が独り歩きするのが嫌なんだろう。
噂でもなんでもない真実なんだけどね。
結局アイツは私の事なんて好きでもなんでもない。
数いる女の中の1人で読モやっててギャル友のリーダーみたいなポジだから彼女にしとくには丁度いいから彼女にしてただけなんだろう。
なんで私はあんなのに固執してたんだろう。
カス男じゃん…。
それからは必死だった。
大半の友達…そう思ってた奴等はあっさりと私を見限ったけどだからと言って動画の存在をセンコー達にチクったりはしなかったので退学とか停学にはならなかった。
野上はモテるのであの動画をセンコーにチクったら野上も連鎖的に釣る仕上げられる可能性を危惧してかは知らないけど。
まぁ女の方はともかく男の方は下心見え見えだった。
黙ってるための見返りを求めて来る奴が多かったのは流石に辟易とさせられた…。
流石にうっとおしかったので私の事を今でも信頼してくれてる友達とかを動員して黙らせた。
あとこの件に関しては思わぬ助け舟が用意されることになった。
「久しぶりね?塚本さん」
「何のようなの?片桐?」
「多分あの動画の事についてはもうある程度予測ついてるでしょうけどこのさいハッキリさせとくわね?拡散したのは私よ」
「へぇ?やっぱりね、で謝罪でもしてくれるの?」
「するわけないじゃない?してどうなるの?」
「ふふ、あんたらしいわね?」
この女はどういう理由かしらないけど数ヶ月学校を休んでいた。
どうも交通事故にあったらしいがピンピンしている。
どうせ交通事故に見せかけてなにか悪巧みでもしてたのだろう。
「そんなに警戒しないで?私も多少はやり過ぎたって後悔してるのよ?」
「良くいうわ…」
「本当よ?だから今日は貴方に誠意を示そうと思ってコレを持ってきたの」
「……。」
片桐は私にUSBデータを手渡してきた。
こいつ……この中身は…恐らく…。
「勿論貴方以外のハーレムメンバーの弱みも残しておかないとフェアじゃないでしょ?って考えの元残しておいた動画よ?」
「ホント…気持ち悪い女ねアンタ」
「お互い様よ、野上なんてカスに媚を売る売女が私にちょっかい掛けてくるならそのための保険はいるんだからこれは正当防衛よ?」
「いいの?私にコレを渡して?」
「貴方が野上から離れたならもう必要はないわ、後は貴方の好きにして、私ももう貴方達に干渉しないわ。」
「信じれると思ってるの?」
「信じる信じないは貴方の勝手よ?じゃあね?」
片桐は手をヒラヒラさせて去っていく。
本当に訳のわからない女だ。
データの中身は気になる。
何が入っているかは一応確認しておく必死があるから。
ウィルスとか入ってたら嫌だから中身はネットカフェで確認した。
中には思った通りハーレムメンバー相手に野上が盛ってる動画だった。
ご丁寧にハーレムメンバーの顔にはモザイクがかけられていて誰だかわからない様に細工が施してある。
でも見るやつが見れば誰かはハッキリわかるしウチの制服もきているのだからどう見てもアウトだ。
オマケに諸々のヤバい写真なんかもある。
中には教師とハーレムメンバーのなんてものまで…。
あの女こんな物をいつから用意してたんだ…。
怖すぎる…。
「何が他のハーレムメンバーの弱みよ、野上を引きずり落とす事に特化し過ぎじゃない。」
あの女は私を使って野上をこの学校から消すつもりなんだ、そして私にはもう野上を守る義理も義務もない。
私はもうアイツの彼女でもハーレムメンバーでも無いのだからお望み通り2度と会わない様にしてあげるわよ。
「なによりあの女の意向に背いたら今度は何されるかマジでわからないしね…。」
それから数ヶ月後この学校から野上はいなくなった。
校内で複数の女子と肉体関係にあった事や避妊具を使わずに行為に及んでいた事など上げれば情状酌量の余地も無い程に詰む情報がある日突然職員室に置かれていたのだ。それ等の情報は1生徒の蛮行が一纏めされていたのだから退学に追いやられるのは致し方ない。
誰も妊娠まで行ってなかったのは不幸中の幸いだけど。
まぁ私には関係ない。
また野上の退学にやたら積極的な教師が複数人いたがそれはまた別の話だ。