表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/29

20話



「別れる?何言ってるの貴樹?」


「もうお前と一緒にいてもドキドキしない、好きって気持ちが湧いてこない。当然だよな…お前はもう俺の好きだった頃のお前じゃないんだから。」


「なにいってるの?私は片桐瑞穂…、あんたが恋い焦がれた幼馴染みじゃない?」


「俺の知ってるお前はこんな事しなかった…こんな誰かを陥れるような事…しなかったんだよ…変な夢を見てからお前は変わっちまった!」


「あんたに何がわかるのよ!私は私!!

私は私にとっての最善の選択をしてるのよ?塚本は潰しておく方がいいわ、手緩いのよ!何もかも!そんなんじゃ後悔するわ、あの時やっておけば良かったって!私はもう後悔したくない!だから最善を選ぶ!」


「何が最善だよ!?あそこまでする必要が何処にある?やり過ぎなんだよ!?」


「やり過ぎ?中途半端はよくないわよ?

塚本は約束なんて守らないわ、ほとぼりが冷めたらまた萬月を追い詰める…萬月はそうなったら結局保身を優先して私がやったのと同じ事をする…偽善者のあの女は私は悪くない!悪いのは約束を破ったあの女だって自己弁護を吐くわ!それがわかってるから私はそうならない最善をつくしたの!そんな事もわからないの?」


「そんなの分からないだろ!塚本は…、仮に…仮にそうなるとしても…何故俺達に何も相談しなかった!?何故勝手に…」


「相談してどうなるの?優柔不断なアンタに何ができるの?優柔不断と偽善者なアンタ達が出せる答えなんてろくなものじゃない、感謝して欲しいくらいね、私はあんた等がやりたがらない汚れ役を勝手にやってあげたのよ?」


「………。」


「こんなに尽くしてあげてる恋人を一時の感情でふるのかしら?」


「ああ…ふるよ…あの時お前がそうしたみたいに…俺はお前の恋人を辞める。」


「ふふ…ふふ…ふふふふふふ……駄目よそんなの…駄目。アンタは私の彼氏なの…このまま一緒に高校を卒業して一緒の大学を受験して一緒に大学にいくの。その間二人でアパートとかで暮らして…炊事や家事を分担でするの、大変だけどそれはそれできっと楽しいわよ?出来ない事は二人で力を合わせてやればいい、その方が出来た時の達成感はひとしおよ?社会にでたら私も働くのか専業なのかその時にならないとわからないけど二人ならきっと大丈夫よ。そして仕事が落ち着いたら最初は女の子の子どもが欲しいわ、私に似てとてもかわいい…その後生活に余裕ができたら3人は欲しいわ…とても…とても楽しい生活…ふふふ……。」


「…………、お前は…。それは俺でなくてもいいはずだ、お前が見てるのは俺じゃない…。」


「まだそんな事いってるの!?私が好きなのは!!」


「お前が好きなのは言う事を聞いてくれるYESマンだろ?お前にとって幼馴染みでわかりやすい下しやすいのが俺だからお前は俺に執着してるだけだ…結果的にはお前は誰でもいいんだ。」


「違う!!違う違う違う違う違う違う違う!!!

何度も何度も何度も何度も!!

ねぇ?どうして!?どうして分かってくれないの!?

私はあんたが好きなのよ!こんなに言ってるのに!

こんなに尽くしてるのに!どうしてそんな冷たい事ばかり言うの!!?昔のあんたはあんなに私の事好きって言ってくれたのに!」


「響かないんだよ、お前の言葉が…なにも…かんじないんだよ…デカい声と態度で威嚇してるだけ…、お前からは俺を好きだって感情が見えないんだよ。」


「ふふふ……あはは…ふざけんな…あははふふふひひ、……ふざけないでよ…」



よたよたと瑞穂は家とは反対方向に歩き出した。

足取りは不安定でおぼつかない。

まるで夢遊病にでもなってるみたいに危うげだ。



「瑞穂…?」


「話かけんな!」



心配になり彼女に声をかけるがそれは彼女自身に拒絶された。

まるで近づく事自体が心底不愉快と言うように。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







不愉快だ…

とても不愉快だ。

貴樹なんかに

あんなつまらないヤツに見透かされた。

あんな空っぽの個性の欠片もない奴に。

せっかくこの私が恋人になると…処女さえ差し出すといってやってるのに…アイツはそれすら拒んだ。


これだからガキはきらいだ。

自分が一番正しいと思ってやがる。

塚本の事もそうだ。

学生時代の過ちなど対した問題じゃない。

学歴が不安定でも女にしか出来ない仕事など山程ある。

現に私はそうやってあの地獄の40年間を生きて来た。

大体あの女はナマイキなんだ。

野上なんてくだらない男を捨てたくらいで頻繁に私に噛みついて来やがった。

だから黙らせてやった。

それだけなのにどいつもこいつも私を悪者にしやがって…。

もう嫌だ、たくさんだ。

そうだ…やり直そう。

またあの時みたいにすればこの悪い夢から目覚められる筈だ。

今度は上手くやろう。

今度は失敗しないように。

貴樹好みの女を徹底的に演じよう。

そうすれば私は今度こそ幸せになれる。


今度こそ…。



幸せになるんだ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




目を開ける

いやちゃんと目が開かない

眩しい。


意識がぼんやりしている。

ここはどこだ?

私は…片桐…瑞穂

そうだ…私は瑞穂だ。

大丈夫…ちゃんとわかる。



ここは何処だ?

何故体が動かない。

白い部屋、飾り気のない部屋

少し消毒液みたいな匂いがする。


ふと壁にかけられたカレンダーが目に写った



「え…?」



そこには暦が書かれてる

だいたい20年も先の暦が。



「嘘…」



体が重い、懐かしい…不愉快な重さ…

だるさ…これって…。



鏡がある、机の上に手鏡が…

そこには老いさらばえた40代の自分の姿が映っている。


なんてことだろう…

今までのが夢で…


こっちが現実だったって事…?



「はは…笑える…」



全く笑えないのに笑うしか無かった

そうするしか無かった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ