15話 まとめ
ハーレム物の主人公には二通りある。
ぱっとしない印象で地味だが心優しく掃除や料理が好きな家庭的男子。
もう一方はいい加減で適当だが才能あふれるチート系男子とかかな。
勿論これは俺がこれまで読んできたラノベやアニメによる印象でしかなくそうと決めつけている訳では無い。
他にもいろんなパターンがあるだろうしあくまでも俺個人がこの2パターンに分けられると主観混じりに持論を述べているだけだ。
そしてこのクラスにもハーレムが存在している。
一人の男子に5人もの美少女がくっついている。
野上君を中心にした美少女の群れだ。
ドクモギャルに小悪魔アイドル系に妹系にお姉さん系に1年には後輩なんかがいるらしい。
ここに大人しい文学系美少女の萬月さんがいたがそれは除外しておく。
一通り取り揃えてるのだから流石と言ったところだ。
どの子もこのクラスで抜きん出た美少女でその人気はクラス外にも波及しているがそんな子達を野上君一人が纏めているのだから純粋に凄いと俺は思う。
ちなみに野上君は先程僕が述べたハーレム主人公のどちらにも属してないと思ってる。
まず彼は地味という言葉から遠くかけ離れた派手な見た目のイケメンだ。
見るからに家庭的要素から逸脱しているので掃除とか料理とか出来るようにはみえない。
そして実際出来ないのは瑞穂から聞いてるので恐らく間違いないだろう。
出来てたらそれだけである意味萌要素になる。
そして彼は凡人だ。
天才肌でも才能に恵まれてるワケでもない。
多分基本スペックは俺とどっこいだろう。
つまるところラノベなんかでよく見るハーレム主人公の特徴に当てはまらないのが彼という人間だ。
現実は小説より奇なりなんて言うが正にその通りだ。
でもそんな彼に5人もの美少女がカルト宗教の教祖を祭り上げる信者の如く取り囲んでいる。
ハーレムを作る事に関していえば無いと思っていた才能はハーレムを作る事に特化した形では存在しその性能は正に天才級といえるだろう。
そんな彼が唯一手に出来なかった美少女。
それが現在俺の彼女である片桐瑞穂だ。
瑞穂は腰まで届く黒髪に少しのメイクで大人びた印象を与える色気のある女子高生だ。
このクラスで一番の美少女という評価をくだされているし昔はそんな彼女に俺も惹かれていた。
だが告白を尽く無下に断られた事がきっかけで彼女を避ける様になったのだがある日を境に彼女は俺に執着するようになり幸か不幸か恋人になる事は叶ったのだがそれがきっかけで野上君から逆恨みされているのが現状だ。
「はぁ…。」
ため息が出る
瑞穂の彼氏になればその立場が俺を守ってくれるとアイツは言ったが実際の所事態はより面倒くさく厄介になってきている。
俺も基本自分の事ばかりのクソ自己中男だがアイツはその上をいくさらに自己中なクソ女だ。
最近よく思うのは昔俺は何故ああも彼女にぞっこんだったのだろうかと言う事だ。
最近は瑞穂の株は下落の一途を辿っている。
基本的に自分本位な考えが目に見えてるしそれを他者から指摘されても逆ギレして走り去るだけ。
昔の俺は彼女の上澄みしか見てなかったのだろうと最近は特に思う。
その華やかな見た目に惹かれ彼女の本質を見ていなかったのだ。
これでは彼女が嫌う男達と大差はない。
しかし彼女はそんな俺の事を過大評価する。
彼女が見たという夢がどんな内容なのか詳しくは知らないけどその夢が彼女に誤解させてるのだろう。
俺は彼女が思うような大それた人間ではないのだから。
「こんにちは中原君、今日は来てくれてありがとう。」
「呼ばれたんなら来るよ、特に用も無かったし。」
「ふふ、じゃ行きましょうか?」
「そうだね」
ある日萬月さんからラインが届き今後について話し合いたいから二人でお話する機会を頂けませんか?という内容が文が送られてきた。
瑞穂に黙って会うのはリスクが大きいので彼女を同伴させてはどうか訪ねたら
「彼女の事も相談したいので出来れば二人で会いたい」
との事だった。
これに了承し日付を決めて彼女の行き付けの店に集合となったのが今日だ。
俺と萬月さんは連れ立って喫茶店に入る。
ここは彼女が愛用している老舗の喫茶店だ。
内装はアンティークな雰囲気でよくわからないが落ち着いた音楽が流れていてとても落ち着く空間だ。
空間に染み付いたコーヒーの良い匂いが心を落ち着かせてくれるしとても心地がいい。
「気に入ってくれたみたいですね」
「こんな良いお店知ってるなんて萬月さん良い趣味してるね。」
「こういう静かな場所でもくもくと読書するのが好きなんですよ。」
「へぇいいね。」
「中原君も本を読まれるので?」
「うん。てっ言ってもラノベばかりだけどね」
「良いじゃないですかラノベ、私も読みますよ!」
「そうなの?どんなの読むの?」
「色々ですが最近はファンタジー系にハマってますね私気が弱いタイプですからああいった過酷な世界で強く生きてるキャラクターにあこがれてしまいまして感情移入しちゃうんです。」
「ああーわかるよ!俺もこんな風になれたらってよく思う」
「ふふ、私達似てますね。」
「でも萬月さんが気が弱いってイメージはあまりないかな?瑞穂に言いたい事をハッキリ言ってたし自分をしっかり持ってる人なのかと思ってたよ。」
「それは買いかぶりです。
私彼女みたいな自分本意な人は嫌いなんです、まるで自分中心に世界が回っているみたいに考えてるみたいで…見ていて腹が立つんです。」
「なんか…意外だな…」
「そうですか?…そんな物ですよ…昔から私は誰かの影に隠れて生きてきましたから彼女みたいな自信に溢れてる人が羨ましいんだと思いますよ。」
「それは違うよ。」
「え?」
「瑞穂はもともとあんな性格じゃなかったんだ、いつも人の顔色を伺ってオドオドしてる怖がりな奴だった、小学校の頃なんてもっと酷くてさ、犬や猫にまで怯えてたな…。」
「それこそ意外ですね、彼女に怖い物なんてないくらいに思ってましたから…。と考えるなら…」
「うん?なに?」
「いえ…それより彼女をどうやって同盟に誘い入れるかですね。」
「無理じゃないかな?アイツは基本頑固だし一度突っぱねたら聞かないと思うよ。僕から言い出した事だけど…
」
「いえ…そうもいきません、立場は彼女の方が有利なんです。それに私が野上君に従ってない事を彼女が野上派の人間にバラしたらその時点で私の計画は破綻しますから…」
「そうか…それは厄介だな…」
「それに彼女も冷静さを取り戻してるでしょうし何を仕掛けてくるかわからない怖さがありますね」
「う~ん」
まとめると萬月さんは野上ハーレムから離反したい。
しかし現ハーレムメンバーの態度が怖くて離反の意志を示せないでいる。
そこに俺と瑞穂が付き合い始めた事に嫉妬している野上が俺から瑞穂を奪い取る為の行動を開始した。
萬月さんを使って俺に浮気をさせその事で瑞穂を失望させる事で瑞穂から俺への恋愛感情を薄れさせるのが狙いだ。
そして彼氏に浮気され感情的にも不安定になった所に颯爽と現れ瑞穂を自分の物にしようと画策してるらしい。
この事実をハーレムから離反したがっている萬月さんから聞いた俺は彼女と同盟を組んで対策していきたい。
瑞穂を仲間に引き入れたいけど昨日の段階でそれは失敗に終わっている。
瑞穂もこの一連の話は知ってるのでほっておくと何をするかわからない。
萬月さんはそれが気掛かりのようだ。
「それに私も彼女を敵に回すのは怖い…貴方の恋人と言う立場はそのものズバリ彼女を敵に回すのと同義です、しかし恋人にならないと野上君を欺けない…これは一種のジレンマですね。」
「そうだね…?」
「しかし私の見立てでは彼女があそこまで怒るとは正直思ってませんでした…失礼を承知でいいますが彼女の中で貴方の存在感はあそこまで大きくなかった筈です。正直言えば貴方と恋人関係を構築してるのも不思議なくらいです。」
「俺も半年前の自分に今瑞穂とつき合ってるんだぜって言っても過去の自分は信じられないってよく妄想するよ。」
「つまりこの半年間の間に何かがあったという事ですね…。」
「まぁ…そうだね…」
瑞穂の夢。
それがアイツが変わった明確な理由だ。
夢で40歳になった未来の自分を見るなんて荒唐無稽な話を信じる人間はまずいないだろう。
しかし瑞穂は夢を見た前と後で人格が変わったと思う程に考え方が変わっている。
あの様子を見ていれば夢の内容がどうであれアイツが追い詰められる程の説得力がその夢にはあったんだろう。
これはプライバシーの問題だ。
瑞穂のデリケートな部分。
協力関係にあると言って萬月さんに話して良い理由にはならない。
「中原君は何か知ってるんですか?」
「いや…心当たりは正直ある…でもこれはアイツの事だから俺の口からは言えない。」
「そうでしたか…なら仕方ないですね…。」
「仮にだけど…」
「はい?」
「もし誰かの将来を台無しにする事で自分だけは幸せになれるなら萬月さんはなりたいって思う?」
「誰かの将来を台無しに…?……難しいですね…」
「難しいの?」
「友達や家族…あるいは恋人…、そういった身近な存在の人生をめちゃくちゃにしてまで幸せになりたいなんて思いません…でも会ったことも話した事もない他人や嫌いな人なら……と考えてしまいますね…。」
「……そっか…。」
「たしかに自分が幸せになるなら彼女は他人を蹴落とす事も戸惑わないでしょうね…。」
そういった意味の質問では無かったのだが彼女のその言葉に俺は何も言い返す事が出来なかった。
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