1話 元幼馴染み
幼馴染み…
小学校、なんなら幼稚園とか保育園のころから親交のある同年代の他人のことを指す言葉だろうか?
男でも女でもこの条件が当てはまるなら等しく幼馴染みに分類されると思うが俺がお世話になってる二次創作ジャンルでは基本的に異性である事が前提となるイメージだ。
兎にも角にも幼馴染みとは幼い頃からずっと一緒に過してきた家族のような距離感を持つ異性の事で異性と接点のない陰キャな卑屈男子にとっての憧れ的存在となりがちだがこんなのは物語の都合によって構築された設定であって現実では時間の経過に伴いどれだけ仲良かろうがその関係は風化して崩れて行くものだ。
それにこの手の話にはお決まりの鉄板ネタとして思春期特有のすれ違いというヤツがある。
男友達に揶揄われたとか恥ずかしいとかそういうヤツだ。
結果中学辺りから意識しだしてそのせいで疎遠になったりするしその他にも容姿や学力、コミュ力などで差を感じたりもするのが切っ掛けとなるのも一つのテンプレだろう。
結果どちらかが気を使って幼馴染みと話さなくなり結果的に疎遠になる。
そして何を隠そう俺にも幼馴染みに該当する異性がいた。…『いた。』…そう、過去形だ。
元幼馴染みとは家が隣で幼稚園も一緒だった。
当時は今と違って人見知りだった彼女にこれまた今と違い嘘みたいにフットワークが軽かった俺は彼女との距離をグイグイ詰めていく様なヤツだった。
幼少期の俺…まさに陽キャじゃん…。
どこに行くにも彼女の手をつかんで引っ張り回していたが今考えるとすごいな…俺、もう絶対に出来ないよ、そんな事……。
とまぁなにが言いたいかというと幼稚園の頃から親しくしていた幼馴染みと呼んでいいだろう異性とは高校生となった現在では疎遠の一言で……いやむしろ馬鹿みたいに嫌われている。
声をかけよう物なら
「やめてよ…アンタと知り合いなんて周りに知られたらあたしの株が大暴落じゃん…」
とか
「あたしの後ちょろちょろ付けんの止めてくんない?ストーカーってゆーんよ?そういうの。」
「いや…家が同じ方向なんだから仕方ないだろ?」
「はぁ…?きっしょ。」
とかだ。
弁明しておくがマジで後を付けようなんて気は更々ない。
本当に家に帰りたかっただけなのだ。
そこでたまたまアイツと鉢合わせして黙ってうしろを歩いてるとご覧の有様だ。
話しかければうざがられ黙っていたならストーカー扱いでうんざりだ。
ちなみに俺にはアイツ関連で消し去りたい黒歴史とも言うべき過去がある。
俺は中学3年の時アイツに告白した事がある。
当時の俺は愚かにもアイツに片思いしていた。
当時は今ほどあたりはキツくなく俺からはツンデレみたいに見えていてアイツの態度もたんなる照れ隠しのような物だと認識していた。
高校生になったら彼女を作って花のある高校生活をおくるなんて夢物語を頭の中で描いていたのだ。
その相手は幼馴染みの美少女である瑞穂だと。
今思うと本当にどうしょうもない。
思い上がりも甚だしい。
その結果が…
「うわぁ…マジ…?」
「へ…?」
「はぁ…本当ダルいわ…私何度も言ったよね?アンタとは無理だって…そもそも私彼氏いるんだけどアンタ私に浮気させる気なの?サイッテー!」
「は?彼氏?そんなん1度も聞いてない……」
「どうしてアンタにわざわざ彼氏いるとか言わないといけない訳?何様なのアンタ」
「………。」
「はぁ…、もういい?私行くから。」
そう言って彼女と俺の初恋は去っていった。
その後傷心の俺の心を癒すような新たな出会いなんて都合よくある筈もなく1人惨めに家に帰った事も含めて黒歴史の完成だ。
当然数日は引きずった。
何せずっと好きだった幼馴染みに告白して見るも無惨にフラれたのだから当時の俺の心には大ダメージ、正にオーバーキルだ。
ただ引き篭もったりはしなかった。
時間は無情にも進んでいくし過去の出来事は時間によって流れていく。
ただこの経験は俺をいっぱしの拗れた人間に育てるのに十分なきっかけになった。
現在高2、あれから2年半程が過ぎている。
おそらく元幼馴染みの彼氏は3代目くらいか?
中学の頃の彼氏から既に2回も変わっているらしい。
それが節操がないのかどうなのか…尻が軽いのか軽くないのか恋人がいた事のない俺にはわからないが俺個人の主観では軽いなぁとおもう。
他人になったとはいえこうして元幼馴染みの情報がはいってくるのは腐っても幼馴染みだからなのか…。
ご近所さんだからか母親がどっかしらから情報をもってきてしまうからだ。
典型的近所のおばちゃんとしての属性をもつウチの母親は噂話が大好き。
俺が望む望まぬに関わらず母親は元幼馴染みの情報をもってくるのだ。
加えてアイツは学校でも有名人だ。
これまたテンプレだが元幼馴染みは美人だ。
よく告白されてるし常に周りにはトップカーストの男女が群がっている。
腰まで届く長い黒髪と白い肌、適度に着崩しているがそれが絵になる良好なスタイルは高校生離れしていて人目を引きつけて余りある。
所謂清楚系ギャルなるステータスが元幼馴染みの見た目を表す上でこれ以上無いだろうと思う。
そんなアイツにとってパッとしない地味で根暗な陰キャの俺と昔馴染みだと周囲に知られるのは恥部でしか無いのだろう。
俺も言いふらすつもりはない。
そんな事をしても俺にはなんのメリットもない。
この2年半でアイツへの恋愛感情などとっくに失せている。
それが俺と幼馴染みの少女瑞穂との距離感だ。
しかしそんな俺の考えとは裏腹に予測出来ない…出来よう筈もない事が起こる。
朝の気だるい時間。
毎朝このままサボってネットカフェにでも行こうかと思案してしまう。
サボるのは簡単だ。
学校に行かなければいいだけなのだ。
ただ家には母親がいる。
学校に行かずに家にいると何かしら言われるのでネットカフェがダラダラ時間をつぶすにはうってつけだが限られた小遣いでネットカフェになど常駐していればあっという間にすっからかんだ。
買いたい漫画やラノベにゲームにプラモと金は一向に足りる事がない、結果学校にいって一日を無意味に過ごすのがもっとも無難なのだ。
そもそもサボったら次の日母親どころか親父まで出張って説教大会の開催だ。
あまりにもリスクがデカ過ぎる。
母親に起こされる前に起床し用意された朝食を食べたら顔と歯を洗ってそそくさと家を出る。
あくびをしながら朝のなんともいえない気だるい空気にうんざりしているとうしろから声をかけられた。
びっくりしたので少し声が上ずってしまったのだが正直それを気付かれたくない相手だった。
「相変わらず辛気臭い顔してるわね高樹」
「!?瑞穂!?」
「何よ…?」
俺に声をかけて来たのは元幼馴染みである片桐瑞穂だった。
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