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3.ストーン・ドラゴンのおやつ

 愛児たちがピンチ!

 半狂乱のあたしは、ギルとともに馬車へと飛び乗った。


 王都からシルバ村までは、馬車を飛ばして20分。

 客車の座席で無意味な起立着席を繰り返すあたしを、ギルが懸命になだめようとする。


「アリアンナ……落ち着いて座ってなよ。ストーン・ドラゴンがシルバ村に下りたとは限らないでしょう?」

「下りたとは限らないけどぉ……」


 そうは言っても、落ち着くことなどできるはずもない。

 ドラゴンは鼻が良い。数キロメートル離れた場所からでも、獲物の匂いを嗅ぎ取るのだと言われている。もしもあのストーン・ドラゴンが腹ペコで、餌を探して低空を飛んでいたのだとしたら。

 そしてあたしの部屋を埋め尽くす宝石の匂いに気が付いたのだとしたら。


 そんなの見逃してくれるわけがないでしょうが!

 3時のおやつにされちゃうに決まってるよ!


 えぐえぐと涙を零し始めるあたしの肩に、ギルが優しく手のひらを添える。


「何も起こっていないのに泣くのは止めなよ、アリアンナ。もうすぐ村に着くからさ、そうしたら全て杞憂だとわかるよ……」


 しかし今日という日に限って、あたしの心配は杞憂では終わらないのである。

 

 ◇◆◇


 それから10分も馬車を走らせ、あたしとギルはシルバ村へと帰り着いた。

 人口が2000人にも満たないシルバ村。いつもは賑わいとは無縁の村中が、今日ばかりは混沌としていた。


 「ストーン・ドラゴンが暴れている」と叫びながら村を駆け回るお役人。

 不安そうに肩を寄せ合うご婦人たち。

 「ドラゴンだって、すっげー!」興奮状態の少年集団。


 村の入り口で馬車を降り、呆然と立ち尽くすあたしとギルの目の前に、優しげな顔立ちの中年男性が滑り込んできた。ギルの父親だ。


「ギル、帰ったのか。すまないがアリアンナを連れて村役場に向かってくれ。ローガン夫妻が、ずっとアリアンナの帰りを待っているから」

「父さん。ストーン・ドラゴンが村に下りてきたの?」

「ああ……そうだ。もう20分近くも前のことになるが」

「ドラゴンはどこで暴れているの」

「……ローガン家の敷地だ」


 ローガン家――つまりあたしの家。

 途端に目の前が真っ暗になり、あたしはへなへなとその場にしゃがみ込んだ。


 暗闇に包まれた視界の中に、ストーン・ドラゴンの幻が現れた。岩石のような身体を持つ巨大なドラゴン。

 そしてそのドラゴンの鼻先には、あたしの愛児たちが山のように積み上げられている。

 

 ああ、あれはあたしが7歳の誕生日に貰った純金のブローチ。

 ああ、あっちは村祭りの輪投げでGETしたアレキサンドライト。

 ああ、そっちにはギルとお揃いで買った銀細工のキーホルダー……


 ストーン・ドラゴンは真っ赤な舌で口周りを一舐めすると、山盛りの宝石にかぶりついた。ガリゴリゴリと派手な音を立てて、皿の中の宝石を食い荒らしていく。

 あたしの大切なダイヤモンドをルビーをサファイアを……丁度いい3時のおやつを見つけたとでも言うように。


「あたしが十数年かけて集めた宝石を3時のおやつですってぇ? そんなふざけた話があってたまるかい。ふふ、ふ、ふふ」

「アリアンナ……? ちょっと、何で笑ってるの。怖いよアリアンナ。アリアンナぁ!?」


 暗闇の中で、ギルの声がどこか遠くに聞こえる。

 ああ……あたしの大切な宝石たち……命の次に大切な愛児たち……さよ……なら……

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