8話天元突破!貫け!黒船ドリル! 後編ッッッ!
協力を申し出た、少し小太りの手足の短い若者ドワーフ達は語り出した。
「俺達もこまってるわけよ。磨き上げたこの鍛治の腕で都会で一発当てて、地元に錦旗掲げて帰る。なのに、鎖国ときちゃぁどうしようもねぇ。なあグレイ?」
「んだよなドルル兄貴。オイラ達あんな派手な啖呵切っちまった…このままおめおめと帰れねぇよ」
聞いた話によると彼等ドワーフ達も、閉鎖的かつ新しい物を拒む老人達に嫌気が差し田舎を飛び出してきたらしい。
無精髭を生やし頭に三角の鉄帽子を被ったドワーフがドルル。そして、ドルルの言葉に頷く少年ドワーフのグレイ。
どうやらドルルは若くして弟子を持つ程の技術を持ち次々と新しい物を開発するのを楽しみとして鍛冶に勤しんでいたが、古典的な考えで新しい物を否定する老人職人達に弾圧され、店に商品を出すことすら許されなかったらしい。
出る杭打たれるとはまさにこの事。我が魔王軍では技術や才能を持つ者は実力を示せば出世する事ができる。どうせ出る杭ならば、行ける所まで伸ばしてみよう。それが魔王軍のスローガンだ。
俺達はドルルの作ったという武器を紹介して貰える事になり、若職人ドワーフの作品が風呂敷の上に並べられていく。
「ほぅ、これは歩行型の魔導機雷。それにこのうねる様な剣…面白い。む!? こっちは魔力を流せば変形する武器まで…クククッ、ドルル。貴様素晴らしい…是非とも我がぐ…んんん!」
どれもこれも柔軟な発想がなければ作ることが出来ないであろう作品達。しかもどれもこれも中々の一品。若いとはいえ腕は一人前という訳だ。
これは有望株。魔王軍副官として「魔王軍に来るが良い!」とスカウトしたい気持ちを押し殺す。
こういう武器は特に四天王の一人であるアイツが喜びそうだし。
「ルネア! ルネア! これみぃや、このトゲトゲ鉄球。姉ちゃんこれ気に入ったで」
「姉さん振り回さないで下さい。うわっ危なっ」
横ではルーニャが鎖の着いたトゲ鉄球ーモーニングスターを振り回す。好奇心旺盛なのだろう目を輝かせながら美少女エルフは鉄球を楽しそうに振り回しながらエルフ耳をピコピコと動かす。
華奢なエルフがモーニングスターを振り回す、はたから見ればなんとも異様な光景であるが本人が楽しそうならそれでいい。
「ほぅ。エルフのがきんちょ分かってんじゃねぇか。俺ぁエルフは何時もお高く止まって嫌いだったんだがお前さんとは美味い酒が飲めそうだぜ」
ドワーフの若職人ドルルは己の作った武器を気に入ったルーニャに向け歯を見せながら笑う。
たしかエルフとドワーフは余り仲が良い種族ではない。ドワーフは岩山など鉱石が豊富な土地に居を構え豪快な性格をしている。そしてエルフは自然豊かな森を好み、森の妖精と呼ばれるほど落ち着き上品な振る舞いを好む。まあこの2人は少し例外のようだが。
正反対とも言える性格をした2種族。ソリが合わないのか互いに見下し合うことで有名だ。
「おう! ドルルはん、私は火を噴くほど辛い酒しか好かんでぇ。スピリタスで乾杯や!」
「姉さん僕たち未成年ですよ……あ、ドルルさん。ちなみに僕は濁り酒が好きです。あのカァーと喉が熱くなるのたまらないんですよね」
「兄貴、こいつらイケる口でっせ。ちなオイラは焼酎」
「ガーハッハッハ♪ いいねぇいいねぇ! じゃ今宵は酔い潰れるまで宴といくか!」
鎖国対策の会議になる筈だった集まり。しかしエルフの双子とドワーフ達はすっかり意気投合し酒瓶と盃を取り出し始める。
確かに酒で仲を深めるというコミュニケーション手段もある。それにしてもこいつら酒の趣味渋いな。特にルネア、お前はおっさんか。
それよりも、
「未成年飲酒ダメ絶対」
俺は酒瓶の栓を開けようとしていたルーニャからアルコール度数99パーと表記された下手すれば死人が出る酒を取り上げる。
「ああ〜私の酒ぇ。固い。固いでグラオの兄さん!」
スピリタスは本来、度胸試し感覚でショットで少量飲むのだが、返せ返せと言う彼女が手に持っているのは丼。こいつ絶対将来早死にすると思いつつも健全な青少年育成の為、未成年2人の酒瓶を取り上げる。
「ダーメです。このグラオの目が黒いうちは犯罪は許しません」
普段は戦場で敵兵を斬り伏せ、これから将来の敵であるメガネ女を暗殺しにいくのだがこれとそれは別。
一人の大人として間違った方向へと進もうとしている子供を正す責任がある。
「夜も冷えてきました。身体を温めるぐらいいいじゃないですか。………じゃねぇとエルフの伝統芸能【気に入らないヤツの頭部を酒瓶で殴る】を披露しまっせ」
「ええで! ルネア。その暴力はねぇちゃん許したる。伝統芸能見せたれや!」
「ヒュー♪ エルフのガキ共。オイラますます気に入ったぜ」
物騒な事を言いながらルネアの口調がまた荒々しくなる。大人しい印象を持たせる美貌の少年だが、丁寧な口調、そしてこの荒々しい口調。どっちが彼の素なのか分からない。
「湿気るじゃねぇか甲冑のあんちゃんよ。別にいいじゃねぇか。こいつらエルフだぞ下手すりゃアンタより歳上だぜ」
「エルフの成人年齢は100歳だ。こいつらの魔力量、質……明らか未熟!」
「………ほぅ」
ドルルは一瞬だけ目を細めると酒瓶に口を付けぐびりと煽る。
ラベルには果実酒の銘。こいつ案外、可愛いな。
「あーもう。折角、売り物とは別で買ったお気に入りやったのに〜」
「ノンアルビールならあるからそれで我慢するのだ」
「…………ふぅ。分かりましたよ。それよりもドルルさんにグレイさん。どうするんですか? 一応冒険者達は入れるみたいですけど身分証ないと無理でしたよ?」
「ヒヒぃん…」
昼間の作戦失敗を残念がるように黒馬のブラックライダーはホカホカと湯気が立ち昇る熱燗を煽りながら、名残惜しそうにピエロ服を見る。
器用にお猪口を蹄で挟み酒を飲む馬、酒を飲むことを諦めグラナートが用意したノンアルコールドリンクを不服そうに飲む姉弟。
だが、この暗い雰囲気が包む宴会会場。それを打ち破るようにドワーフの若職人ドルルは声をあげた。
「ぶっ壊しちまおうぜ。オメェさん達が言ってたようにド派手によ!」
ドルルは懐から羊皮紙とペンを取り出し、設計図と思われる物を描き始める。
その驚きの内容に俺達は思わず目を疑う事になる。




