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51.女王の密命

 絵理歌達がユナから紅水仙の加工方法を聞くと、その方法は煎じて飲ませる簡単な方法だった。

 もっと有効な加工方法もあるそうなのだが、専用の設備が必要だったり時間がかかるので今回は簡略化した方法を取った。

 ユナ曰く、ブラドの眷族化程度ならこれで十分とのことで、教会出身のジニーと加工方法を知っているシエルが厨房で薬湯を作っている。

 ユナは礼拝堂の椅子に腕を組んで座り完成を待っているのだが、そのユナに怯えて先程から晴香が絵理歌にくっついて離れない。

 お漏らししたばかりの湿った下半身を押しつけてくる晴香に絵理歌は顔を顰めるが、いつもと違い本当に怯えている様子なのでしがみつかせたままにしていた。


「皆さんお待たせしました」


 しばらく待つとジニーとシエルが完成した薬湯を持って戻ってきた。

 二人が作ってきた薬湯を倒れている孤児院の子供達とトールに飲ませるが特に変化は見られない。

 効果が出るのに少し時間はかかるが心配ないそうだ。


「子供らはこれで大丈夫だろう。ところでシエル、任せていた調査の進捗はどうだ?」


「はい、調べはついております」


「本当にお世話になりました。次のはぐれ吸血鬼の退治に行くんですか?」


 絵理歌はすぐにでも行ってしまいそうな二人にお礼を述べる。

 絵理歌達だけでは紅水仙が吸血鬼の眷属化に効く薬になると知らなかったので、トールと子供達を治すことはできなかった。

 それについて二人に感謝している絵理歌はこの後どうするのか気になり聞いてみた。


「実は私達は別にブラドを追ってきた訳ではないんですよ。ユナ様の命を受けて調査で寄ったら偶然奴が暴れていただけなんです」


「そうだったんですね。ちなみに何の調査をしていたんですか?」


 地上最強の存在が何の調査をしていたか気になった絵理歌はダメ元で聞いてみた。

 不興を買ったら後が怖いが、ユナにはそんなことでは怒らないような寛大さを感じていた。

 シエルが目線で話してもいいか確認すると、ユナの首肯を見て口を開く。


「実はユナ様は甘味が好きでして、美味しいスイーツを探す為に世界中に調査員を派遣しているんです。悪人だった先代王のせいで吸血鬼族の印象が悪くて自由に調査できないからって、先代を殺して王になるくらい好きなんですよ。可愛いですよね」


「言いすぎだバカたれ」


 話していいと許可を得たからと放しすぎたシエルの頭をユナが叩いた。

 加減しているとはいえユナの超パワーで叩かれたシエルは地面に叩きつけられて「痛ああっ!」と悲鳴を上げるが、さすがは吸血鬼というべきかすぐに立ち上がって文句を言い始める。

 対するユナは私何かやっちゃいました? みたいな感じだ。


「はっはっはっ、軽く叩いたのに大げさだなシエル」


「もうっ! ユナ様! 何でも力で解決しようとしてはダメですよ! ユナ様にとっては軽くでも他の者にとっては致命傷になるんですから!」


「人間相手ならもっと加減するさ。其方も吸血鬼ならそう簡単には死なんだろう」


「そういう問題ではないんですう! もう、そんなこと言うユナ様には私がゲットしたスイーツ情報教えてあげませんよ!」


「むっ、それは困る。教えてくれ」


「もう、しょうがない方ですね」


 シエルの行っていた調査は各地の美味しいスイーツ探しだった。

 ユナの意外な一面に絵理歌達は少し呆然とするが、なぜか親近感も覚え緊張がほぐれる。

 なぜなら絵理歌達もスイーツが大好きだからだ。


「怖い人を想像してたけど面白い女王様ね。緊張して損しちゃったわ」


「そうですね。でも、怖い女王よりも親しみやすくていいじゃないですか。ほら、晴香もいつまでもくっつき虫してないで着替えてきたら?」


「うん、エリちゃんにマーキングしたし着替えてくるよ」


 史の緊張もほぐれたようで絵理歌に話しかけてきた。

 絵理歌はくっつきっぱなしの晴香に着替えてくるよう促すが、マーキングし終わったとのたまう晴香に溜息を吐くのだった。

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