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1.最強を目指す少女

 男なら誰でも一度は地上最強を志すと言われているが、これは地上最強を志す少女の物語。


 板張りの道場でウエイトトレーニングをする少女がいた。

 亜麻色のロングヘアが特徴的な非常に整った顔立ちの少女で、どちらかといえば男性よりも女性に人気がありそうな精悍な顔をしている。

名前は巴絵理歌(ともええりか)。亜麻色の髪は亡くなった祖母が外国人でその遺伝らしい。

 巴理心流(ともえりしんりゅう)という古武術の道場をやっている祖父は最近ますます似てきたと良く話すが、その祖父は修行の旅に出ているため最近は一人で稽古をしていた。


「ふんっ」


 気合を入れてバーベルを持ち上げる。

 しっかりと肩甲骨を寄せ、肩を下げた美しいベンチプレスのフォームだ。


「エリちゃんおはよー! 学校行こうぜー!」


 幼馴染の出雲晴香(いづもはるか)が迎えにきた。

 今日はシスル女学園中等科の入学式なのでいつもより早く迎えに来たようだ。


「おはよう晴香。プロテインとグルタミン飲むからちょっとまってて」


「オッケー。これかなり重そうだけど何キロなの?」


「メインセットは八十キロで組んでるけど」


「中一女子の扱う重さじゃないよ……」


 一般女性のベンチプレスの平均が二十キロ、男性でも四十キロと言われることから、ベンチプレッサーでもない絵理歌の扱う重さはかなりのものである。

 また、メインセットが八十キロなことを考えると、マックスは百キロを超えるだろう。


 絵理歌はトレーニング後の栄養補給を大事にしている。

 小が大を技で倒すのはかっこいいが、技術レベルが同じならでかい方が強いことを理解しているのでウエイトトレーニングで身体作りをしている。力も技の一つであると考えているからだ。

 栄養補給を終えた絵理歌は制服に着替え学校に向かうことにした。


 シスル女学園は徒歩圏内にあるので晴香と二人で歩いて向かう。

 明治に創立されたこの学園はもとは良家や武家の令嬢のためにつくられた初等科から大学まで一貫の伝統あるお嬢様学校で、武術と教育の融合をコンセプトにしている学校だ。

 初等科から学園に在学している生徒は内部生と呼ばれ、中、高等科からの途中受験生は外部生と呼ばれていた。二人は初等科からの内部生になる。


「中等科の制服可愛いよね。ウチ昔から憧れてたんだ」


「初等科の制服はちょっと子供っぽいからね。私も制服楽しみにしてたんだ」


 シスル女学園の制服は有名デザイナーが手掛けた黒を基調としたセットアップのブレザータイプ。中、高等科で制服は同じだがリボンの色で分けている。

 全国人気制服ランキングで長年に渡り一位を獲得するなど、まさに全国の女の子の憧れなのだ。

 ちなみに有名デザイナーがデザインし、生地も良いものを使っているのでお値段は高級ブランドの洋服と同じくらい高い。

 強くなることも好きだが可愛くなることも好きな絵理歌はこの制服を大変気に入っている。


「エリちゃんまたおっぱいおっきくなったんじゃない? エロい乳しやがって!」


 晴香がそんなこと言いつつペシンペシンと胸を叩いてくる。そのたびにブルンとおっぱいが見事に揺れる。


「やめんか!」


 絵理歌はバシッと晴香の頭を叩いてやめさせた。


「あたー。エリちゃんがウチの頭叩いたー!」


「あんたは私のおっぱい叩いたでしょうが。……確かにサイズは一つ上がったけど」


 じゃれあっている間に学園に到着し、咲き誇る桜並木を歩いて入学式が行われる大講堂に向かうと人だかりができていた。

 何事かと二人で近づいてみると、見たことのない少女がギターで弾き語りをしていた。


「ちっちゃくてすっごい可愛い!髪なんてブラウンのふわふわエアリーなウェーブロングヘアだよ! 瞳も大きくてお人形さんみたい!」


「歌も演奏も凄く上手いね。外部生かな?」


 可愛い子が大好きな晴香が興奮した様子で話すが、絵理歌は凄く可愛い子だが可愛さなら晴香も負けてないと思っていた。

 高い位置で結んだポニーテールのさらさらロングヘアに、くりっとした大きな瞳は昔から大好きだ。

 その上晴香は出雲神道流(いづもしんとうりゅう)という大きな剣術道場の娘で剣を持てば絵理歌と互角に戦えるくらい強いのだ。

暫く路上ライブに見惚れていると見知った顔が止めに入った。


「景! あなた何をやっていますの!」


「ねむちゃん待ってたぜ! キーボード持ってきたから一緒に弾いてくれい!」


 彼女の名前は薊ねむ(あざみねむ)。学園長の孫で、腰まで伸びた長く艶やかな髪にぱっつん前髪が印象的なとても美しい少女だ。特に胸は絵理歌よりも大きく、ねむは知らないことだが一部では乳神様と呼ばれている。乳に祈りを捧げると願いが叶うのだとか。

 いつも胸の下で腕を組んで胸を支えているため、シスル女学園ではそのような立ち姿をねむ立ちと呼んだ。 


「ねむさんごきげんよう。その子はねむさんのお知り合い?」


「絵理歌さん晴香さんごきげんよう。この子は三角景(みすみけい)。わたくしの従姉妹なんです。中等科からシスルに入りますので宜しくお願い致しますわ。こんな所で路上ライブなんてやっていましたら怒られてしまいますので、わたくしはこの子を連れて先に大講堂に行っていますわ」


「てやんでい、べらぼうめ! あたしは歌いたい時に歌うんでい! たとえねむちゃんでもあたしの歌を止めようってんならすっこんでろい!」


「相変わらずのおバカ娘ですわね! こっちへ来なさいですわ!」


 景は喚いていたがねむに引きずられて大講堂に入って行く。

 路上ライブが強制終了すると集まっていた人たちも解散して行った。


「ウチには二人の後ろに花が見えたよ」


「私にも見えたわ。絵になる二人だね」


 背景に花を咲かせる二人を見送り、絵理歌たちも入学式が行われる大講堂に入る。

 エントランスを抜けて三階席まで吹き抜けになっている収容人数三千人のホールに出ると、一年生は主役なので一階席に行くよう誘導された。

 程なくして式は始まり、学園長式辞、来賓祝辞、在校生代表の生徒会長祝辞と続く。


「生徒会長は(ふみ)ちゃん先輩なんだね」


「晴香知らなかったの? 今や史さんはディステル会の会長様よ」


 彼女の名前は九条史(くじょうふみ)。ミディアムヘアで長身の綺麗なお姉さんといった印象を受ける。

 初等科からの二つ上の先輩で、九条流(くじょうりゅう)槍術(そうじゅつ)という道場の娘である。絵理歌たちとは武術家同士一緒に稽古もするし、初等科からの付き合いなので見知った仲だった。

 ディステル会とはシスル女学園中等科の生徒会。生徒の間で大変人気があり、密かにファンクラブがあるとかないとか。

 壇上に上がった会長が話始めようとした時だった。眩い光が発生し絵理歌は何も見えなくなる。


「何これ! ディステル会会長様になると後光が差せるようになるの!」


 晴香の言葉を聞きながらゆっくりと目を開けると、どこまでも真っ白な世界が広がっていた。

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