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7事件の繋がり

「…詳細を教えてもらえますか?」

「ええ、もちろん」

ゆりは一瞬考えこんでから、また口を開く。

「花々の依頼の指輪はね、お母さんにもらった形見の指輪なんだって。詩々の依頼のカメは、詩々が小さいころからずっと一緒にいたかなり長生きのカメなんだって。その二つがポンポンどこかにいっちゃったんだよ」

「それって、かなり大きな事件なんじゃ…」

「そうだね」

千広は二つの依頼を比べてみる。

やけに内容が似ている気がするが、何か関連性はあるのだろうか。

「何なら、同時進行って形でもいいよ。事件解決は早いに越したことはないからね」

ゆりが提案する。

どうやら、この幽霊のリーダーもこの二つの事件が繋がっていると考えているようだ。

「はい、二つとも、一緒にやらせてもらいます」

「そりゃあ助かるね」

ゆりはほっとため息をつき、

「じゃあ明日、花々と詩々を日水神社に呼んでおくから、午前十時くらいにおいで」

静かに姿を消した。

明日は忙しくなるだろう。

そう考えながら、千広は布団の中にもぐりこんだ。


翌日。

千広は支度を済ませると、駆け足で神社へと向かった。

「あー、千広ちゃん!おはよ、ゆりさんたち、もう来てるよ」

結衣が軒下を指す。

三人の幽霊が、何か思いつめた表情でおせんべいを食べていた。

「…来たね、千広」

三人の中心にいる幽霊、ゆりは千広が来たことを確認すると、自分と一緒にいる幽霊に声をかける。

「二人とも、この子が人間名探偵、佐々野千広ちゃんだよ」

「この子が、ですか?」

「へなっちょろそうな人ですね」

(へなっちょろ?)

あまりいい印象は与えられなかったようだ。

しかし、悩みを聞くため、千広は三人に近づいていく。

「おはようございます。今日は、あなたたちに話を聞くために来ました。カメの話と、指輪の話ですよね?」

「話は聞いているんだね。まあ、あんたみたいなへなちょこに、たいした期待はしないんだけどね。低級のあたしらはともかく、ゆりさんのことはちゃんと見えてるのかなあ?このままだと、幽気だか霊気に当てられて死ぬかもよ?」

幽霊の一人が、呆れたように言う。

「か、花々さん、ちょっと言いすぎですよ。へなっちょろさんがかわいそうじゃないですか。すみません、へなっちょろさん。花々さん、いつもは優しい人なんですよ。今は指輪がなくて気が立ってるんです。あと、純粋に花々さんはへなちょこな人が嫌いなので」

もう一人の幽霊は、慌てて千広に謝罪する。

さっきの会話からして、女性の幽霊が花々、男性の幽霊が詩々ということでいいのだろうか?

「いやあ、弱い人間は幽霊には舐められがちなの。人魂の形をした幽霊の形には、特にね。私や私の友達みたいな人の形には、そこまで嫌われないんだけど。形の違いは大きいからねえ」

ゆりが説明してくれる。

「まあ、二人とも、事件の説明くらいしてあげてよ」

「…わかりましたよ」

花々は口をへの字に曲げたが(口は見えないけど)、やがて事件のことを話し始めた。

「あたしがもらった母さんの形見の指輪はね、生前から持ってるんだよ。だからすごい大事で、ずっとつけてたんだ。でもなぜか、あの日はつけるのを忘れちまってね。夕方にはもうなくなってたんだ」

話し終わると、花々は詩々をさっさと話せと言わんばかりに見つめた。

「わ、わかりましたよ、落ち着いて。僕のペットの亀之助君は、僕が生きていたころからとっても仲良しだったんです。いつも一緒にお散歩して、お話して、眠って…なのにあの日は、僕一人で散歩をして、幽霊とお話しして、眠ったんです。翌朝、慌てて亀之助君を探したんだけど、どこにもいなかったんですよ…」

「なるほど…ん?」

二人の話はどこか似通っている。

「まさか…犯人が同じなの!?」

二人ともいつも欠かさない日課を忘れている。

そして次の日、大事なものが消えた。

「指輪はともかく、カメは、死んじゃった可能性もあるな…」

「たしかに、亀之助君はすっごくお年寄りだけど…とっても元気なんです。いなくなる前の前の日も、元気にお散歩してたんです」

「でも、動物なんて突然死んじゃうものだし…」

千広が悩んでいると、

「じゃあ、閻魔様に聞いてみる?死んでるなら、閻魔様のところに行ってるはずだし」

ゆりがさっと手をあげた。

「あ、それはいいんじゃないですか?詩々、行くかい?」

「は、はい!確認は、した方がいいと思いますし」

花々と詩々も賛成する。

「じゃあ、早速行ってみよう!」

四人は同時に叫ぶ。

ゆりは、地獄への裂け目を開いた。

「葉月さんたちは、どうするんですか?」

「残ろうかな?葉月、どうする?」

「私も、残るよ。オーカミさんとネッコちゃんも残ろうね」

葉月が呼びかけると、二匹の動物霊が現れた。

「あたい、残る!葉月ちゃんのためじゃないけど!」

「葉月が残るなら俺も残ろう。べすとぱーとなあに近づくための心得だ」

あの気難しい動物霊を従えるとは。つくづく葉月はおそろしい。

葉月の才能に驚きながらも、千広はゆっくりと地面に沈んでいった。

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