16…君のことが、知りたいんだ
孝典の依頼が解決してから数日が経った。
千広は、日水神社で今日もせっせと修行をしていた。
そこへ、ゆりが依頼を持ってきた。
「おはよう。今日は六件目の依頼を持ってきたよ」
「どんな依頼なんですか?」
「それは今日も、本人に聞くのが早いかな?」
そこへ、
「はあ、はあっ…ゆりってば、早すぎるんだよ!」
息を切らしながら、人の形をした幽霊が現れた。
「あは、ごめんごめん」
「もー。んで、この子が天才探偵?」
「そう。天才かどうかはわからないけどね」
千広は、走ってきた幽霊にさっそく話を聞くことにした。
「初めまして、佐々木千広です。それで、今回の依頼って何ですか?」
「ああ、初めまして。それでその依頼はね…君のことが知りたいなって思って」
「…それは、そのまんまの意味の言葉として受け取っていいんですよね?」
「何だと思ったの!?」
幽霊は呆れてため息をついた。
「いやー、遠回しの愛の告白かなーって思って」
「違うって!聞いた通りのそのまんまの意味!ちょっと頭の中おかしいんじゃないの?」
「あはははー」
冗談で言ったつもりだったのだが、意外と真剣な反応をされて千広は笑ってしまう。
「はあ…んで、自己紹介が遅れたね。私は西井優子。よろしく。それで、依頼はさっき言ったとおりのやつ。突然現れた人間探偵の正体が知りたい。ってわけで、早速自分語りを初めてください!」
「あ、はい」
千広は思い出しながら口を開いた。
「えーっと、私は小さいころから霊感のせいで悩まされてきました。幽霊が寄って来るので。でも少し前に奈々と会って、それを解決してもらったんです。その時から、依頼を解決するようになって。この神社で修行をするようになり、ゆりさんとも会いました。そら…閻魔さんとも仲良くなれましたし…って感じですね」
「ほーほー」
優子は納得したようにうなずく。
「名探偵は霊感が中途半端に強くて悩まされたきた。でも奈々のおかげでその問題は解決し、幽霊の依頼を解決するようになった。それから神社の巫女に弟子入りし、幽霊のリーダーと出会う。さらにはあの閻魔と仲良くなった!いやー、びっくりびっくり。これをポスターか何かにすれば、あんたの評判も上がるよね!」
「あ、ありがとうございます」
千広はとりあえず頭を下げる。
「いえいえ。にしても、君、かなりすごい人生送ってるね。あの閻魔と仲良くなるとか、かなりすごいよ。あの子ね、真面目で大人っぽいけど実は子供っていうかわいい子だけどさ、友達作るのは苦手みたいなんだよ。だからあんまり会話もしてこないし、自分から関わろうとしないと関わってこないのさ。君は、閻魔と友達になろうとしたの?」
「いや、空子ちゃんが仲良くしてくれたんです。」
「マジっ!?ってか、名前呼び!?うわー、これは驚いたわー。ポスターに載せよ」
「あんまり余計なことは載せないでくださいねー」
優子はけらけら笑いながら去って行った。
後日。
神社に千広のことが書かれたポスターが貼られ、幽霊たちが注目していた。
それからまたしばらく経ち、依頼が四件入ったそうだ。
「アハハ…まあ、優子さんには、お礼を言わないといけませんね」
千広はくすくす笑う。
「そうだね。それで、今から依頼人のところへ行くから、千広もおいでよ」
「はい!もちろんです!」
二人は、神社から出て歩いて行った。
…それが、恐ろしい事件の始まりだなんて知らずに。