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13千広は弱く、幽霊は賑やかで、閻魔はかわいい

指輪とカメ事件から数週間。

詩々と花々とも仲良くなり、霊的な力もうまく扱えるようになっていた。

そして、この数週間の間、千広は二件の依頼を受けた。

一件目は、いつでも好きな時に髪の毛をいじれる人はいないか、というものだった。


「へえ、そんな人、いますかね?」

「いるといいけどぉ…いなければぁ、自分の髪をいじるからぁ、別にいいよぅ」

依頼者は、語尾が独特な小々という幽霊だった。

「うーん、いじられても怒らない人ね…」

千広は少し考えてみた。いや、考えていなかった。最初から決めていたのである。

「閻魔さんとか、どう?」

「閻魔様ぁ?まぁ、あの子ならぁ、多分怒らないねぇ。じゃあぁ、行ってみよっかぁ」

小々はすぐうなずき、二人は地獄へと向かった。


「あー、最近ぶりですね!地獄に来る観光ツアーって、流行ってるんですか?それとも、地獄で一番の美女、閻魔様のことを見に?」

「いや、そんなことありませんよ」

「しゅうん…」

閻魔はうなだれる。

「っていうか、美女っていうより美少女の方が近いと思いますが…」

「もー。なんだかんだ言って、私の方があなたより長く生きて…死んで?るんですからねっ。まあ雑談はさておき、どうしたんですか、幽霊なんか連れて」

「実は、頼みがあるんです」

千広は、小々の依頼のことを説明する。

「えっ!?髪の毛を好きな時にいじる~?私、あんまり結んだりはしないんですけど…まあ、たまにはいいかもしれませんね。いいですよ、千広の頼みですし」

「ありがとうございますぅ。では早速ぅ…」

小々はくしやら髪ゴムやらを持って、閻魔の後ろで髪の毛をいじる。

「わぁ、楽しいですねぇ」

閻魔の髪は、ツインテールになったり三つ編みになったり、目まぐるしく変わっていく。

「閻魔さん、似合いますね!」

「うー、いいとは言いましたが、いざいじられるとなると、少し恥ずかしいですね。私じゃなくて、千広の髪を結んだらいいんじゃないですか?私よりかわいくなりますよ」

「もう遅いですよぅ。にしても閻魔様ぁ、千広ちゃんのことぉ、気に入ったんですねぇ」

小々が言うと閻魔は微笑んで、

「まあ、気に入っちゃったかもしれませんね。今まで私があったことある人間って、強い人ばっかりだったんですよ。でも千広は、私より小さいし弱いしで、可愛くて守りたくなっちゃうのです。私、王子様に助けられる王女様より、王女様を助ける王子様になりたいなあ、と思っているのです。だから、千広のことはちゃんと私が守ります!」

と言った。

「閻魔さんったら、急にかわいいだの守りたいだの、照れるじゃないですか」

「あなたは初めての、私の年下の友達みたいな存在ですからね。可愛いと、思いますよ」

閻魔はにっこりと笑う。

「千広ちゃんったらぁ、幸せ者ですねぇ。閻魔様がこんな風に笑うのぉ、めったにありませんよぉ」

「そうなんですか~。ホント、私は幸せ者ですね」

こうして、二人は地上に戻ることになった。

「バイバーイ、また遊びに来てね~!」

閻魔の声が聞こえる。

「あぁ、閻魔様は仲のいい人ができるとぉ、精神年齢が退行…いやぁ、取り繕ってるのが元に戻っちゃうんですねぇ」

小々は新発見ができて喜んでいる。

「いやぁ…取り繕ってるわけじゃないのかもしれませんねぇ。一年前はぁ、人間が来るわぁ、事件が起きるわぁ、警戒してたんでしょうねぇ。でも今はあんまり事件は起きてないしぃ、警戒心も解けてるんでしょうねぇ」

「小々さん、詳しいんですね」

「人伝ですがねぇ」

こうして、小々の依頼は解決したのだった。


二件目は、人間探偵の力が知りたい、という依頼だった。


「よう、お前が探偵か?」

そう言って神社に来たのは、幽霊の多々という人物だった。

「はい、そうです」

と、千広が答える。

「じゃあ、依頼の通りだ。さっそく一戦交えてみようぜ!」

多々は笑顔で人の形に変化する。

「人型になったほうが、動きは読みやすいだろうからな!力も、十が上限だとしたら、一で我慢してやる。さっ、行くぜ!」

その言葉が終わるとすぐ、多々はこちらに雷を放っていた。

千広はとっさに後ろに跳び、弱々しい結界から炎を放つ。

しかし、多々はくるりと回転して後ろへ戻り、炎を凍らせて消した。

「はっ、つまんねえ。ちゃんと勝負しろ!」

多々は水の塊を降らせてきた。

「千広~、大丈夫かい!?」

「多田さん、僕らも加わっていいですか?このままじゃ、一瞬で千広さんが負けてしまいます!」

「ま、特別に許してやる。かかってこい!」

多田の許しを得て、二人は千広に近づく。

「千広!これ、葉月のお札だ!使っていいって」

「ありがとう!」

花々のもつお札袋を手に取り、千広はお札を火の玉に変形させて飛ばしていく。

火が終われば水、水が終われば、氷、氷が終われば土…千広はどんどんお札を投げていった。

「あっつ!つめたっ!なんだよ、意外とやるじゃん!」

「僕たちもいます!」

詩々は、大きな光を生み出した。

「今ですよ、千広さん!」

「うん!」

詩々の目くらましを確認し、千広は多々の額にお札を張り付けた。


「ふ~ん、思ったより弱かったな。お付きも微妙。ま、探偵だし、頭が優れてるんだろうな。きっと」

多々はそう言って歩き出した。

「まあ、私はそこまで強くなろうとは思いませんよ。なれるとも思いませんし。なるなら、いつまでも王子様に守ってもらえる王女様でいたいのです…閻魔さんがどれくらい強いのかは知らないけど」

「うぎっ、お前、頭ん中でやべえ妄想してんな!きもっちわるっ!」

「あ、いや、違いますって!」

千広の言葉を聞かず、多々は逃げるように帰って行ってしまった。

「…王子様って、誰のことなんだい?」

最後に花々が、静かになった神社で尋ねた。


「さーて。依頼もだんだん片付いて行ったね」

後日。ゆりが千広の家を訪ねた。

「あと二件。今日はそれの一件目をやってもらうよ」

「どんな内容ですか?」

「それは、本人に説明してもらうのが早いよね」

「え?」

すると、

「よう、人間」

という声がゆりの後ろから聞こえた。

黒い服を着た男が、少しずつ千広に近づいてきた。

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