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意外な結末に三人は修正を急ぐ 2

「も、申し訳ございません!!カイ様の意図に気づかず、差し出がましい事を申しました!」

「い、いや謝る必要はない、ヴェロニカ!あれらが普通の侵入者であれば、お前の意見が正しいのだ。今回は少し特殊なケースなので、それが適応出来ないに過ぎない。これに気に病まず、意見があればどんどん言うように」


 カイの苦言に、この世の終りのような表情を見せてヴェロニカは頭を下げている。

 彼女のあまりに激しい反応に動揺するカイは、慌てて彼女をフォローする言葉を並べていた。

 それは、今後も意見を控えないようにという言葉によって締められている。

 自らよりも数段頭の良いヴェロニカに黙られてしまうと、今後のダンジョン運営に響いてきてしまう。

 カイは必死に、この優秀な部下が気に病んでしまわぬよう気を遣っていた。


「それで・・・どういたしましょうか、カイ様?」

「う~ん、そうだな・・・何か、彼らのやる気を出させるような方法はないか?」

「それは、難しいでしょうなぁ。こればかりは、彼ら自身にやる気になってもらわねば」


 どこか別の方向へと向かってしまいそうな話に、ダミアンがそっと一言差し込んでは話題を戻している。

 ヴェロニカの案を却下したカイではあったが、別に他の方法を思いついている訳ではない。

 彼は腕を組んで頭を悩ませると、助け舟を求めてダミアンへと視線を送る。

 しかし彼もこればかりはどうしようもないと、両手を上に向けては諦めを口にしていた。


「まぁ、それもそうか。そうなるとこちらとしては、彼らがやる気になった時に備えて準備するしかないな・・・この後の構成はどうなっている、ヴェロニカ?」

「は、はい!えぇと・・・そうですね。この後は徐々に敵が強くなっていく予定で、普通のスケルトンだけではなく、スケルトンアーチゃーやスライムの下位種などが配置されていますが・・・」


 ダミアンが口にした諦めに同意したカイは、彼らがそれでもダンジョン探索を続けた場合に備えて準備する事を考える。

 そのために彼はヴェロニカへと、ダンジョンの詳しい構成について尋ねていた。

 カイによって丁寧にフォローされたとはいえ、自らの失敗に若干落ち込んだ様子を見せていたヴェロニカは、その声に慌てて顔を上げると必死にダンジョンの構成を思い出し始める。

 目をきょろきょろと動かしながら、何とか記憶を探りだした彼女が語る内容を、カイはうんうんと頷きながら聞いていた。


「それは数を減らそう。配置する魔物ももっと弱いものに差し替えられるか?」

「はい。それは問題ありません」

「では、そちらは任せる。さて、他に何か出来る事は・・・」


 ヴェロニカが語った魔物配置は、普通の冒険者相手ならば丁度いい段階の上がり方に思える。

 しかし先ほどのクリス達の戦いを見れば、それでは荷が勝ち過ぎるとも思えてもくるだろう。

 カイが口にした難易度の大幅な下方修正に、ヴェロニカは当然とばかりに頷いていた。

 その仕草に任せても大丈夫だと判断したカイは、何か他にも出来る事はないかと顎に手を当てる。


「そうだ!次のエリアには宝箱が設置してあったな、そこにクリスのための武器を用意してやろう」


 クリス達が苦戦した一番の要因は、彼の貧弱な得物にある。

 それならば、それを強化してやればいいとカイは閃いていた。

 丁度都合の良い事に、彼らが次に向かうエリアには宝箱が設置してある。

 今ならば、その中身を変更する事も可能だろう。

 カイは早速、入力端末へと指を伸ばす。


「そこに例の剣を?」

「例の剣?あぁ、ミスリルソードの事か。いやあれは、やはり最後に取っておきたい。そうなると、ここには何を入れるべきか・・・?鉄製の片手剣でも・・・いや、それだと最後の喜びが薄れるか?」


 カイが始めた作業に、ダミアンが後ろから口を挟む。

 彼はそこに入れるアイテムを、今回用意した目玉の品かと勘繰るが、カイはそれを笑って否定する。

 予定とは大分違う事態とはいえど、折角用意した品をここで使ってしまうのは惜しい。

 カイは宝箱に入れる武器を考えては、頭を悩ませていた。


「そうだ、あれがあったな」


 最後に手に入る自慢の逸品への感動を損なわせたくないカイは、丁度いいアイテムの存在を思い出して、それを宝箱へと配置する。

 それは今回のダンジョンのために、不要だと倉庫へと放り込まれたアイテム。

 スケルトンの標準装備、錆びた片手剣であった。


「ほほぅ、それを再利用なされますか」

「新しく作ると魔力の消費も馬鹿にならないからな。こんなものでも、木の棒よりは大分ましだろう」


 カイの選択に、ダミアンは感心した声を漏らしていた。

 魔力が乏しい今のダンジョンでは、鉄の剣一つ作るのにも苦労する。

 そう思えば、廃品を再利用しようというカイの考えは中々理に適ったものだろう。

 それを使って戦う事になる、クリスの苦労を考えなければ。


「カイ様、こちらも終わりました」

「そうか、ご苦労」

「後はボスの構成をどうするかを相談したいのですが・・・」

「あぁ、それは後回しでもいいだろう。彼らがそこまで辿りつくかも分からないからな」


 宝箱にちゃんと錆びた剣が入っているのかと、カイがその中身を確認しているとヴェロニカが声を掛けてくる。

 それは彼女に任せた作業の完了を報告するものだ。

 彼女の声に鷹揚に頷いたカイは、出来る作業はここまでだと席へと戻っていく。


「さて、彼らはどう動くのか・・・」


 ヴェロニカが軽く払った席へと腰を下ろしたカイは、モニターへと視線を向けてクリス達の動きを見守り始める。

 そこにはまだ目覚める様子のないハロルドを心配しているアイリスと、次のエリアへと偵察に向かっているクリスの姿が映っていた。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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