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拝啓、この理不尽な世界  作者: 久遠サタ
1/1

はじまり

今、一つの命が消えようとしている。


病院のベッドで気を失っている青年。彼の名は陽輝。高校2年生。幼い頃から循環器系に病気を患っており、この歳まで生きているのが軽く奇跡とまで言われている。


彼は、運命に抗えない。どうしようもなく、手のつけようがない、残酷で理不尽な世界をこの若さで味わっている。


さぁ…そろそろその消えかかった意識を取り戻す頃か…?

…寝てたのかな…?

げほっ…けほっ


「…輝!…陽輝(はるき)!」


誰かが…僕の名前を呼んでる… 信じられないくらい、重たいまぶたをこじ開けて、声のした方を目で探る。


 げほっ!


陽輝(はるき)!しっかりして…」!


僕の網膜に伝わったのは、涙目の母親の顔。

そして呆気にとられたような顔の医者、看護婦らしき人達。


何で母さんは泣いてるんだ?騒がしい。


きっとまた何かのドキュメンタリー番組でも見たのだろう。


ぐはっ…あぁ…?

そういえば息が苦しい気がする…いや、苦しい。 ふと、胸元を見ると僕の着ている入院着が赤く染まっていた。



「……!」



その寝起きで目にするにはあまりにショッキング過ぎる光景は、僕を無慈悲に引きずり出してくれた。

声が出ない。

あぁ…そうだった。思い出したよ。


…ぼくは死ぬんだ。


どんなびょう気だったかな?

…思い出そうにもあたまがうごかない…

 

どうでもいい。


…あぁくるしい…おもうようにいきができない…


…また…眠くなってきたな…


陽輝(はるき)…」

かあさんのなきそうなこえ。

「母さん…泣かないで。」


そういったつもりだけど、もうだめだ。

あたまがぼーっとする…


…なんにもできなかったなぁ…


からだからちからがぬけていくのがわかった。


どんどん、いしきが…おちていく。


()()()()()()()()()()()()




――(あっ…ヤバいかも。やっちゃった…)――




…ん、まぶ…しい…

今まで浴びたことのない量の日光にまぶたをくすぐられ、僕は目を覚まし、体を起こした。


「……!」

声が出なかったのは、目の前に広がる光景に覚えが無かったから。病気のせいではない。


…僕が寝ていたのは真っ白な棺桶の中らしい。

僕の他にも真っ赤な花がたくさん詰められていて、まるで、僕に寄り添っていてくれたみたいだった。


棺桶の外は白を基調とした造り、綺麗な花、そして繊細なステンドグラスから覗く眩しい光。

…教会。だろうか?


僕の近所に教会なんてあっただろうか…

全く見覚えがないぞ…


…とりあえずこの棺桶から出よう。このままではまるで死人かドラキュラだ。



「…あ…れ…?」



体を起こそうとしたが、何の前触れのない急な頭痛に襲われ、もう一度倒れた。

そして自分の《最後の瞬間》が、鮮明に頭の中に溢れてきた。


「あぁ…あぁ…?」


ズキズキと響くような痛みと、僕が朽ちていくビジョンが頭を巡っている。

そうだ…そうだ。


()()()()()


そう。目を瞑ろうが、首を横に振ろうが現実は容赦なく僕を押しつぶそうとしてくる。


しばらく苦悶したが、ようやく痛みが引いた。


「あはは…」


何が可笑しいのだろう。乾いた笑みが出た自分の口を縫い付けたくなる。

それからしばし、僕をくすぐる日光と睨み合う。


「あぁ…」


気がつくと泣いていた。

何もできなかった。幼い頃から病弱、沢山の人に迷惑をかけた。母親に、数少ない友人。

むしろ死んでよかった。という思いさえ芽生えた。

思い出す度、僕の中に潜む何かが僕を突き破って出て来そうになる。


頰を伝う涙は、次第に大きくなり、僕は声を出して泣いた。こんなに泣いたのはいつぶりだろうか。

次第に、何が悲しいのかわからなくなるまで泣いた。


何とか自分をコントロールして、気持ちを落ち着かせる。こんな時は深呼吸。母さんが教えてくれた。


鼓動が落ち着いたのを確認し、目をゆっくり開けると目の前に()があった。


「ハルキくんよね…?」


うわっ!

ビックリした!…誰?


小麦色の長髪、白い肌、深い青の目。

美人of美人さんである。


「…私の顔に何かついてる?」


おっと。まじまじと見つめてしまった。


「いえ…えっと…どちら様で?」


「うふ!自己紹介ね!私は《生を司る女神・ステラ》。よろしくね!」


「…は?」

これが常人の反応だろ?僕は生憎、こういう場面での適切な反応を教わった経験は無い。

それに、可愛くても言っても良いことと悪いことはある。

僕を騙そうなんて…(笑)なんて悪趣味な…


「…そりゃそうよね。なかなかこの状況をすんなり理解できた子は見たことないなぁ…」


何かのイタズラであろうか?いや、そうであってくれ。

僕の淡い期待をぶち壊して女神?は続ける。


「まぁいいや。さっき頭の中に《最後の瞬間》が流れたと思うけど…ハルキくん。あなたは…」

「死んでましたね。」

「…」


女神様は困惑していた。


「…死を受け入れてくれたのは嬉しいけど…女神のセリフを盗るのはどうかと思うな〜」


「あはは〜」と女神は続ける。この人ホントに女神なのだろうか。全く威厳を感じない。


「まぁ…ハルキくんを死に追いやったのは私なんだけどね…(ボソッ)」


ん?今大事な何かを聞き逃した気がする。

僕の聞き間違いかもしれない。でも念のため聞いておこう。


「…今何か言いま…」

「いっ!いや〜、今日…え〜と…あっ!そうそう、今日のめ◯ましじゃんけん負けちゃったわ〜!つ、ツイてないわ〜!」


デジャヴ。こんなあからさまな焦り方する人初めて見たよ。ちなみに僕はZ◯P!派である。


「墓穴を掘りましたね、女神様。言い逃れ出来ませんよ。さぁ、何て言ったんですか?」

「ぐぬぬ…」


女神様の顔がみるみる内に曇っていく。

しまいには泣き始めた。


「えぇーん!すびっ!ハルキぐんひどいよぉー!」


ホントに威厳が無いなこの人。


「びぇぇぇぇえん!」


しかも泣き方が汚い上にうるさい!

むむむ…このままでは聞き出せないぞ…


「そんな鼻炎になりそうな声で泣かないでくださいよ。…わかりました。怒らないので何て言ったか教えてください。」


「うぅ…ホントに…?」


なぜ僕は子供をなだめる母親のような話を女神にしているのだろう。

当の女神は口ごもった後にようやく口を開いた。


「実はね…あなたが死に至ったのは私の凡ミスなの。」


「は?」

この後、彼はとんでもない事実を知る。

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