第4話『馬車の小道』
少女にユキという名前をつけ仲間に加え、おっさんは草原に廃棄された自動で動く荷車を手に入れた。移動手段を確保したおっさん達は、馬車が通ったであろう道を発見し、人の住む場所を探して旅立つのであった・・・
ガタガタガタガタ・・・
少し大きめの荷車の音が耳に流れ込む。
あれから三日、おっさん達は荷車に揺られて馬車が通ったであろう小道を進んでいる。
『おじさん、この果物も美味しいですよ!』
ユキは、鮮やかな赤色をしたリンゴのような果物を差し出してきた。荷車で道を進んでいる途中、熟れた果実が実った木を見つけたので、収穫したのだ。幸いなことに、コンビニの袋は大きめだったので、果実を多めに入れることができた。これで数日分の食料はどうにかなる。が・・・
『なかなか着かないな・・・』
3日も進んだのに人の住む場所は一つも見ていない。見えるのは文字通り草原のみ。どんだけ広いんだ、この草原は。
そう思った矢先
『おじさん!あそこに煙が立ち上ってますよ!』
これにはおっさんも声を上げる。
『本当か!どこだ?』
『あそこです!』
ユキが指差した先には煙突屋根の家がたくさん連なっていた。
おっさんはその民家へ荷車を走らせた。
おっさんは村の入り口近くの所に荷車を置き。万が一のことを考えてボタン付きの箱は取り外し(取れたが問題なく走れた)、荷台の下に隠しておいた。
見た感じ煉瓦造りの中世風の小さな村、というのが率直的な感想だ。人通りも多く、市場もある、とても美しい村だ。
『綺麗な建物ですね〜』
少女が石畳の道を歩きながら周りを興味深そうに見渡している。・・・のだが、
ヒソヒソ・・・
なんか道行く人々がおっさんの方を見て、いや、どちらかといえばおっさんとユキを見てコソコソ話をしている。なんなんだ?一体・・・。
そんなことを考えていたら、
『おい!そこのお前!!お前はそこの少女を虐待してるらしいじゃないか!!衛兵の詰所まで来てもらうぞ!!』
いきなり鉄の鎧を着込んだ兵士らしき人物に絡まれた。
『は?それは一体どーーー』
『話は向こうで聞く!ここでは通行人の邪魔になるからな!・・・そこのお嬢さん、ちょっと話を聞きたいから一緒に来てくれるかな?』
『えっ?えっ?おじさん?』
ユキは困惑した、怯えた表情でこちらを見る。
それにしてもこの兵士、鬼の形相でおっさんに怒鳴りつけたと思ったら、ユキに話しかける時だけすごいやんわりとした優しい声で問いかけてやがる!いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない!なぜおっさんは今この兵士に絡まれているんだ!?
ガチャリ
おっさんは抵抗する間も無く、手錠をはめられ、詰め所へ連行された。
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バチンッ
『痛って!!』
尋問室のような場所で、おっさんはムチのようなもので打たれ、自白を強要されていた。
兵士の話によればこうだ。
1,変な格好(裕福そうな服を着た)中年の男性がボロボロの少女を連れていた(事実)
2,少女は男に対して怯えていた(勘違い)
3,少女が中年に奴隷にされていると思った(勘違い)
4,少女が可愛そうだと思い、通報した(ここが問題)
ということらしい。
なんだそれっ!勘違いだとしても濡れ衣じゃねえか!!
『だから!!おっさんはそんなことしてない!!それは濡れ衣だ!!』
おっさんは必死に無実を主張する。
『嘘をつけ!!!』
そして兵士はそんな言葉など信じないという態度を示してさらにムチを振るう。
バチンッ
『ッ・・・』
ユキはというと、別の部屋で事情聴取を受けているらしい。そもそも、ユキは奴隷じゃなくて捨て子だっての!根本的な間違ってるんだよ!!!
それから数十分後・・・。尋問室の扉の外から足音が聞こえてきてた。
ガチャ
扉が開き、1人の男性が入ってきてさっきから俺にムチを振るっている兵士に話しかける。
『おい、ガイル!今すぐにその男への尋問を止めろ!』
その言葉に疑問を感じたのか俺をムチでいたぶりやがった兵士が反論する。
『はあ!?いまは尋問して自白させようとしてるんだぞ!なぜやめなければならない!』
その反論に扉から入ってきた男も返す
『そいつは犯罪者じゃなくて善人だからだよ』
おっさんの耳がおかしくなければ男はそう言っていた。
次回「冤罪」