第3話『テントの中にあるもの』
おっさんは、森の中で捨て子の少女に出会い、食料とユキという名を与えた。そして森をでて、その先に広がっていたのは暖かい風が心地よい大草原。そしておっさんは遠い草むらにテントのようなものを見つけたのだが、いざ近くに行って見てみるとそれはキャラバンの荷車だった。おっさんは荷車のテントの中を覗くのだが、そこには・・・。
おっさんは荷台のカーテンを少し開き、中を覗く。
『!?』
そこには・・・
白骨化した、人間の死体があった。
『おいおいおい・・・』
さすがにこれにはおっさんも恐怖を受けたが、放置するわけにもいかない。
『ユキは・・・見ていないな?・・・よし』
さすがにユキが見てしまうと精神衛生上よくない。おっさんはそう思いながら地面の少し窪んだところに骨を置き、粉々に砕いてから雑草を抜いて上から被せた。
『おじさん、何してるの?』
ギクッ
『い、いやぁ、実は、この捨てられた荷車を再利用しようと思ってな?だから腐った食べ物とかを下ろして地面に埋めてたんだよ・・・』
ということにしておこう。もしも腐りかけの死体だったら見た瞬間失神するところだった、危ない危ない。すまんが、この荷車を借りるぞ、いまは亡き白骨死体よ。
『さて、じゃあこの荷車を使いながら人が住んでいるところを探すか』
荷車があれば道中役に立つ物が落ちていた時の貯蔵や重いものを運ぶのに役に立つだろう。
『でもおじさん、これどうやって動かすの?』
ユキは首を傾げる。言われてみればそうだ、この荷車には持ち手がない。持ち手の代わりに可動式の車輪がくっついている。見た目は完全に三輪車だ。あれ?ユキの姿がない。
『おじさ〜ん、荷車の中にボタンがありますよ!』
子供ってすごいな、めちゃくちゃ好奇心旺盛だ。まあ、おっさんが子供の頃はスーファミを家に引きこもってやるぐらい非活発的だったが・・・。
『ボタン?どこだ?』
おっさんは荷台の中にはいり、ユキの方に近づく。
『ここです』
ユキの指差す先には小さな宝石の埋め込まれたスイッチのようなものがあり、少し大きめの箱みたいなのにくっついている。そしてその箱はちょうど後輪の車軸の真上。
『これってまさか・・・』
そう思ってスイッチを押して観る。
カチッ
小気味いい音とともにスイッチがはいり、スイッチにくっついていた石が光り始める、と同時に
ガタン・・・ガタガタガタガタ
後輪の車輪が回転し始めた。やはりか!
この荷車は想像以上に良いものらしい。前方にあるハンドルのようなもので、車体の旋回ができるようだ。そしてスイッチをもう一度押すと、スイッチの宝石の光が消えて、車輪の回転は止まった。
『おい、見たかユキ!・・・?』
あれ?ユキがなんか倒れてる。まさかおっさんがいきなり荷車を動かしたもんだから驚いて気絶した!?・・・と思った矢先。
『!?』バッ『あ、あれ?私』
やはり気絶してたか
『ユキ、朗報だ、これからはおっさん達自身で歩かなくて済みそうだ』
『えっ?それは一体どういう・・・』
ユキはいきなり何を言われているのか分からないという表情でいた。
『どうやら、この荷車はおっさん達が引っ張らなくても勝手に動くらしい』
『えっ、勝手に?』
『まあ、見てな』
カチッ ガタガタガタガタ
『えっ、えええええええぇぇぇぇ!?』
ユキは驚くような声を上げた。まあ驚くのも無理はないか。とりあえず、これでおっさん達は疲れないで移動できる。
しかし、おっさんは荷台の中を見渡して気づいた。この荷車には宝石付きスイッチの動力箱以外は何も載っていない。いわばすっからかんだ。つまり結論から言って食料がない。さすがにサラミとチーズと水だけではおっさんだけならともかく、ユキは耐えられないだろう。
これはどうにかしないといけないな・・・。
そんなことを考えながら荷車に揺られて進んでいると、草むらの先に少し太めの道を見つける。
『ここ、荷車の跡がいっぱいついてますよ』
ユキがハンドルを握っているおっさんの横から言う。つまり、この道は誰かが頻繁に通行しているわけであり、その先には、人が住んでいる場所がある可能性が高いということだ。
『よし、じゃあこの道沿いにすすむか』
『はい!』
そう言っておっさんは荷車のハンドルをきるのであった・・・
次回「馬車の小道」
おっさんの実年齢は低いが、心は完全におっさんである。