第2話『大草原』
おっさんはコンビニ帰りに異世界に飛ばされた。そこは、木々の覆いしげる深い森。
その森の中で、おっさんは一人の少女と出会う。
しかし、その少女は捨て子だった・・・
『わたし、捨てられたから・・・』
おっさんはその言葉に絶句した。そう、おっさんが異世界に来て初めて出会った人間は、捨て子だったのである。
少女は今にも泣きそうな顔をしている。
『すまん、悪いことを聞いたな』
『・・・』
少しの沈黙が流れ、少女も落ち着いたのか、立ち上がる。
とりあえずこのままずっと立ち止まっているわけにもいかないので、少女に付いてくるようにジェスチャーして、森の外へ歩き始める。
あれから15分ぐらい歩いただろうか、木々の隙間から強い光が差し込む出口が見える。
『やっと出口か』
おっさんはそう呟きながら、その隙間をくぐった。
『まぶしっ!!』
強い光に目が慣れていなかったのか、とっさに目を瞑ってしまう。
サアアアァァァ・・・
暖かい風が肌にあたり、おっさんは目を開く。
『おおぉ・・・』
そこには青々と草が覆いしげる広大な草原が広がっていた。おっさん達は、やっと森の外へ出られたのだ。
ふと、後ろからついてきた少女が聞いてきた。
『おじさんは、一体どこに行くんですか?』
そういえばアテはないな。しかしおっさんはおろか、この世界に住んでいるであろう少女でさえ、この場所には詳しくない。
・・・うん?
なんか、遠くにテントみたいなものが見える。もしかすると、あそこに人がいるかもしれない。行ってみるか。
そう思い、少女を呼ぼうとしたが・・・よく考えたら名前を聞いていなかったな・・・。この際だから聞いてみるか。
『おい、お前の名前は何だ?』
『えっと・・・名前は・・・ありません』
少女は目に涙を浮かべた。まあ、捨てられたんだから、家族に何かしらの理由で嫌がられていたわけだし、名前がなくてもおかしくはないか。しかし、流石に名前が無いのは不便だな・・・。
『じゃあ、おっさんが名前をつけてやるよ』
『い、いいん・・・ですか?』
『あぁ、名前が無いと、呼ぶ時に不便だからな』
さて、じゃあどうするか・・・。こう見えてもおっさんのネーミングセンスは皆無に近い。長い名前はやめておいたほうがいいだろう。
そうだな、幸福の幸と書いて、ユキ・・・そうだ、ユキだ!
『じゃあ、これからお前の名前はユキだ。よろしくな、ユキ』
『!!!・・・はい!よろしくお願いします!』
あ、笑った。さっきまでは悲しそうな顔をしていたはずだが・・・、よほど嬉しかったのだろう。
『なあユキ、あっちにテントみたいなものがあるのが見えるか?』
おっさんはテントらしき方向を指差す。ユキもその方向を見て、答える。
『はい、でも、形が変なかんじです。ほんとにテントなんですか?』
さっきまで中々口を開かなかったのに、元気になっもんだ。・・・体は痩せてボレボロだが。
だが、おっさんは視力がよくないから、ぼやけてよくわからない。これは近くに行って確認するしかないな・・・。
『ユキ、ついてきてくれ。あのテントを見に行こう』
『え?あ、は、はい!』
『これは・・・』
おっさん達はテントらしき物体の近くまで来たのだが、そこにあったのはただのテントではなかった。
『お、おじさん、これ、キャラバンの荷車ですよ・・・』
キャラバンの荷車・・・見た感じはかなり古く、捨てられたものだろう、荷車の上にテントが乗っかっている。元が良いものだったのか、どこも壊れたようなところはない。
だがなにかおかしい。荷台の両端に車輪があるのはもちろんだが、前方に肝心な持ち手がない。その代わりに、可動式の車輪がついている。どうやって動かすんだ?これ。
もしかすると荷台の中に何が秘密があるのかもしれない。見に行ってみるか。
『おっさんは荷台のなかを見てくる。ユキはここで待っていてくれ』
『はい・・・』
中がどうなっているかわからないので、一応ユキは来ないように指示しておく。
おっさんは荷台のテントのカーテンを少し開き、中を覗く。
『!?』
そこには・・・
次回「テントの中にあるもの」
最近おっさんは、酒の肴を自分で作ることにハマっている。