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最終決戦

これが彼女がついた嘘なら全てにおいて無意味な結果で、作戦自体が終わりだがこの動揺を見る限り、俺が手に入れた情報全てが図星なんだろう。


「これはお前の姉ちゃんに殺される前に集めたデータだ、何を言ってるのかわからないのは分かってる、俺は死んで生き返っての繰り返しでこの呪われた金曜日を何日も何日も歩んできたんだ、この呪われた金曜日から抜け出すにはどうしてもお前の協力が必要なんだ、


俺が合図を出したら俺とお前の姉ちゃんがいるこの部屋に入ってきて欲しい」


「意味わかんないんだけど…死んで生き返った、は?は?」


相当彼女はパニくっていた、少し虚ろな目になっているところが姉そっくりだったが、とにかく手に入れた情報を全て言う事によって注意を引き付ける効果はあったらしい。


「とにかくだ、お前がもし今日ここで待ち伏せとかなきゃ、結奈は警察に間違いなく逮捕される、逮捕されればお前は孤独になるし殺し方次第じゃ何年も刑務所から出られないはずだ、もしそれが嫌なら意味が分からなくてもとにかく来い、絶対にこい」


俺はそう言い放ち、その場から離れる、もう少し彼女とは話し合いたかったが、もう八時三十分前である、作戦以外の事は全て段取り通りにしておきたい、遅刻は無しだ。


「ちょ、ちょっと待ってって!あんたストーカーなの?何よ逮捕されるって…」


「自分の眼で確かめてみろ!来いよ、絶対に!」


後ろにいる少女の方を振り向かず、教室にへと戻る。




俺が教室に着いた時には先生が教卓の後ろで立っていた、時間はギリギリというところだ。何とか助かったと嘆息を漏らすと、遠くから物凄い眼光でこちらを睨んでいる少女が一人いる。誰かは言うまでもない、桜田結奈だ…。


そしてその隣には赤井の姿が見えた、何やらコソコソと桜田にしか聞こえない声で耳打ちをしていた。どうやらさっきあった椎名との出来事は彼女が話してくれたのだろう。


俺の代わりとして…。


席につくまで桜田はずっとこちらを睨んでいた、あまりの眼力に思わず眼を逸らしてしまいたかったが、一生懸命踏ん張る事が出来た、そして彼女は決して俺の眼から目線を外すことは無い。


だが目線を逸らしたたかったのは決して恐怖からではない、怒りに満ちた表情でこちらを睨む彼女を見て笑いを堪えるのに精一杯だったからだ、全ては計画通りにある。


時間に気付いた赤井は俺と桜田を見回した後、自分の席にへと戻っていく。


桜田も先生が教卓に立っているのを確認すると、椅子に座り本を取り出す事無く真っ直ぐを見ていた。


「休み時間理科室に来い…」


彼女の耳元に顔を近づけ囁く、他の誰にも気付かれないような小さい声で。


彼女の頭がピクッと少し揺れ動いた事から察するに、彼女は微かな声に気づく事が出来たのだろう。次の瞬間彼女は後ろを振り向き、またしても物凄い眼光でこちらを睨みつけていた、今にもナイフで殺されそうな勢いだったので、恐怖をのあまり自分の足がプルプルと小刻みに震え始める。だが何としてでも今日立ち向かう必要があった、これは俺と桜田結奈の最終決戦なのである、負ける事は決して許されない。


もしこれで駄目だった場合、俺はもう二度とこの学校には顔を出さない事を決めていた。




一時間目が終わったのはあっという間の事だった、授業が終わると彼女は席を立ち教室を出て行く、呼びかけようとする赤井をも無視し、なりふり構わず出て行った。


急いで俺も後を追おうとしたが、赤井に腕をまたしても掴まれる。


「沢良宜君だっけ?どういう事、結奈とこれから何か話すつもりなの?」


「ああ」


「どう見ても知り合いには見えなかったけど…」


「悪いけど今はそれどころじゃない、話は後だ、気になるんならついてこいよ」


「う、うん」


赤井は納得した様子じゃなかったが、俺の顔から焦りが見えたのか、後をついていく。


桜田を見逃した俺は急いで教室を出て、廊下を見回したが彼女の姿はどこにも見えない。


仕方がないので、赤井の腕を掴んで理科室へ行く道を駆け足で向かうにした。


「ちょ、ちょっと!」


突然腕を掴まれた赤井は驚いた顔でこちらを見ていた、もし彼女がここで理科室じゃなく別の場所に行っていたのだとすると計画は失敗なのである。


何としてでもここで彼女を取り逃す訳にはいかなかった。


彼女を探している中、曲がり角を曲がると、桜色の長髪が目立った女が見えた、恐らくこの色をしているのは桜田以外この学校にはいないだろう。


「あ、結奈」


「隠れろ」


「な、なんで?」


赤井の顔が振り向きざまに桜田に見える位置にいたので、二人で曲がり角になっている柱の物陰に隠れる事にする。


大丈夫だ、桜田は俺達には気づいていない、それどころか向かっている先は理科室へのルートだ。


俺と赤井は桜田が角を曲がるのを確認した後、ゆっくりと彼女が歩いた道を続けて歩いていく。


「何で普通に声かけないの?」


「訳ありなんだよ、赤井凛」


「な、なんで私の下の名前知ってるの?」


「それも訳ありだ」


赤井は終始訳がわからないというような顔でいた。


今はとりあえず彼女には黙って付いて来てもらうしかない、もし椎名が来てなかった時には赤井が代わりの役目を果たす必要があるのだ。




四階まで俺達は何とか桜田にばれずに付いていき、遠目で見るからに桜田が理科室に入る姿は無事確認できた。俺達もその後を追い、理科室に向かう。


すると、足音を察知しベランダから出てきたのが妹の椎名だった、俺と赤井が並んでいるのを遠くから見ている。


彼女は何か言おうとしていたので俺は急いで口元に指を当て、「シー」と小声で言った、多分椎名には聞こえていないだろうがある程度は何が言いたいか伝わるだろう。


椎名が喋れば声を聞き取って理科室に入っている結奈にばれるのである。


俺と赤井は椎名を連れて、再び誰もいないベランダに集まる。


「悪いんだけどここで待っててくれないか?」


「なんでよ」


「私達二人で待ってるの?」


赤井と椎名は案の定驚いていた、それもそのはず自分から呼び出しておいて待ってくれといったもんだからな。


「いいか、チャイムが鳴っても絶対ここを離れないでくれ、それと俺がなんらかの形で合図をだす、そうしたら急いで教室に入ってくれ」


「合図だすって、何でまたそんな回りくどいことしなきゃいけないの、私達が入れば刺されることも…」


「そこなんだよ、お前達ともし一緒にこの部屋を入れば必ず彼女は俺を刺さない、それじゃあ意味がないんだ、彼女は日を改めて俺を殺しに来る。だったらここで解決をしなきゃならないんだ、わかってくれ」


「それはそうだけど…」


椎名は戸惑った顔で考えていた、まもなく姉が一人の男を殺す、そんな事信じたくないだろう。


だが、彼女も俺を殺す理由としての心当たりがあるはずだ。


結奈が相当の男嫌いということを、心当たりがあるからこそ、何ともならないからこそここは俺に任せて欲しいのだ。


もし俺を殺したい程の男嫌いという事実だと今日理科室で知ったら、今からでも椎名は結奈のために力になって相談に乗らなければならないだろう。


「わからなくてもいい、とりあえずここで待って合図を出したら入ってきてくれ」


「ちょっ!」


赤井と椎名は俺の手を掴もうと腕を伸ばすが、俺は振り払い、桜田が入っている理科室の部屋へと一人で入り込む。


「よう」


「初めまして」


これが第一声だった、彼女はいきなり俺を刺しにはこない。


「どういうつもりですか?椎名とあなたはどういう関係なんですか?」


やはりいきなり刺しにこないのは椎名の事でだ、赤井をあの場所に呼んだのは結奈に報告をしてくれると踏んだからだった。


おまけに彼女は予想もできなかったくらいに怒った顔である、あまり興奮させるのはよくないが、1限目が終わってすぐに理科室に来たのもこの激怒が原因なのだろう。


「椎名と俺は友達でも何でもない」


「ええ、凛から全て聞きました、あなた私と椎名とは幼馴染って嘘をついたようですね」


「ああ、そうだ」


「何が目的ですか」


「お前と話がしたい、ただそれだけだ」


彼女の目は本来の目から乾ききった虚ろな目にへと変色し、今にでも俺を殺しに来てもおかしくはなさそうである。


「話とは?」


「お前に聞きたいことがあってな、でもその前にお前が隠してるナイフ、そいつは悪いけど出してもらっていいか」


彼女の額からは虚をつかれたかのように汗がじわじわと少し溢れ出す。


しばらく間があった、彼女も俺も一歩も動かないし瞬き一つしていない状態である。


すると、彼女は懐から奇形ナイフを取り出した、それを俺に振りかざすか、地面に置くのかはまだわからない。


「どうして分かったのかは知りませんが、知られた以上…」


「言葉には気をつけろ、外には妹がいるぞ」


結奈は驚いた表情で体を後ろへと引く、彼女がもし手に持ったナイフで俺を殺すということは妹に第一発見者として見つかる事を意味するからだ。


彼女は額から汗を流していた、別に今日は暑くない、むしろ寒いはずだ。


そして彼女は奇形ナイフを持った右手はぶるぶると震え始め、ナイフを地面に落とす。


彼女は何も言わずこちらをじーっと見ている、何を企んでいるのかは俺にはさっぱりだったが。


「話すらせずに殺されるのはたまったもんじゃないからな、悪いけどお前の妹椎名を呼ばせてもらったよ」


「………」


返事はない、彼女は警戒する様子を変えることなく、まだ俺を睨むように見ている。


「警戒はしなくていい、お前にいくつか質問をしたいだけだ」


「質問ですって?」


「ああ」


俺はすうーっと息を吸い、身体中に溜まっていた息を全て吐き出す。


この質問は別に桜田に対してだけの質問じゃない、俺自体桜田に対して感じていた率直な感情である。そして俺に感じてるという事は桜田自体も恐らくそれを感じ取っているのではないか。だからこそそれを確かめるために桜田に聞く必要がある。


「なあ桜田、お前にとって恐怖ってなんだ?」


これは桜田にした最後の質問だった、前回は両親についての質問をした時点で応えてくれずに殺されたが、今回の質問は少し言葉を変えたみた。


つまりは彼女にとっての恐怖は両親についてだと思ったからだ、彼女自身両親についてのトラウマは計り知れないものなのだろう、もしかしたらまた殺される可能性もある。


しかし、そのために俺のバッグには赤井と椎名がいた、これは最後の賭けだ、もし彼女がまたも無言で俺を殺すなら全てが終わる。


桜田は俺の目を見ていた、さっきみたいに睨みつける訳じゃなく、まるで様子を窺うかのように。俺の目からゆっくりと視線を外すと彼女は落ちたナイフに視線を変える、そして振るわせた腕を伸ばしてナイフを取ろうとしていた。


その伸びる手は凄くゆっくりで、このまま待っても恐らく一分くらい経つだろう。


彼女にはあのナイフがどこか遠くにあるように見えるのだろうか、なんにせよ伸ばしている間そのナイフを振るうべきか葛藤があるはずだ。


だったら…彼女が迷ってるっていうなら…答えがまだ分かっていないっていうなら…。


本当に正しい答えを俺が教えるべきじゃないのか。


俺は走った、わずか数メートルしか離れてない桜田の元へと、そして飛び込んだ、桜田の震えている体を力強く抱きしめる、それは妹の明日香にした時と全く同じ行為だった。


彼女が俺をを知ってもらうのに一番最適だと思ったのは、温もりを知ることだと思った。


それが正しい判断なのかどうかは分からなかったが、桜田の震えた体は一瞬にして止まった。その体は一切の力が入っておらずまるでセミの抜け殻みたいに。


俺は桜田の今の表情が分からない、彼女はどんな顔をしているのだろう。


「はっ、離して…離して!離して!離して!離して!離して!離して!離して!離して!離して!離して!」


彼女は精一杯俺の体の中でもがいていた、だが女という事もあって力負けする事はない。


「は、離さない!お前は迷ってるんだろ、迷うくらいなら人なんて殺すんじゃねえよ!」


「離せ変態!気持ち悪い!離せ!」


「だから離さねえよ!こっちだって生きてんだよ!てめえの勝手な都合で人の人生台無しにしてんじゃねえ、男だからなんだ?性別が違っても俺はお前と同じ人間なんだよ!俺だってな、お前と一緒で妹だっているし家族だっているんだよ!」


俺は更に彼女の体をきつく締めた、一応平均的な身長で平均的な体重をした男子校生だ。女子高生相手なら抜け出せないどころか、むしろきついだろう、だが彼女に分かってもらうにはこうするしかなかった。


「分かったような口利かないでよ!私はお父さんもお母さんもいないの!」


桜田は教室に響くくらいの怒声で叫んだ、そして彼女は俺の胸元で足掻くのは辞め、涙を流し始めた。彼女が抵抗するのをやめたのを確認すると俺も抱き締めるのを辞めようとたが、その腕が巻きついた腕が解かれる前に後ろではガラガラと扉の開く音がした。


「な、な、な、な…」


「え?」


後ろを振り向くとそこには苦笑いで笑う赤井と、驚いて何も言えないといった表情で俺と桜田をみている椎名が立っている。


これってもしかして勘違いされるんじゃ…。


「どべぶっ!!げほっげほっ…」


みぞを桜田椎名に一発思いっきり殴られ、その場で咳き込んでいた。


精一杯の力で椎名のほうを見ると、姉である結奈を椎名が慰めてる最中であった。


結奈の顔は真っ赤に染まり、涙は収まることなく開放された両方の手の甲で涙を拭いている。状況を大体察した俺はとりあえず、落ちているナイフだけを自分の懐にへと仕舞い込み、慰めている椎名達のほうに声をかける。


「あ、あのな…」


「うるさい!この変態!私の姉にこれ以上触れさせるか!」


言葉の全てが妹の明日香に見えてきた、それに加えて空手全国優勝という肩書きを持っているのだ、こいつが妹じゃなくて良かったと深く思えた。


ていうか桜田はナイフを持っていたんだ、こうでもしなきゃ俺が刺されて本気で終わってたつうの。なんだったら、ナイフが落ちているのを妹に見られて良かったが、彼女は最後抵抗する事なく涙を流したのだった、少しでも俺の意思が届いてたら良いのだが。


「いいの椎名ごめんね、凛もごめんなさい、少しだけ沢良宜君と二人きりにさせてくれないかしら」


「………」


赤井は黙っていた、普段はよく喋る女の子だったが大体の状況を察したのだろう。

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