友は来なかった(ただしその妹が来た)
今日は朝から魔王の城の跡地の草むしりである。
もう俺の家なのでこれからは元勇者の箱庭とでも呼ぼう。
建築魔法を行使するには建てたい家の広さ分の土地と、家の材料になる土が必要になる。
地下室付きの平屋であれば建てたい家の広さ分、むき出しの大地があれば何とかなると聞いている。
俺たちは軍手&作業着でひたすら草むしりをしていた。
監督役は魔剣ブレイカーだ。
地脈を見て家を建てるのにいい場所を探して貰い、その周辺の草を彼の指示でむしっていく。
「勇者どの。ワシを奉る祠はこの辺り、家はあの辺りがいいと思いますぞ」
「じゃあこのあたりを先にむしっておくか」
「剣さんのおうちも作るの?」
「ああ。この場所の守り神になってもらうから、俺たちで立派な家を建ててやろうな」
魔剣の祠は急がなくてもいいので魔法建築ではなく普通に俺たちで作る予定だ。
その方が耐久性も高い。
魔法建築は建てるのも早いが劣化も早いのだ。
「結構暑いよー」
「帽子を買うか夜に作業するかだな」
「夜は魔物はもういないけど肉食獣が出るから危険だよ」
魔物がいなくなったら安全ってわけでもないのか。
午前いっぱいで魔剣の祠分と、俺たちの家のひと部屋分ほど草がむしれた。
今はファリアが持っていたテントで昼休憩を取っているが、この土地は岩と雑草まみれで木が1本もない。
「なぁ、ブリンガー。木を植えたいんだけど何がいいと思う?」
「それならば幸運の種を植えて精霊の涙を少しかけて置けばいいぞ。枝ができたら折って植えてを繰り返せば森にしてもよし、街路樹にしてもよしじゃ」
家の事しか考えてなかったけど、都市1つ分全部自由にしていいんだよな。
「とりあえず俺たちの家の側に1本植えるか」
剣の祠と俺たちの家の間くらいの場所に種を植え、精霊の涙を少しかける。
「おおーっ一瞬で芽吹いた」
クエストアイテムの残りをなんとなく残していただけなのだが、こんな風に役に立つとは思わなかった。
「数ヵ月で木漏れ日で休めるくらいに成長しますぞ」
精霊の涙の効果がだいたい数ヵ月なので、そこから先は普通の木と変わらないペースで成長するらしい。
ステータスアップ効果がある種は珍しいけれど、実は普通に美味しいと説明された。
「今日は暑いけどこんな日に木を植えて大丈夫なの?」
「精霊の加護も大地の力もバッチリですから問題ないですぞ。ただ勇者殿はもう帰った方がいいと思いますぞ」
「そうか。じゃあ帰…」
「ルーーートーーーーー!!」
転移の靴を取り出そうとした瞬間にややこしいヤツが出てきた。
「俺が手紙を送ったのは兄貴のはずだが?」
「ルトの家を建てるなんて兄貴にまかせられるワケないじゃない。だって将来ボクたちの愛の巣になる予定でしょ?」
「なんでお前と愛を育まなきゃいけないんだ」
飛び付いてきた友人の妹をひっぺがし、げんなりして俺は呟いた。
「幼馴染みの妹って結構いいポジションだと思うんだけどなー」
「カナリア。お前は彼氏がいただろ?」
「別れた」
フリーになって寂しかったところに俺の手紙を見つけて、幼馴染みと結婚もアリよねーっと勢いで転移してきたらしい。
「ルトのお嫁さんは私だから」
ファリアが俺の腕を取り鬼の形相でカナリアを睨んだ。
「ルトがこんなロリコン相手にするわけないじゃない」
反対側の腕をカナリアが掴む。
ちなみにカナリアとファリアは同じくらいの年齢だが、カナリアはかなり成長がいい方なので胸も腰もむっちりしている。
兄と同じオレンジっぽい金髪の巻き毛をポニーテールで纏めていて、見えないけど優秀な建築魔法士だ。
「俺はまだ結婚なんかしない!」
腕を振り払って逃げた。
そもそものきっかけもキャシーとかいうブスが言い寄ってきたのが原因だった。
モテ期ってやつなのかもしれないけど、だとしたらずいぶん迷惑な方向にモテてるよな。
「あっ逃げた!」
魔剣に帰れと言われる炎天下で追いかけっこをして、俺たちは3人仲良くぶっ倒れた。
兄のバードが転移魔法で様子を見に来なかったら命が危なかったかもしれない。
パーティをクビになるブームに乗っかろうとしたけど上手く行かなかったのでハーレムものにしようと思う。
(´・ω・`)