地下にコボルトの村が出来ていた件
室内には泥で出来た仕切りがたくさんできていて、 そこが家の代わりになっているようだ。
コボルトたちは軒並み小柄で、ミューゼルよりもちょっと小さいくらいだった。
通常ならもう少しイメージだが、環境が悪いので大きくなれないのだろう。
「見るところ人間に見えるが、魔王様はどうなってしまったのだ?」
「既にこの世を去っている。今は俺がこの地の主だ」
「そうか…ならば主よ。我々に仕事をくれまいか?」
奴隷コボルトは魔族の雑用を任される、手先は器用だが戦闘力のない種族だ。
言語を理解し会話もできて、人間で例えれば10歳程度の知能がある。
「悪いが今すぐの仕事は無いんだ。ただ、うちの温泉が止まったので様子を見に来た」
「温泉?水?…心当たりがある」
ボスらしきコボルトに案内された場所は湯の湧き出した壁だった。
「こちら側の壁は我々でも壊せるのでこうして住処を広げていたのだか、湯が出てきて困っておったのだ」
ロクな道具も無い中でコボルトたちはなんとか生き延びるために色々頑張っているのだという。
世話係だった魔族が残した道具があったので、なんとか穴を広げたり隣の餌オーク部屋側に小さな穴を開け餌オークを食べたり、本来は観葉植物だった草を栽培して増やして食べたりしてなんとか過ごしてきたそうだ。
そんな中、ちょっと農地を広げようとしたら温泉が沸きだして、農作物もダメになってしまい途方にくれていたタイミングで俺たちがここに来たというわけだ。
「苦労してるんだな」
「しかし、人でも来てくれてよかった。とにかくプラントを止めてくれないか?」
奴隷コボルトのプラントは3つ。
餌スライムとは違い育つのに時間がかかるらしく、大きなガラス瓶のようなものに成長途中の奴隷コボルトが入っていた。
「結界があって入れないんだ。装置を停止させればこれ以上仲間が増えることがなくなる。頼む!」
頼まれて俺たちは装置を止めた。
成長途中のコボルトはそのまま子供の姿で培養液から目を覚ました。
培養液の瓶は上部に足場があるので、そこに登ってコボルトの脱出を助ける。
装置を止めたのでスライムの時のように勝手に外に出される事はなかった。
しかし結界があるので培養液の瓶を含め一方通行だ。
「この装置は研究しがいがありそうだねー」
ジョニーが目をキラキラさせている。
「最近国がアレだろ?知り合いの研究者を何人か呼んでいいかな?」
「さすがにジョニーの頼みでも…」
のんびり箱庭で隠居する予定だったので俺は断ろうとした。
しかし、カナリアとミューゼルがめっちゃ睨んでくる。研究者って言ったら大体男だもんなー若い男の住人増やせってぼやいてたもんなー…
「…頭がやわらかそうな若者中心、出来れば外見もそこそこいい独身中心のチームなら受け入れてもいいかも」
「うん。ちょうどいい知り合いがいるから早速手紙を出すよ」
カナリアとミューゼルが親指を立ててる。
でもジョニーの知り合いなんだから多分クセが強いぞ?
大丈夫なのか?
しかしこれでコボルトたちにも仕事を回せそうだ。
やって来る学者の世話やこれから出来る温泉の従業員をコボルトたちに任せようと思う。
「コボルトたちよ。近いうちにここを整備したいと思う。天窓の設置と食糧支援を行うから壁を掘るのはやめて欲しい」
俺たちは壊された温泉の水脈を修繕するとその日は地上に戻った。
「それでは登録用の書類はこちらで用意するので、明日にでも確認に来て下さい」
「探索するならアタイを雇ってくれると嬉しいよ」
「私も!また是非ご一緒させて下さい」
受付さん夫婦はダンジョンの続きを探索したくて堪らないみたいだった。
「はい。予定が出来たら連絡しますね」
いっそここに新しいギルドを建てたいとか言いながら受付さんたちは去っていった。
「天窓だけど、兄貴じゃないと丈夫なのは作れないよ」
「まぁ、今のところ俺たちだけだから大丈夫だろ」
バードの別荘の周りに念のため柵を作ってから左右に3個づつの天窓と換気口も1つ設置する。
コボルトをまとめて地上で受け入れたら、ここがコボルトの村になってしまうし、元々巣穴を作って住む種族らしいので今は天窓の設置と空気の通り道を作れば問題ないだろう。
地下を整備すれば温泉施設も作れるし、ダンジョンも調整次第で冒険者を呼べるかもしれない。
農業でもやりながら気ままに暮らしたかったのに観光地の方向で進んでいる。
今なら軌道修正出来るかもしれないけど、どうしたもんだろう…




