王の手紙
ギルド自治区に戻るとファリアがギルドから手紙を預かっていると渡してくれた。
王からの返事だ。
俺はその場で封を切り手紙を読む。
『キャシーとやらに怪しい点は見つからず、世間ではお前が悪者にされている。上層部でもキャシーを危険視する者と取り込まれた者が半々である』
なんとキャシーはこの国の上層部まで取り込み始めていた。
キャシー恐ろしい子…
『お主から勇者の紋章剥奪すべきではという声も上がり旗色は最悪じゃ。だがワシはお主を信じておる。しかし現状何も出来ない。すまぬ』
勇者の紋章の剥奪って…
誰のお陰で魔王が倒せたと思うんだ?
平和の立役者を蔑ろにしやがって!
『最後に、魔王の城の跡地は国土ではなくコバルト殿の私有地となった。何があってもお前が守れる限りそこはお前の物じゃ』
何も出来ないが自分で身を守れる限り居場所は確保できるから頑張れって事か…
『追伸。ワシの権限でお主の連れを冒険者登録出来るようにしておいた。あともう一人特別に登録出来るようにしてある。もうワシが出来る事はこれで最後じゃ』
ファリアを冒険者に出来るということか。
これで俺が低級クエストを取る言い訳が出来たぞ。
でも後1人ってカナリアの事は手紙に書いていないけど…
俺は更に続きを読んで王の意図を察する。
『教会はキャシーを聖女としたぞ』
教会はキャシーに取り込まれ済みかよ!
地鎮祭なんてやらなきゃよかった。
教会なんて知りませんってスタンスにしておけばよかった。
しかし、どこまで取り込まれているかはわからない。
ここはいっそ2人とも受け入れて様子を見てみよう。
そして、冒険者の特別登録枠は俺に偽名を使って新規登録しろという意味だろう。
ルトはよくある愛称なので残すとして『ガルトリウス』という偽名で新規で冒険者登録を行った。
更にミューゼルをリーダーにしたパーティを新規で組む。
カナリアは迷宮管理人の資格でメンバーとして登録できた。
とりあえずここのギルドの受付のお姉さんとカナリア、ミューゼルは信用できると信じてキャシーに関する今回の顛末を改めて説明した。
それは確かになにか裏があると全員の意見は一致した。
「ルトさんの登録は早めに隠しておいてよかったですねー」
勇者を廃業したのでギルドのお姉さんは俺を勇者様と呼ばなくなった。
勇者コバルトは隠れライセンスになっているので、ギルド側から裏切り者が出ない限り俺がここにいることはわからないだろう。
とりあえず箱庭にいる限りは平和なはずだ。