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4-23

砦後方 イアン


 あれから何度か敵の突撃をかわしながらタイミングを計っていた。

 だが、相手もタイミングを計られることが分かっているのだろう。

 先ほどから少しずつタイミングをずらしてきている。

 見た目ほど頭は鈍重ではないらしい。


「くそ……、流石にこのままではいつまで経っても終わらんな」


 私が愚痴をこぼしながら辺りを見回すと、戦況は若干こちらが有利だがそれも一手でひっくり返りそうな危ういものだ。

 それもこれも、私がここで奴に拘束されているからだろう。


「どうにか、相手の隙を……」


 ただ、相手の攻撃は単純だが強力で、恐らく当たればそれでおしまいとなる。

 また、あれだけの巨木を一気になぎ倒すのだから、門など在ってないようなものとなる。

 そんな事を考えていると、また敵は勢いをつけて突進をしてきた。

 それを寸での所で避けるのと同時に、奴の右わきに何度目か分からない突きを出す。


「ぐぅっ!」


 突き出した槍が鎧に当たるような感触がするのと同時に、何かうめき声の様なものが一瞬響いた。

 ただ、槍の穂先には血の跡などは付いていない。


「どういうことだ? こちらの攻撃は恐らく相手の肉に達していない。だが突きを入れた瞬間に相手はうなり声をあげた……、もしかして攻撃が効いている? ならどうやって効いているというのだろう?」


 こちらの攻撃がどうやってか知らないが、相手に効いているとしたら……。

 私は、ある事を閃いたのと同時にこちらに向かって突進を始めた。

 もし考えが合っているのなら……。

 私はそう思って、相手の右わきを突けるように攻撃を避けて、再度槍を突き出す。

 槍を突き刺した瞬間、相手が一瞬動きを止めたのが伝わってきた。


「やはりそうか! こちらの攻撃は効いている!」


 そう、私が昔ディークニクト様から聞いていた話。

 一念岩をも通すというやつだ!

 一点を狙って突き続けた結果、脇の防具が一部破損し始めているのだろう。

 だが、次の瞬間相手も気づいたのだろう、脇の防具が明らかに破損していることに。

 こちらの狙いも理解したのか、奴は右わきを手甲でがっちりと守りを固めてきた。


「さっきから同じところば~かり狙いやがって~。そっちがその気なら~こっちは守ってやるぞ~」

「守るなら守ればいい! こっちは攻略法が分かったのだ。一つと言わず、二つ三つと作ってやるぞ!」

「ぐぬぬぬぬ!」


 こちらが心意気を槍捌きで見せると、巨漢の兵は顔を真っ赤にして怒っているように見えた。


「さぁ! かかってこい!」


 私がそう言うと、巨漢の兵はさらに真っ赤になり、赤黒くなってきた。

 一体何をする気だろうと私が身構えていると、いきなりドシーン! という地響きを立てて倒れてしまった。


「え?」


 一瞬何が起こったのか分からなかった私は、恐る恐る奴に近づく。

 そして、大の字になって倒れている奴を石突で軽く突くが反応がない。

 そう、気絶しているのだ。


「……なんともよく分からない奴だな、だが」


 私は、呟くのと同時に周囲を見回して大声を出した。


「敵大将をこのイアンが生け捕ったぞ!」


 私がそう叫ぶのと同時に、周囲で戦っていた兵たちが一斉に歓声をあげた。

 対して将を失った敵軍は瓦解し、北の方角へと逃げていくのだった。





砦内部 オルビス


 イアンが、どうやら勝ったようだ。

 だが、問題はまだ解決していない。

 何とか今日は生き残ったが、明日は本格的な砦包囲を行ってくるだろう。

 それにせっかく敵の食料を焼いたが、明日以降は街で略奪する奴らを黙ってみていなければならなくなった。


「ネクロス。どうにか対応する方法は無いか?」


 私が今日何度目か分からない同じ質問をすると、彼は頭を悩ませながら地図を見下ろしていた。


「こちらの砦はそこそこ丈夫に作っておりますが、街の方は防壁すら殆どない場所。正直戦をして持つ場所ではないでしょうし、だからと言って今から避難させても間に合うものでもないですからな……」

「また、別動隊を作りますか?」


 ネクロスがあまりに悩み続けるので、イアンが代わりに案を出してきた。

 だが、その提案をネクロスは首を横に振って否定した。


「残念ながら、相手はこちらに別動隊を出す余裕など作らせないでしょう。明日は朝早くにこちらの包囲を完成させ、攻撃を仕掛けてきますから……」


 そこまで言うと、ネクロスは考え込み始めた。

 何かを思いついたのか、彼は先ほどまでと違い何か思いついたのか、地図上の駒も動かし始めた。


「ネクロス、何か案が出たのか?」


 私がそう尋ねると、彼は少し躊躇いがちにこちらを向いてきた。


「オルビス様、我らがディークニクト様に負けた時の状況を覚えておいでですか?」

「覚えているも何も、あのような苦渋後にも先にもあれっきりにしたかいくらいだからな。鮮明に覚えているぞ」


 私が苦虫を嚙み潰したような顔で答えると、彼は満足気に頷いてきた。


「では、あの時我々がされた事を仕返しましょう」

「ん? どういう意味だ?」


 そう言うと、ネクロスは自嘲気味に笑みを作って話し始めた。


「夜襲を仕掛けるのです」

「夜襲!? 確かに有効だが、こちらには今から動ける兵など居らんぞ!?」

「いえ、辛うじて500名程居ります」

「500名程……? まさか!?」


 私が驚きと同時に彼を見ると、彼も頷いて返してきた。


「えぇ、親衛隊が丸々残っております」

「し、しかし、奴らを投入しては私の守りはどうする?」

「ご安心を、これが成功すれば敵は撤退し、これが失敗すれば我らが死にます。どっちにしても親衛隊は不要となるのです」


 いや、確かに理論上そうだろうが……。

 私は、彼の提案に少しの間頭を悩ませた。

 だが、彼の案を覆すだけの案を思いつけなかった私は、渋々だが彼の案を認めることにした。


「……はぁ、致し方ない。ネクロス、お前に任せる。人選その他もだ」

「はっ! かしこまりました!」


 こうして、ネクロス発案の夜襲作戦が開始されるのだった。


次回更新予定は10月20日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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