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4-20

キングスレー軍 オルビス


 対陣して3日目。

 昨夜の奇襲成功によって相手の動きは目に見えて悪かった。


「奇襲の効果はあったみたいだな」

「えぇ、こちらで全く指示を出さずに出撃させたので、恐らく敵方の間者は騙せたでしょうからね」


 今回の奇襲だが、実は事前に用意していたブロックサインというもので行った。

 ある特定の言葉と動作を組み合わせるだけで、奇襲をするというサインを送ったのだ。


「しかし、ディークニクトは面白いことを考えるな」

「全くです。しかもまさかこんなに簡単に行くとは思いませんでした」


 私たちが談笑していると、少し遅れてイアンが姿を見せた。

 昨夜の奇襲部隊を率いていたので、もう少し遅くても構わないと言っていたのだが、律義にも早めに出てきたのだ。


「イアン殿、昨夜はお疲れ様でした。もう出てきてよろしいのですか?」

「えぇ、十分休ませていただきましたし、何よりも昨日はかすり傷も負っていませんので」


 そう、あれだけの規模の相手に奇襲をかけてかすり傷も負わずにイアンは帰ってきた。

 正直そんな事ができるのだろうか、と今朝がたネクロスに問うたところ、奴は「私には不可能です」と言ってきた。

 ある種の化物で無いと不可能な事なのだろう。

 まぁ、体格的にイアンはネクロスの半分以下なので、そういう意味では目立たないかもしれないが。

 そんな事を考えながら前方を見ていると、今日も変わらず敵が上陸しようと必死にイカダを漕いできている。

 今日は、上陸支援目的であろう弓兵がこちらに狙いを定めているので、今のところ傍観せざるを得ない。


「敵がそろそろ来るが、大丈夫だろうな?」


 私がネクロスに確認すると、彼は大きく頷いてお任せをと胸を張ってきた。

 実際昨日も追い返しているので、自身があるのは大変結構なのだが、今日は何か仕掛けれてきそうな予感がする。



キングスレー軍 北部警戒部隊


 川を挟んで対陣して早3日。

 側面と背面を抑える為に派遣されたが、今のところ全く敵が見えない。


「隊長、本当にこっちから来るんですかね?」

「さぁな、お貴族様が言ってるだけだからな」

「ですよね。しっかし、暇ですね」


 そう言って、質問してきた兵が一伸びする。

 確かに全く敵の気配もなく、何も起きないので初日よりも緊張感は薄れてきていた。

 交代までまだ時間がある。

 時計を確認しながら私が内心考えていると、突然背面を警戒していた兵から報告が入った。


「隊長! 敵軍が我が軍後方より接近中! 数……4千を超えます!」

「なに!? 4千以上だと!?」


 その報告は、一瞬にして隊の緊張を高めた。

 こちらは全員合わせて1千も居ない。

 対して相手は4千超え。


「いいか! 敵にできる限りの嫌がらせをする! 事前に準備していた罠に敵を誘い込むぞ!」


 ゆっくりと敵が上陸しているのを見ながら、こちらも急いで所定の位置へと移動する。

 相手は恐らくこちらの数が少ないと見るや、一気呵成に襲い掛かってくるはずだ。

 そこを罠に嵌めて、動きを遅らせてから退却する。

 そこまでが我々の役目となっている。


「いいか! 決して追う事は許さぬ! 相手が罠に嵌った瞬間、我々は砦に逃げるぞ!」


 所定の位置に着き、もう一度命令を伝えると、部隊全員が一斉に頷く。

 それを見て私は、攻撃命令を下した。


「全軍敵に向けて一斉射! 叩き潰せ!」


 こちらが一斉に茂みから飛び出し、渡河を完了した部隊に矢の雨を浴びせる。

 一瞬何が起こったのか分からない、とばかりに慌てた敵部隊だが、こちらが少数だと見ると一気に押し寄せてきたかに思えた。

 だが、相手はあと少しという所で立ち止まり、こちらの罠に気づいたのだ。


「拙い! 相手が罠に気づいたぞ!」


 何故だ? 罠は見た目で簡単に分からないように隠し、こちらの兵数も少なくない人数になっていた。

 見抜ける部分が無いのになぜ!?

 私の頭の中で、グルグルと疑問が渦巻く。

 しかし、敵は待ってはくれない。

 こちらの罠の範囲を特定した敵は、一斉に迂回をはじめた。

 こちらの想定外の速さで砦へと向かい始めたのだ。


「至急砦に伝令! 本隊にも伝えろ! 敵が後方より襲来! 至急救援をと!」


 この時、私の頭の中には既に退却の二文字は吹き飛んでいたのだった。

次回更新予定は10月12日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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