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4-17

 翌日、敵の数は予想通り4万程度にまで膨れ上がっていた。

 対してこちらは2万。

 倍する敵にはできる限りまともに当たるな、とディークニクトから言われている。

 だが、これは一度でも戦って数を減らさねばならない。


「敵が渡河してきましたら、まずは矢の嵐をお見舞いしてやりましょう。ただ、相手も射てくるので防御だけはしっかりとしておいてください」

「分かった。できるだけここで敵の数を減らしたいものだな」

「1千でも減らせれば、後が楽になりますからね」


 さて、そんな事をネクロスと話していると、相手が渡河準備を整えてこちらに向かって進軍してきた。

 既に川岸から少し離れた場所に待機していた我が軍は、すぐさま渡河部隊へと矢を射始めた。

 互いに矢の応酬を繰り広げるが、敵渡河部隊は盾を構えて歩き始めた。


「敵軍が盾を頼みにこちらに向かってきます!」

「既に半分以上渡河が完了しています! 至急ご指示を!」


 前線から対処方法を求める悲鳴が飛んでくるが、そんなものは一切無視だ。

 川の半分を渡河した? もう目の前?

 何という事はない。

 そんなもの次の瞬間には崩れるのだから。


「敵渡河部隊、突如転倒!」


 伝令からの絶叫が各部隊に響く。

 その瞬間、部隊を指揮している将が各自で判断をして転倒部隊へと狙いを定めた。


「各部隊! そのまま射撃を続けろ! 敵をここで葬るのだ!」


 私が号令を下すと、各部隊で思い思いに射撃を始めた。

 前線に居た敵の盾兵は、一瞬にして壊滅。

 その後ろで構えていた敵兵もバタバタと倒れ始めた。


「オルビス様、上手く行きましたな」

「あぁ、防衛施設と一緒にやっておいた工作が功を奏した」


 私がこの戦場で行ったこと、それは川底に壺を埋めるという事だ。

 比較的浅いこの川は、突破しようと思えば一瞬で突破できる。

 そして、それは防衛側にとってかなり不利な条件になることなのだ。

 このために、わざわざ各貴族領で食料の供給も要求したのだ。

 おかげで数万という壺が手に入り、その壺を全て川底に埋めた。

 まぁ、一人数個と考えればそう大した手間にはならない。

 掘るのが面倒なだけで……。


「あれだけは、もう二度とやりたくないですね……」

「まぁ、そうぼやくなネクロス。そのおかげで今優勢に進められているのだ」


 ネクロスがぼやいているのは、川底を掘る作業だ。


「まさか、川底があんなに掘るのが面倒だと思いませんでした。肉体よりも精神にきますからね」

「……そうだな、何度掘っても水のせいで脆くなっている土が崩れるのは、やっていて終わらない気さえした」


 そんな事をぼやきながらも、戦いは終始こちらが有利な状態で続いた。

 相手は足を取られた兵が邪魔で前に進めず、またどこに穴があるか見えない為に慎重に動かざるを得ない。

 そうして足が鈍れば、矢の雨で一気に攻め立てる。

 もちろん、頭の良い兵が盾を二枚使って足場と前面の防御をした。

 だが、後ろがついて来られず、孤立したところを矢で何本も射られていた。

 そうこうしているうちに、相手の指揮官もしびれを切らしたのだろう。

 撤退命令を出して、この日の戦いは終了となった。


「こちらの被害状況はどうだ?」

「今回は前哨戦ですので、そう多くはないですね。10人ほど負傷が出ておりますが、死者は居ないです。ただ、相手も負傷は多く見られましたが、死者がどれだけ居たか正確には分かりません」


 まぁ、ゆっくりと味方を引きずりながら撤退していたので、致し方ない。


「それで、今後はどうする?」

「恐らく相手は船なりなんなり作ってくるかと思われます。ですので、こちらは船から降りる所を狙って嫌がらせを続けるしかないかと」

「迂回の可能性は?」


 私がそう言うと、ネクロスは地図を出して周囲の状況を説明し始めた。


「まず我々が今日戦ったのがここです。この川では一番浅くなっている場所になります」


 そう言って、ネクロスは地図に石を置いた。


「次に、相手が来るであろう場所がこちらですね」


 そう言って彼が石を置いたのは、ここらへんで一番水深が深い場所だ。

 ただ、深いと言っても私の胸くらいまでなので、そこまで極端に深くはない。

 まぁ今日の場所がひざ下だったのを考えると、かなり深いが。


「渡りにくいからこその迂回路だな」

「えぇ、その通りです。そして、こちらの迂回路は砦から丸見えなので、敵も流石に渡河を考えないと思います」


 実はこの渡河点、昨日の間に敵も視察に来ていたのだ。

 こちらの兵が見つけて動いてしまったので、丸見えであることも分かってしまっている。

 その為、恐らく迂回路として使う事はそうないだろうと私たちは踏んでいる。


「あと考えられる場所は?」

「後は、上流から筏で渡河する方法ですね。一気に浮き橋をつくるか、筏からの強襲で被害を出させるようにするかですね」

「筏で来たらどうしようにもならないな。その場合は一気に砦まで退いて立て籠もろう」


 そう提案すると、意外にもネクロスはすぐに頷いた。


「えぇ、オルビス様のその方針が最良かと思われます。それに、みすみす挟撃の可能性を見過ごすのもどうかと思いますからね」


 なるほど、挟撃まで可能性としてはあるのか……。

 そこまで考えてなかったな。

 そんな事を考えんがらも、私たちは明日の対策を話し合うのだった。


次回更新予定は10月06日です。

今後もご後援よろしくお願いいたします。

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