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4-14

迂回部隊 ディークニクト


 降伏勧告の使者を出してから数時間後、城が落ちたと報告が入った。

 というよりも、勝手に内乱が起こって陥落したらしい。


「どういうことだ、これは?」


 報告を聞いた俺が、使者に問いただすと彼は話し始めた。


「はっ! 我ら城内の兵は、貴族を打倒するディークニクト様にお味方すべく城内に巣食う者たちを一掃させて頂きました」

「巣食う? 奴らはそんなにお前たちに対して酷い扱いをしていたのか?」

「彼らは、自分たちの既得権益を守るために、我々兵士に死ねと言ってくるのです。もちろん、我々も給料をもらっている分には働きますが、現状1千にも満たない守備兵では悲惨な状況になるのが目に見えています。ですので、寛大な処置をお願いしたく」


 使者はそう言うと、前に並べられた首を見せてきた。

 ここら辺の領主と思しきもの、先ほど降伏勧告に行かせた部隊の長、その他にも数名分の首が並んでいた。


「……分かった、では降伏を受理する。急ぎ部隊の装備を解き、城にて謹慎をしているがいい。我らが入城したのちに処遇を出そう」

「はっ! 寛大な処置をなにとぞよろしくお願いいたします」


 そう言うと、使者は首を残して城へと去っていった。


「さて、お前たちはどう思う?」


 俺が、シャロとアーネットに意見を求めると二人とも黙り込んだ。

 流石に城の兵たちの動きが早すぎて、何と言って良いのか分からないようだ。

 そう思って待っていると、アーネットが口を開いた。


「ってことは、ディーよ。城攻めは無しか?」

「ん? まぁそうなるな」


 そう言うと、アーネットは頭を抱え始めた。

 恐らくだが、こいつ。

 城攻めがなくなったことが、相当ショックなんだ。

 シャロと二人で白い目で見ていると、アーネットが突然顔を上げた。


「まぁ、無くなったものはしょうがない! 次に期待だ!」

「……切り替えが早くて何よりだよ。シャロはどうだい?」


 シャロに話を振ると、ジッと首を見ながら思ったことを少しずつ話し始めた。


「……そうね、私としては今回の兵士たちの行動は酷過ぎると思うわ。扇動すらほぼされていないうちに貴族の首をとってくるんですもの」

「確かに切り替えが早すぎる、とは思うな」

「でしょ? だから私、彼らに信を置くことはできないと思うわ。同じ状況になったら彼ら、また裏切るんじゃないかって」


 確かにそれは、考えてしまう所だ。

 だからと言って、彼らの降伏を拒否してしまえば、今後降伏する者は居なくなる。

 そうなると、行軍の上で我々が辛くなってしまうのだ。


「とりあえず、今回の騒動に加担した者に一時金を渡して軍職から遠ざけよう。武器などを取り上げれば、何かを画策しても簡単に防げるさ。あと、ビリーは居るか?」


 俺が呼びかけると、サッと森の中から人影が現れて跪く。


「ビリーは、すぐさまベルナンドのエイラに連絡を。こっちに密偵を数名派遣して城下を見張らせてくれ」

「はっ!」


 命令を伝えると、ビリーはすぐさまその場から居なくなった。

 そんなビリーの様子を見て、アーネットは「今度戦いたいな」とボソッと言っていた。

 正直、アーネットの相手ができる程ではないと思うから、できたら遠慮してほしい。


「さて、それでは俺達は城へと入城しよう。奴らの気が変わってからでは遅いからな」


 そう言って全軍の移動を再開させた。




桟道出口 カレド


 桟道内の様子は、逐一見張りに出ているエルフによって報告が来る。

 来るのだが、予想はしていたが中々悲惨な状況になりつつあるようだ。

 物資が不足していることから、兵たちが逃亡を図ろうとしているのだが。

 行きも帰りも断崖絶壁では、動くことすらままならない。

 その為、日に日に諍いが多くなっているという。

 ただ、それでもなお暴動に至っていないのは、第一王子の手腕か。


「さて、どうなるでしょうね。第一王子によって何とか統制されているみたいですが」

「ディーからの指令は、できるなら生け捕りだっただろ? どうやって生け捕るんだこれ」


 確かに、この状況下で生け捕る方法となると、工兵による桟道の上に道を作ってそこから『蜘蛛の糸』を垂らすくらいだろうか?

 いっそのこと、降伏勧告をするのが一番かもしれない。


「とりあえず、書簡を持って降伏を促す使者を出しましょう。それをもって彼らにはどう動くか考えてもらわないと。あとディーたちが捕らえた敵の別動隊の輸送は順調ですか?」


 私が、トリスタンに問いかけると、彼は親指をグッと立ててきた。

 まぁ、大丈夫という事なのだろう。


「まぁ大丈夫ならいいのですが。では、あちらには誰か一人使者をたてましょう」

「ここまで粘って相手が交渉に応じるのか?」

「応じてもらわねばどうしようにもならないでしょう。向こうも流石に無為に兵を殺したくは無いでしょうし」


 そう思って、私は一人のエルフに文章を託した。

 文章には、王子をはじめ、兵たちの生命の保証。

 最低限度の生活基盤の提供。

 武器類の不携帯。

 全面的な降伏を書いておいた。

 条件などのすり合わせは、王子もしくは王子の代理人との交渉ですり合わせる、とした。


「王子がこれで釣れるのか?」

「釣れてくれないと困るんですけどね……」


 そう思いながら、使者を出して数時間後。

 相手が、交渉には応じる構えを見せるのだった。

先日はすみませんでした。

PCの不調にネットワーク障害と踏んだり蹴ったりで更新できませんでした(;´・ω・)

次回更新予定は9月30日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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