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切りが悪かったので、少し短めです。
キングスレー ディークニクト
ベルナンドで報告を受けた俺は、すぐさま後事を内務官たちに託してキングスレーに移動した。
現在のキングスレーは、軍備の増強を行っておりその数は3万に迫っていた。
「さて、敵軍に動きがあったようだが、その後の偵察で何か分かったか?」
俺が問いかけると、先日降ったオルビスが声をあげた。
「敵は軍を二つに分けたと聞いている。恐らく東西の日和見主義者を、全て取り込みながらこちらに向かうつもりだろう。現在は両軍およそ1万5千の兵数だが、こちらに到着するころには……」
彼はそう言うと、少し明後日の方を見ながら数を考える間を置いた。
「少なくとも片方3万以上。両軍合わせたら6万を超える可能性が高い」
「し、しかし、それでは兵糧が持たないのでは?」
オルビスの言い出したとんでもない数に対して、先日こちらに入った貴族たちがあり得ないとばかりに疑問を投げかけた。
ただ、俺もオルビスも恐らくそれだけの軍隊を、奴らは動かせると踏んでいる。
「懸念はもっともだが、恐らく今回は実現してしまうだろう」
「そ、そんな、どこかで徴発でも……はっ!」
どうやら気づいたようだ。
自分たちの、こちらに降った貴族の土地が略奪対象であると。
「恐らく気づいたと思うが、奴らはやる気だ。今まではそこまでひどいことにならないと思っていたが、今回のこの規模の遠征では酷いどうこうを超える」
「は、早く我が領内の防衛体制を整えなければ!」
軍議に参集していた貴族たちは、一斉に慌てふためき始めた。
まぁ、自分の所が狙われているとなったら、そうなるわな。
「まずは落ち着け」
ここまで一切しゃべらず、オルビスたちに任せていた俺は通る声で言い渡した。
「これより敵軍に対する対策を話し合う。良案ある者は?」
俺が問いかけると、一斉に貴族たちは口を閉ざした。
まぁここで何かを発言すれば、失敗した時に責任を追及されかねないからな。
「では、ここで俺から提案がある。オルビスと貴族たちは、1万の軍勢と各自の私兵を持ってキングスレーを目指す敵を撃破して欲しい。残り2万は俺達エルフがロンドマリーを目指す軍を撃つ。これでどうだろう?」
「基本方針に関しては、私もそれでいい」
俺が提案をすると、オルビスが即追従してきた。
この辺りは事前に打ち合わせを少ししていたので、まぁ言ってしまえばサクラだ。
ただ、このサクラは大きい。
元々殿下と呼ばれる立場の人間が、エルフの俺の言葉に従っているのだ。
それも餓狼とまで呼ばれた、計算高い奴が従ったというのは大きい。
「お、オルビス殿がそうおっしゃるなら、私も異存はございませんぞ」
「わ、私もですぞ!」
一人二人と追従を始めると、後は場の雰囲気を読む貴族だけあって全員が一斉に出征案に賛成した。
「全員の賛同が得られて何よりだ。では総大将はオルビスに任せようと思う。日和見貴族をできるだけ引き抜きながら、キングスレーを目指す軍を撃退してくれ」
「うむ、分かった」
俺が作戦をまとめると、オルビスも鷹揚に頷いた。
しかし、オルビスは降ったというのに相変わらず大きい態度だ。
まぁ、俺も奴の大きい態度については認めている。
何せ、降伏条件に「臣下としての礼を取らない」という一文を入れるくらいだ。
よほどへりくだったり、頭を下げるのが苦手なのだろう。
その後、特に話し合う事案が無かったので、軍の編成と私兵の取りまとめを全ての貴族に通達して動きだした。
次回更新予定は9月6日です。
今後もご後援よろしくお願いいたします。




