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幕間 約束

ディークニクトと神の約束の話。

※初掲載2018.08.09

????  ディークニクト


 雑務が終わって寝ていたはずの俺は、何故か見覚えのある真っ白い場所にいた。


「……はぁ、また神様か? 俺はまた死んだのか?」


 俺が誰に言うともなく口に出すと、目の前にスゥっと人影ができた。

 目の前に出た人影は、口の辺りが切れたかと思うと真っ白な歯をむき出しにして話し始める。


「流石に3度目だと、あまり驚きが無いようだな」

「あぁ、その気色の悪い薄ら笑いも慣れたものだ」


 俺がそう軽口を飛ばすと、人影はケラケラと声にならない笑いを辺りに響かせた。


「そうか、そうか、まぁそれだとこちらも手間が無くて助かる」

「で、ここに呼んだ理由はなんだ? 最初は転移しろと無理矢理通過させ、二度目は寿命の長い種族に転生させてやると言ってきた。今回は何を俺にするつもりだ?」

「なんだ、神聞きの悪い。お前を今回呼んだのは他でもない、転生した時の約束を覚えているか確認しようとしたのだよ」


 まったくどこの神聞きが悪いんだか……。

 転生させられる時に、俺は種族選択と同時に一つの約束をさせられていた。

 それは、転生した種族で最大版図を築き上げることだ。


「あぁ、覚えているさ。だからこそ、子爵領を奪ったんじゃないか」

「うむうむ、あの時のお前の苦渋の表情は見ていて面白かった」


 まったく、胸糞の悪い神が居たもんだ。


「だが、お主あれで最大版図だと思っておらんだろうな?」

「え? いやだって、エルフの最大版図だろ? ならほぼ成し遂げているじゃないか」

「あの世界での最大版図だと言ったと儂は思ったのだが?」


 な……ッ! こいつ、明らかに俺が誤解する様に説明しやがった。

 前回聞いていたのは、『種族を選び最大版図の国をつくれ』だったはずだ。

 くそっ! 確かにどこにもその種族の最大版図とは言ってない。

 俺がそこまで思い至ると、人影はまた薄ら笑いを浮かべながら話しかけてきた。


「クククク……、理解できたようで何よりだ。でだ、できなかった時の約束も覚えているだろ?」

「あぁ、できなかった場合は、……その種族を滅する、だ」


 そう、前回の俺は神の予期せぬ事態で人族が滅びかけ、助けるために俺という異物を入れた。

 そして、次は俺という異物を使って帝国建国をさせようというのだ。


「さて、覚えているだろうがルールのおさらいだ。1つ種族の寿命が尽きるまで」

「1つ全ての種族を滅さぬようにすること」

「1つ少なくとも自分が死んで3代は国を持たせること」


 そう、この3つ目が問題なのだ。

 少なくともエルフを選んだ時点で、2つ目までは比較的簡単だ。

 ただ、3つ目。

 これが厄介極まりない。

 エルフはその長大な寿命のせいで、しばし人生に飽きを抱いてしまう。

 そうなったら、3代持たないかもしれないのだ。

 しかも、この神の事だ。

 恐らく俺が死んだら、記憶をそのままに滅亡の手前で転生させるに決まっている。

 為す術なく滅ぶのを絶望とともに見せる、それくらいやってのける。

 俺がルールを覚えていることを確認し、人影はまたニヤニヤと笑っていた。


「よろしい。大変よろしい」


 大仰な仕草でこちらを見ながら、笑う。

 否、嘲笑う。

 全くもって不愉快極まりない。

 だから俺は、こいつの事を『人影』と蔑んでいる。

 決して神などではない。


「それを確認するためだけ――」

「あんたの約束も忘れてないだろうな?」


 俺がそう言うと、人影はまた笑った。


「もちろん、もちろん。神である私は、決して手を出さない。ルールを達成したら、転移する前の元の世界へ元の状態で、元の時代に帰す」

「違えるなよ?」


 俺がそう言うと、奴はニヤリと笑う。


「もちろん、契約は絶対だ。絶対に破られてはならない。故にルールもまた絶対だ」


 そう人影が言うと、俺の意識は急速に遠のいていった。

 まったく、神などと言いながら悪魔ではないか。

 契約を遵守し、破らない。

 まったく愉快じゃない話だ。


次回更新予定は8月11日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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