表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/213

3-25

ドロシー宅 ディークニクト


「神の使徒とは、奴の意向を受けてこちらの世界に飛ばされた、もしくは転生させられた者の事をいう。元をただせばシマ……、ディーも神の使徒よ」


 ドロシーの衝撃的な一言に、一瞬俺は何を言っているのかわからなかった。

 だが、確かに無理矢理奴に転移させられ、その後転生もさせられた。

 思い当たる節は確かにある。


「……あぁ、確かに!」

「……本当に戦以外は疎いわね。で神の使徒に選ばれた者には、神が条件を提示する。その者の願望をくみ取り、その者が意のままに働くように仕向けるのよ」

「確かに、神というよりも悪魔に近い奴だったからな」

「悪魔? こっちにはそんな概念無いわね。それはどんな奴なの?」

「俺も詳しくは知らないけど、人と契約をして力を貸したり、願望を叶える魔物の様な奴さ。なんか悪魔によって色々できる事が違うらしいけど」

「なるほど、それならまさに奴は悪魔ね」


 俺達はそこまで話すと、互いに頷いていた。


「しかし、ディーはよくあれを直視して平気で居られるわね。普通なら発狂ものよ」

「え!? そうなのか?」

「えぇ、あれは人によって見え方が変わるのだけど、総じて神官以外は『得も言われぬ恐怖の塊』っていう人が多いわ」

「何その怖い名前……」

「まぁ、ディーは元々恐怖心という点では神経飛んでいるから、仕方ないのかもしれないわね」

「いやいや、恐怖心くらいあるからね?」

「単身で魔族に突っ込んでた奴にあると思える?」

「…………」


 確かに悪魔相手だと、普通は飛び出さない。

 というか、飛び出したらその時点で消し飛ばされてしまいかねない。


「ま、まぁ、そんな話は置いといて。それで、神の使徒が出てくる可能性はあるのか?」

「かなりの高確率で出てくるわ。恐らくこちらの建国がほぼ完了しようって時にどこかの国から出すか、この王国に出すか」

「まぁ、そうなると面倒ごとが多そうだな……」

「そうね。ただ問題なのは、いつどこでどのタイミングで出すかは、あの悪魔次第ってところなのよね」


 彼女はそう言うと、ゆっくりと部屋の入り口に移動した。

 そして、勢いよく扉を引くと、そこには寝ているはずのシャロが居た。


「盗み聞きとは、感心しないわね」

「……あの、いえ、その……」

「どこから聞いてたのかしら?」

「いえ、その、神の使徒辺りから?」

「本当に?」


 そう言ってドロシーが、幼い見た目からは想像もできない魔力で威圧すると、シャロは涙目になって謝った。


「ごめんなさい! 本当は転生云々の所から聞いてました!」

「はぁ……、どうする? ディー……いやシマヅ」

「聞かれてしまっては、致し方ないだろう。秘密を守ってもらうしかない。まぁシャロなら不用意に話さないだろうから大丈夫だと思うけど」

「ディー……」


 俺の一言にシャロは感涙? を流し、ドロシーは頭を抱えていた。

 ただ、知られてしまっては仕方ないと彼女も気持ちを切り替えた。


「いい? この事は絶対に言うんじゃないよ? 身内だろうとなんだろうと、言えばおかしなことになる」

「おかしなこと? ディーがかつての英雄の生まれ変わりなら、むしろ歓迎されるんじゃ……」

「されん! 奴らは、聖光教会は必ずディーを殺しにやってくる。絶対にだ」

「……そう、なの?」


 シャロが本当かと俺に視線を送ってきたので、俺も頷いてやった。

 何せ、聖光教会は俺をはめた奴らの一人なのだ。

 奴らの教義には、絶対的に俺が悪であると刷り込まれている可能性が高い。

 なら、奴らを刺激せずゆっくりと弱らせなければならない。


「聖光教会は、恐らくあの悪魔の代理だ。だからこそ、俺の存在をあいつらに知られるわけにはいかない」

「わ、わかったわ。この事はアーネットにも黙っておくわ」

「そうしてくれ。嘘や隠し事はしたくないが、こればかりはどうしようにもならない」

「わかってるわ。ディーが私たちの事を心配してくれているのは」


 俺とシャロが話していると、ドロシーが私が居るぞとばかりに咳ばらいをしてきた。


「さて、当面の話はこれで終了。そこのエルフ女には、私の方から聞かねばならない事があるわ」

「え、えっと何かな?」

「とぼけるな? どうやって睡眠薬の効果を失くした? あれは結構強力に調合した薬のはずだけど?」


 ドロシーがそう問い詰めると、シャロはあっけらかんとして詰問に応えた。


「え? あれ薬入ってたの? ……そう言えば少しだけ眠くなって寝たような」

「何この子!?」

「あぁ、シャロはちょっと特殊なんだよ」

「ちょっと!? オーガすら眠る睡眠薬を投与して平気なのに!?」


 それ、人体に入れたらダメなやつじゃなかろうか、と俺は思ったが今回はあえて口をつぐんだ。


「どういう体の仕組みをしとるんじゃ? うむむむ、今度私の研究施設に来ないか? シャロ」


 ドロシーはそう言うと、指をグネグネと動かし何とも言えない表情で迫る。

 シャロもドロシーの様子に気圧されたのだろう、何とも尻すぼみな声で「……遠慮します」とだけ答えていた。


次回更新予定は8月29日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ